3月7日(土曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている現状を考えます。
タンクエリアで新たな漏水。原因は作業後の片づけをしなかったこと
3月6日の報道配布資料の内容に、漏洩原因の推定を加えて発表された。以下に本文を引用の上、整理する。
※C排水路枝側溝内溜まり水で比較的高い全ベータ放射能濃度(1.9×10^3Bq/L:採取日3月3日)の水が検出された件について、H4東エリアの現場調査を実施していたところ、3月6日午前9時頃、H4東エリア内周堰(北西側)の配管保温材から水がにじんでいることを確認。にじみ箇所の調査のため配管保温材を取り外したところ、配管貫通部(床面から高さ約20cmの位置)から鉛筆芯1本程度の漏えいがあることを確認。
配管貫通部からの漏えいを止めるため、パワープロベスター(バキューム車)によるH4東エリア堰内溜まり水の汲み上げを実施し、堰内水位を低下させたことにより、午前10時18分に漏えいの停止を確認。その後、配管貫通部について、コーキング(止水剤)による止水処理を実施。
配管貫通部から漏えいした水は、外周堰内の漏えい箇所付近に設置している溜め升(約50cm×約50cm)内に留まっており、溜め升の深さは目測で数cm程度。溜め升内の水の深さを10cmと仮定して漏えい量を算出した結果、約25リットルと推定。3月5日に採取したH4東エリア内周堰内溜まり水の分析結果(全ベータ:1.6×10^3Bq/L)から、漏えいした水の全ベータ放射能量を評価した結果、約4.0×10^4Bqと推定。
配管貫通部から漏えいした水は溜め升内に留まっていること、溜め升から当該側溝まで水の流れた形跡はないこと、当該側溝からC排水路につながる止水弁は3月4日から「閉止」していたことから、C排水路への流出はない。
また、配管貫通部からの漏えい確認後、H4東エリアの内周堰を確認したところ、当該の配管貫通部以外に漏えい等の異常はないことを確認。
3月5日にH6エリア内周堰内の溜まり水をH4東エリア内周堰内へ堰間移送を実施しており、移送後の堰内水位は約17cmだったが、3月6日朝に監視カメラで堰内水位を確認したところ、H4東エリア内周堰内の水位が約27cmまで上昇していることを確認。
3月5日の移送後にH4東エリア内周堰内の水位が上昇した原因を調査したところ、3月5日午後5時頃に移送ポンプによるH6エリア内周堰内からの移送は停止していたものの、移送ホースはそのままの状態であったことから、サイフォン現象によりH6エリア内周堰内の溜まり水がH4東エリア内周堰内に移送され続け、H4東エリア内周堰内の水位が上昇(H6エリア内周堰内の水位が低下)したことが判明。これにより、H4東エリア内周堰内の水位が約27cmまで上昇し、配管貫通部(床面から高さ約20cm)に対して水頭圧がかかったことで、漏えいに至ったものと推定。
なお、H4東エリア内周堰内の配管貫通部から漏えいした時期は、3月6日午前0時頃のタンクパトロールにおいて配管貫通部からの漏えいは確認されていないことから、それ以降に漏えいが発生したものと考えられ、C排水路枝側溝内溜まり水で比較的高い全ベータ放射能濃度が検出されたことの原因ではないと判断。
▼C排水路につながる枝側溝で全ベータが1リットル当たり1900ベクレルの比較的高濃度の汚染水が発覚
▼漏洩が疑われるH4東エリアの現場調査で、配管貫通部からの漏洩を発見。漏洩は内側の堰同士をつなぐ配管の貫通部から外側の堰へと流出していた(汚染水の汲み上げと漏洩箇所の止水を実施)
▼日報は汚染水の側溝やC排水路に流出していないと断言
C排水路を経由して汚染水が港湾内に流出した原因を探る調査だったが、その目的は今のところ果たされていない。続いて日報の記載内容は、なぜ配管貫通部から汚染水が漏れたかの推論に移る。
▼漏洩が発見される前日の3月5日、H6エリアの内周堰内の溜まり水をH4東エリアの内周堰内に移送する作業が行われた(H6エリアの堰の水位が上がったということか)
▼移送終了後、ポンプは停止したもののホースをそのまま放置
▼サイフォン効果で水が流れ続け、H4東エリアの内周堰の水位が上昇
▼堰の貫通部より水位が上がって、貫通部に水圧がかかって漏洩
サイフォン効果による漏水という「凡ミス」は、2014年11月7日、4号機廃棄物処理建屋でも発生している。教訓が生かされるのは難しいらしい。
しかも、水を移送したホースをそのままにしたというのは、現場の片づけすらできていないということを意味する。仮に堰内の水の移送をさらに実施する可能性があったとしても、作業が終わればその都度現場を「仕舞う」のは常識だ。片づけを確認する現場監督は何を見ていたのだろう。
年初に重大な労働事故が発生したのを受けて、事故原発は2月3日に作業を再開するまでの間、徹底した現場の安全点検を行ったとされる。その反省すら守られていないということになる。
1号機~2号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止中
◆2号機
1号機と同じ4項目の記載。加えて、
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成27年3月2日午前10時25分~)
※滞留水移送は稼働
3号機タービン建屋地下の高濃度滞留水の移送を停止
1号機と同じ4項目の記載。加えて、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送実施(平成27年3月3日午前9時58分~3月7日午前10時16分)
※滞留水移送は停止中
4~6号機
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・平成26年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了。
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置運転中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・RO濃縮水処理設備運転中
(セシウム吸着装置については前日に続き「運転中」を新規事項として表記)
地下水バイパス ~通算52回目となる海洋への排出を終了。排出量は1,924トン
3月6日午前10時12分、海洋への排水を開始。同日午前10時16分に漏えい等の異常がないことを確認。(既出)
同日午後5時48分に排水を停止。排水停止状態に異常のないことを確認。排水量は1,924m3。
地下水バイパス揚水井分析結果(3月5日採取)
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
3月6日のパトロールにおいて、タンクからの漏えいの兆候を早期に発見する目的で70μm線量当量率の測定を行っているが、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されなかった。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。