駅のホームから溢れるくらい大勢の人たち。手には青と赤と白の三鉄カラーの小旗と、新型車両を何両もプレゼントしてくれたクウェートに感謝する小旗。お祝いのお餅まで配られたのはなんだか三鉄らしくて。列車が走りだすと、津波の跡がまだまだ痛々しい荒野のような沿線に、全線開通を喜ぶ多くの人たちの姿が並んでいました。みんなが手を振ってた。みんなが喜んでいたあの日。
三陸鉄道全線再開から4月6日で1年です
朝ドラ「あまちゃん」の効果が薄れていくのではと心配される中、たくさんの人たちが東北を、そして三鉄沿線を訪ねてくれました。夏には21年ぶりに上期黒字になったと、全国紙でも大々的に報道されました。それでも沿線の復興工事はまだまだ半ばで、住宅建設もはかばかしくなく、そのため地元の利用者数は震災前の水準を大きく割り込んだままという現実もあります。南北リアス線の間に位置するJR山田線の沿岸部を三陸鉄道が引き継ぐことになったのも大きなニュース(岩手県沿岸部を三鉄で結ぶという希望のもてる話であると同時に、経営を圧迫するのではとの不安もあります)。そしてこの春には、2人の若者が新しく三鉄に入社しました。
この一年、たくさんのことがありました。三陸鉄道には元気があります。でも前途は多難です。だから、これからも引き続き、東北の沿岸を走る三鉄を応援してほしい、ずっと見守ってほしいと思います。
三陸鉄道乗車プラン♪盛駅からのショートトリップ
今年の1月に三陸鉄道に乗った時のことを書きますね。岩手県大船渡市の盛(さかり)から、本当は南リアス線を釜石まで行って、最近オープンしたばかりのイオンタウンに行こうと思っていたのですが、あいにく午後の列車の少ない時間帯で乗れるのが4時過ぎになりそうだったので断念。盛駅のスタッフに相談したら、下り線を途中の「三陸」駅で降りて、入れ違いの上り線で戻って来ればどうですかとのアドバイス。
盛駅のスタッフは、実は三鉄の社員さんではなく「ゆめネット大船渡」というNPO法人の人たちです。三陸鉄道盛駅舎活用事業ということで「ふれあい待合室」を運営。切符も三鉄からの委託で販売しています。待合室の中には小さなおみやげコーナーと大きなテーブルがあって、テーブルには三陸沿岸部の情報がいっぱいの地元紙や雑誌、パンフレットも置かれています。「列車にはまだ時間があるからお茶っこしていってくださいね」と声を掛けられて見ると、テーブルの側にはお茶のポット。
フリーでお茶を振る舞ってもらえる駅の待合室は初めてでした。さらにスタッフさんはマーカーで印をつけた時刻表で乗り換えを詳しく教えてくれます。
三陸駅で降りる列車の運転士さんに切符を渡したら、上り線に乗り換えますって伝えてください。時刻表では三陸駅の上りも下りも同じ時刻になってるけど、ちゃんと待っててもらえるから安心してくださいね、などなど。
キットカットのパッケージで三鉄に乗れるキャンペーンの利用方法についても、切符との差額を三陸駅で降りる列車の運転士さんに払ってくださいねと、ホントに丁寧におしえていただいて、心があったかくなりました。駅の跨線橋にたくさんの手袋が吊るされている理由や、乗り換え口のマスコットが「猫」だということなど、駅のこともいろいろ教えてもらえました。
地元の新聞の新年特集をじっくり読んでいると、ついに列車がホームに入ってきます。おなじみ三鉄カラーの車両とクウェートから支援を受けた新レトロ車両の2両連結。
レトロ車両の方は、たぶん地元の若者が同窓会か何かで貸し切っていたみたいで、食べ物や飲み物が積み込まれていました。ちょっと中を拝見すると、聞きしに勝る豪華な雰囲気でしたよ。
さて16:18、定刻に盛駅を出発した三陸鉄道南リアス線釜石行き。出発してしばらくは大船渡線BRTの専用道路と並走します。やがて列車はリアス海岸の浦々の町へ向かって岬へ。日が一番短い頃だったので、出発直後にはすぐに暗くなったのが残念でしたが、時々目に入る夕暮れの海辺の景色は印象的でした。
(後ろに接続された貸切列車には、駅に着くたびに何人かが乗り込んできて車内で上がる歓声が聞こえてきます。お正月休みに帰省したクラスメイトたちが盛り上がっているんだろうなあ)
盛を出発して、陸前赤崎、綾里(りょうり)、恋し浜、甫嶺(ほれい)、そして折り返し乗換駅の三陸に到着です。
乗り換えの上り列車はまだ到着していません。遠くから上り列車のライトが見えてくるまでの間に、高台にある三陸駅から越喜来(おきらい)の浜辺をゆっくり眺める余裕もありました。こんなのんびりした感じは都会の鉄道ではありえないでしょう。
盛駅に戻ってきて降りてから気がついたのですが、帰りの列車には素敵なイラストが描かれていました。ホームから待合室に戻ると、先ほど親切に教えてくれたスタッフの方々が笑顔で迎えてくれます。
「また来ますね」
「待ってますよ」
ちょっとしたやりとりまで温かい三陸鉄道のショート・トリップなのでした。
全線再開一周年を記念して、三陸鉄道の駅や列車ではイベントもいろいろ行われるみたいです。一周年記念以外にも多彩なイベント列車が運行されているので、ぜひ三陸鉄道のホームページでご確認ください。
今後とも三陸鉄道をよろしく♪
イベント列車や切符になるキットカットの話もありますよ。