3月5日、日本の春季キャンプにあたるスプリングトレーニングのロイヤルズ戦に登板したテキサス・レンジャーズのダルビッシュ有はわずか12球で降板した。
病院で検査を受けた結果、右肘側副靱帯の損傷と診断された。
そして13日、損傷した右肘の靱帯修復手術(トミージョン手術)を行うことを発表した。
トミージョン手術とは損傷した靱帯を切除して他の正常な腱の一部を移植するというものだ。1974年に初めて手術を受けたトミー・ジョン投手にちなんでそう呼ばれている。
アメリカでは手術は簡単、ちょっと歯医者に行ってくるようなものなんて言われているらしいが、ピッチャーの命とも言えるくらいの『肘』にメスを入れるわけだから、とてもそんな気分にはなれないと思う。
本当に大変なのは手術そのものではなくそのあとのリハビリだと思う。手術が100%成功したしても、元通り投げられるかはまったく別の話なのだから。
ましてやプロの野球選手。手術は人生を左右するものだと言っても過言ではないだろう。
以前からダルビッシュはあまりにも多い靭帯損傷について持論を展開していた。
球数ではなく登板間隔に着目し、メジャーで主流になっている中4日登板の短さと中6日の登板を推奨していた。
そうすることによってトミージョン手術を受ける選手が少なくなると。
そんな彼が靭帯を損傷し警鐘を鳴らしていたトミージョン手術を自らが受けなくてはならなくなってしまった。
人生とは皮肉なものだ。
近年、トミージョン手術を受ける選手は増え続けている。その要因はいろいろな説があると言われている。
投球過多による蓄積、全力投球やフォームなど。
どうであれ現状をみれば今すぐにでも野球界全体で考えていかなくてはいけない大きな問題だというこがわかる。
ダルビッシュ有、ファンへのメッセージ
彼はトミージョン手術に臨むにあたって、こう語っている。
100%帰ってこられるわけではなく帰ってこられない可能性もあるが不安も怖さもない。
そして彼はこう続けた。
いつ終わってもいいようにどんな事にも妥協だけはしないと20歳のときに決め、そのことを1日たりとも欠かさず守ってきたと。
だから今までの野球人生に悔いはないのだそうです。
最後に“結果”がどうであれ”結果”に向かうリハビリと言う”過程”においては絶対妥協はしないことを誓った。
かっこいいですね。
普段の彼の言動を見ていても、一切妥協をしない生き方をしていることが伝わってきます。
17日、手術が無事成功したとレンジャーズから発表された。
彼も自身のツイッターで「無事終わりました。パワーを送ってくださった方々、本当にありがとうございました!」とファンにメッセージを送っている。
トミー・ジョン手術は復帰まで1年から1年半かかると言われている。
再び彼の勇姿を見ることができるのは2016年以降になる。
心からファンを大事にする彼はファンが待つ場所へ必ず戻ってきてくれるだろう。