先週の福島民報の1面を飾った「ふたば未来学園高等学校」について。
記事は、福島県の海岸沿いにある双葉郡の中学校の生徒達が、広野町のふたば未来学園高で交流したというもの。原発事故で県内各地に避難している生徒たちのつながりを築こうと双葉郡内各町村の教育委員会などが企画したという。高校生約120人、中学生約90人が参加したイベントには、「ふたばの教育復興応援団」の一員でもある箭内道彦氏も参加。参加者がグループに分かれてオリジナルソングを作る授業を行ったという。イベントの模様を関連記事として伝えた3面には、次のコメントが紹介されている。
運営に携わった井出大雅君(1年)は「中学生には避難していることを必要以上に暗く考えず、将来に向けて前向きになっていることを伝えられたと思う」と話した。
引用元:福島民報2015年8月21日3面
福島県立ふたば未来学園高等学校は、原発事故で甚大な被害を受け、多くの住民が地域外での避難生活を送っている双葉郡にとって、人材育成こそが復興の重要課題との考えから、全寮制の中高一貫校として設立された。今年、2015年4月、高校が先行する形で開校。場所はJR常磐線広野駅から徒歩数分の高台にある。
新設された高校だが、平成30年度までは広野中学校の校舎を本校舎として利用。いわき市出身の知人は、「新しい学校だからといって、何でもお金をかけて造ればいいという姿勢じゃないところが好ましいと思う」と話していた。
たしかに、復興が進んでいることをアピールするためなら、「未来」を感じさせるような建物をぶっ建てて、マスコミをたくさん呼んでセレモニーをするという方向性もあったかもしれない。しかし、ふたば未来学園高はハコモノよりも中身に力を入れているようだ。
県内で初めて「スーパーグローバルハイスクール」に選定された。設置学科は「全日制課程 総合学科」のみだが、アカデミック系列、トップアスリート系列、スペシャリスト系列の3つのコースを設定している。そして特筆すべきは「ふたばの教育復興応援団」という外部からのサポートをフル活用する点だ。
福島民報の記事で紹介された箭内道彦氏もそうだが、ふたばの教育復興応援団には、秋元康氏、乙武洋匡氏、小泉進次郎氏、小宮山宏氏(元東大総長)、潮田玲子氏、為末大氏、西田敏行氏、福島出身の詩人・和合亮一氏ら、各界の著名人が参加。学校設立や授業、部活動、地域イベントなどをサポートしていくことになる。
ふたば未来学園高、夏休みの風景をどうぞ
校舎の側に立つ「友情」の像。おそらく広野中学時代に設置されたものだろう。
夏休み期間中だから校舎にも生徒や先生たちの姿は見られなかった。それだけに、空の広さや青さが目に染みる。町にはまだ人影は少ない。この場所は、これからどんな学び舎として育っていくのだろうか。1年目の現在は150人ほどの生徒しかいないが、これから先、子供たちは帰って来るのだろうか。
東電の第一原発の放射能災害によって深く傷つけられた町。
しかし、その町の、ふるさとを再生させる大人になるのだと、この高校を選んだ子供たちの思い。
意見をまるっとまとめることなんかできない。本当に大丈夫なのかという思いもある。頑張れと応援したい気持ちがある。いまは、校舎をただ見ているしかできないことに不甲斐なさも感じている。