2月10日、防衛省はクラスター弾の廃棄完了をシンプルなリリースとして発表した。
クラスター弾の廃棄完了について
平成27年2月10日
防衛省
クラスター弾に関する条約(平成22年8月発効)に基づき実施してきた、自衛隊が保有するクラスター弾の廃棄について、2月9日に廃棄完了を確認しましたのでお知らせいたします。
今般の廃棄完了は、クラスター弾に関する条約上の義務を履行し、クラスター弾がもたらす人道上の懸念に対応するものです。
防衛省としては、今後とも、軍備管理・軍縮にかかわる国際的な取組に協力するため、積極的な役割を果たしていきます。
クラスター弾は多数の子爆弾を内蔵した爆弾で、投下とともに飛び散った無数の子爆弾によって、広い面積を制圧できるとされる。第二次世界大戦中に日本の多くの都市に投下された焼夷弾も、集束焼夷弾と呼ばれるクラスター爆弾の一種で、親爆弾には40発~50発近い油脂焼夷弾(ナパーム弾)が子爆弾として束ねられていた。
クラスター爆弾は子爆弾の数が多いほど攻撃の範囲が広がるので、1発の親爆弾に200発から300発、さらに700発近い子爆弾が格納されているものもある。人員を殺傷を目的とするもの、軽装甲車両などを破壊するものや火災を起こすものなど多種多様だが、その性質上、軍事目標だけをピンポイントで攻撃するものではない。広い範囲に散布されるクラスター爆弾による攻撃は、無差別攻撃的なものにならざるをえない。また、爆弾の総数が増加することで不発弾の問題が深刻化する。ものによっては子爆弾の40%が不発という例もあるらしい。
クラスター爆弾をめぐっては、戦闘が終わった後になって、ばら撒かれていた不発弾が突然爆発し、一般の市民を傷つけるケースが頻発。非人道的な通常兵器として、2006年頃からNGOや有志国を中心にその使用を制限する動きが進められてきた。
専守防衛をうたう日本の自衛隊も、航空自衛隊がクラスター爆弾を、また陸上自衛隊が子弾をまき散らす砲弾やヘリコプターから発射するロケット弾、多連装の大型ロケット弾などのクラスター弾を保有していた。これを廃棄すべきかどうか、日本政府の方針は国際的な条約制定への動きの中で揺れた。
日本政府の姿勢が転換した2007年、当時の航空幕僚長(航空自衛隊制服組のトップ)だった田母神俊雄氏の発言が注目を集めた。田母神氏は5月25日の記者会見で、クラスター爆弾が日本の防衛に有効とした上で、次のように述べている。
クラスター爆弾で被害を受けるのは日本国民。国民が爆弾で被害を受けるか、敵国に日本が占領されるか、どちらかを考えた時、防御手段をもっておくべきだ
同日、久間章生防衛大臣も閣議後の記者会見で、敵に攻撃されて蹂躙されるよりは戦った後に不発弾処理を行う方がいいという旨、発言していた。
2007年2月にノルウェーの首都オスロで開催された国際会議では、クラスター爆弾の禁止について話し合われたが、日本政府はオスロでの会議後の宣言に署名していない。しかし翌2008年12月の「クラスター弾に関する条約(オスロ条約)」には即日署名。2009年6月には国会の承認手続きが終了(衆参両院とも全会一致)して批准されていた。