東京電力の「水漏れ」についての発表に関して、ちょっと突っ込みを入れたい。こんなこと書いていると、反感買っちゃいますよ、と。
経緯は以下のとおり。東京電力福島第一原子力発電所4号機タービン建屋1階南側エリアという場所で、水漏れが発生したらしい(外部からは分からないので「らしい」と言うしかない)。水漏れ警報が鳴ったのは2月27日金曜日の午前11時過ぎ。19分に警報が出て、東京電力社員が現地に向かっていたところ、23分に解除されて、42分にまた警報が出た。
現場確認した東京電力社員の報告を受けてということだろう、東京電力は2月27日に次の発表を行った。
漏えいした水はタービン建屋補機冷却系の水抜き作業に起 因するものであり、汚染水ではないことを確認。
タービン建屋の地下には、メルトダウンした核燃料に直接接し、高濃度に汚染された滞留水がある。高濃度滞留水はサリーとかアルプスとかモバイル…など数々の水処理の装置や設備で放射性物質の分離を行う必要のある、汚染水の親玉のような存在だ。
本来地下にあるはずの高濃度滞留水が、何らかの理由でもしも1階に流出していたとしたら大変なことになる。1階のフロアということは、建屋外の地表に流れ出る可能性もある。そんなことになれば、高濃度滞留水が排水路を流れて海へ、という最悪の事態にもなりかねない。
だから、引用した「汚染水ではない」という表記は、地下にたまった高濃度滞留水、汚染水の親玉ではない、という意味だと受け止めたい。
ところが、続報で…
しかし、翌日の「日報」で、続報として漏洩水の放射線量を発表する際の表現が良くなかった。
当該漏えい水の分析結果は以下の通り。
<4号機タービン建屋1階漏えい水>(午後1時40分採取)
セシウム134:2,500 Bq/L
セシウム137:8,700 Bq/L
なお、建屋外への漏えいはなく、この値はタービン建屋滞留水と比較して低い値であることを確認。漏えいした水については、タービン建屋地下へ移送処理を実施。
1階のフロアに漏れていた水の分析結果をすぐに発表した対応はまっとうだろう。漏れ出た水をタービン建屋地下に移送するという処置も順当なものと考えられる。しかし漏れ出ていた
セシウム134:2,500 Bq/L
セシウム137:8,700 Bq/L
という水の汚染度はとんでもなく高い。東京電力としては、さらに放射線量が高い高濃度滞留水に比べたら十分に低いということを示したのかもしれない。しかし、東京電力の日報の「文法」では、前日発表したものに、新たな事項を下線入りで追記する場合が多く、この日の日報もそうであった。
前日の警報発生直後に駆けつけた東京電力社員が、高濃度滞留水ではないというつもりで「汚染水ではない」といったその水の放射線量が、2,500 Bq/L、8,700 Bq/Lだったと並べて発表したことで、「8,700 Bq/Lの水」イコール「汚染水ではない」という発表になってしまっている。
高濃度滞留水が移送されて処理される際に測定された数値、たとえば「集中RW地下高汚染水(滞留水)」の値が、1リットルあたり、セシウム134で9,300,000ベクレル、セシウム137では31,000,000ベクレルだった(2月23日のデータ)といった基本的なデータを併記してなかったので、今回漏れ出た水の放射線量の高さばかりが目についてしまう結果になっている。
問題はそれだけではない
しかし、考えてみれば、漏れ出た水そのものの放射線量が高かった(滞留水に比べればそうとう低いとはいえ)ことについて、もっと真剣な姿勢で対処するべきだったのではないだろうか。
東京電力の発表によると、この漏れ出た水の出所は「タービン建屋補機冷却系の水抜き作業に起因するもの」だったという。
水抜き作業で漏れた水が1階フロアに大きな水たまりを作ったということは、常識的に考えれば、タービン建屋の1階部分より高い場所に、「セシウム134:2,500 Bq/L、セシウム137:8,700 Bq/L」レベルの水が、タービン関係のいろいろな機器を冷却するために存在しているということだ。
今後も同じようなことは発生しうるということだ。そのときに、さらに大量の「セシウム134:2,500 Bq/L、セシウム137:8,700 Bq/L」レベルの水が漏れ出して、ついには建屋の外まで流れ出てしまうという事態が発生しないとも限らない。その対処こそ喫緊ではないか。
まさか、冷却水の「セシウム134:2,500 Bq/L、セシウム137:8,700 Bq/L」レベルの水を、マジで「汚染水ではない」と認識しているなんてことはないと思うのだが。