ロシナンテスといえば、東北の名取市や亘理町を拠点に、その土地の人々に密着した活動を続けてきた団体としてご紹介してきましたが、元々はアフリカ・スーダンで医療支援を行う為に、外務省医官を退官した川原尚行さんが始めた活動です。
川原さんは外務省医官としてスーダンにあった際、目の前にさまざまな生活改善を必要としている人たちがたくさんいるにも関わらず、医官としての立場では医療行為すらままならないという現実から、「それなら外務省医官という職を辞して、スーダンの人たちの医療支援に携わろう」と決心した人。
周囲からは「アホ」と言われることもあったらしいですが、「それを行わない選択肢などない」と、本当に外務省医官という職をなげうち、彼のこころに賛同した人々の支援もあってアフリカでの医療支援・生活支援・地元の人たち自らが幸せな暮らしを実現していくための手助けに、その身をなげうった。それが川原尚行という人物です。
そんな川原さんが年末までの日本滞在を終えて、アフリカからメッセージを送っています。本来ならもっと早くシェアしてお知らせしたかったところ、みなさんへのお知らせが遅くなって本当に申し訳ない。ともあれ、川原さんの年頭のあいさつをここに引用します。
新年あけましておめでとうございます
2015年01月06日
スーダンより、あけましておめでとうございます!
本年もロシナンテスをどうぞよろしくお願い申し上げます。
昨日、年末年始休暇で帰国していた日本からスーダンに戻って参りました。
「一年の計は元旦にあり」とあるように、はじめからしっかりと計画を立てていかなければなりません。
ロシナンテスがスーダンにおける事業で2015年に行うべきこと
まずは、巡回診療の深化です。
新しいランドクルーザーが新年には稼働します。
そして、何よりドクターカーの実証実験も今月より開始します。
ドクターカーには、医療機器を掲載しており、これを如何にして活用するのかをスーダンの医療関係者とともに議論して実証実験を行っていきます。そして、スーダン人の医療関係者たちとともに地域医療を行っていく体制を固めねばなりません。
十分な教育を受けた助産師とは違いますが、地域の母子保健を担っている村落助産師さんですが、ロシナンテスは巡回診療先の村々の村落助産師たちの教育を行っています。今年は、それをさらに充実させねばなりません。
そして、巡回診療の地域を大きく3つの分けて、その中心となる村に診療所の建築を行なう必要があります。
現在の巡回診療は月に一度しか巡回に来ませんが、診療所の建設が恒常的な診療へとつながっていきます。
地域医療を充実させるための、病院の建設の着手も必要に迫られております。
第一義的には、地域医療の中心的な戦略となる予防医療のために検査機能を充実させなけらばなりません。
第二義的には、スーダンの医療をさらに充実させるための検査機能を持ち得たものにして、現在、海外へ渡航して医療を受けているスーダンの患者さんの受け皿となるような機能をもたせます。
後者の機能では、有料診療で行うものとして、地域医療を財政的に支える基盤となるようにしなくてはいけません。
そして、そのためには、日本の医療技術を、スーダンに持ってこなくてはなりません。
現在、日本の医療機器メーカー(ニプロ)から技師である坂野誠君がスーダンの病院で活動を継続させていますし、昨年末は2か月間にわたり内視鏡専門医である佐藤拓史先生にもスーダンに来ていただきました。
2015年も継続して、日本からの技術指導を行っていきます。
そして、スーダンの首都のハルツームから車で8時間くらい離れた地域である北コルドファン州での国連WFP、スーダンのNGOであるSIDOとの共同事業での栄養不良の子供たちの為の栄養改善事業を行います。
これは、6か月間という短い事業ですが、しっかりと行い、次につながるようにしたいと思います。
ロシナンテスは、スーダンの地域の医療を充実させていきます。
これは、医療関係者のみでは、達しえないことであると思います。
医療を支えるためのインフラ作り、通信システムの確立、地域経済の発展など、あらゆる分野の人たちの協力が必要です。
そのために、日本とスーダンとの協力体制の確立を作らねばなりません。
スーダンは、イスラム色の強い国です。
今後の世界はイスラムを如何に理解するのかに、力を注ぐ必要があると思います。
敵対心のみでは、正しい方向に向かわないでしょう。
我々ロシナンテスが挑もうとするスーダンの地域医療の発展を、日本とイスラム教であるスーダンの人たちのあらゆる分野の人たちに協力してもらう体制を作ることは、イスラムを理解することに他なりません。
日本での正月気分が残る中、スーダンのハルツーム上空で飛行機の中で満月を見て、気持ちが引き締まりました。
2015年、この一年再び頑張ろうという気持ちになりました。
私が独り立ちして、10年となる2015年、スーダンに留まっていられることは、皆様のおかげであると思い、感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にありがとうございます!
2015年、このブログを通じて、スーダンからメッセージを届けたいと思います。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
ロシナンテス
川原尚行
ひとりの男の熱意が、国の内外を問わず、うごかずにはいられない人たちを動かして、それが世界をよりよい方へ進めようとしていることがご理解いただけるでしょう。
もちろん、その背景には、多くの人々の力があります。たとえば、ロシナンテスのスタッフとして活動を支えている人たちがいます。
医療の「ゴミ」はどこへ?
2015年01月08日 12:00 モバイルクリニック
みなさま、あけましておめでとうございます。本年もロシナンテススタッフ日記をよろしくお願いします。
新年早々の記事にしては似つかわしくないトピックですが、医療の「ゴミ」問題についてお話させていただきます。以前このブログでも紹介したディスペンサリーと呼ばれる村の簡易診療所においてもこの医療廃棄物の問題があります。日本では使われた針は針専用の箱に、また血液の付着したものはそれ専用のゴミ箱に捨てられてほかの一般ゴミとは別に処理されるわけですが、我々が以前視察したところでは使用されたバイアルやアンプル(薬剤などが入っていた容器)が写真のように土に埋められたり燃やされていました。問題なのは割れたかけらがむき出しになっていることから裸足であやまって踏んでしまった場合には危険です。針専用の箱は診療所内にありましたが、あふれんばかりにいっぱいでした。この医療廃棄物の問題はこの地域だけのものではなく、国全体の問題でもあります。またスーダンだけでなく医療廃棄物の問題は世界中の問題でもあります。こうした医療廃棄物が適切に処理されなければそれにより感染症を引き起こしてしまうこともあり得ます。
こうした問題は普段あまり考えられない問題ではありますが、医療が足りない地域に医療を届けるといった活動の一方でこうした問題についても考えて行く必要があるかと思います。
医療に携わった経験がある方なら、これがどれほど深刻な状況か、おわかりいただけるでしょう。スーダンでは医療の安全性に関して欠くことの出来ない措置が、日本と比べてほとんど50年遅れなのです。
何かできることがないか、そう思えてきませんか。
スーダンからのリポートには、人間という存在そのものについて館がさせられるものも少なくありません。たとえば1月11日にアップされたこの記事。
手打ち式
2015年01月11日
日本は成人式ですね。
新成人の皆様、おめでとうございます。
私の娘も新成人でして、家内から、長女の綺麗な着物姿の写真がスーダンに送られてきました。
家族の成長が、私のスーダンでの活動の原動力でもあります。
さて、この週末にガダーレフに行ってきました。
これは、ロシナンテスで以前働いていたナジール医師の結婚式に招待されたためです。
(中略)
何の集会かもわからずにいましたが、とにかく大勢の人が集まっています。
その中にハサンやシェリフ・ハサバッラ村の主要メンバーの顔が見られます。
そして、熱い抱擁を交わしました後に事情を聞くと、この集会は、日本でいう「手打ち式」のようです。
昨年の8月に、ある部族「A」がある部族「B」の家畜を奪おうとして、羊飼いの中の一人を殺害したそうです。殺されたBの部族は、その強盗団を攻め、その中の部族「A」の一人を殺害したようです。
日本であれば、事件として警察が出てきて、その後裁判となるところですが、ここはスーダンの地方で、違った裁きが行われます。
政府組織は、傍観者となり、部族間の話し合いを優先させるのです。
それが、この日の集会でした。
我々は、これはこの場にいることはふさわしくないと判断し、挨拶のみで済ませ、結婚式会場へと向かいました。
あとで聞くと話し合いはうまくいき、最初に強盗を企てた部族「A」が謝罪の意を表し、部族「B」がそれを受け入れたようです。
そして、部族「B」の殺人は、正当とみなされ、罪はないとのことでした。そして、部族「A」の有力者たちが謝罪をして、「このようなことが二度と起きないように、部族を引き締めていく」と約束したとのことです。
手打ち式があった村は、羊飼いが住んでいた部族「B」の村でした。
この当事者たる二つの部族以外にも、家畜を飼う仕事をしている多くの部族、そして政府関係者がこの話し合いを見守ったというのです。
私は、この話を聞いて、「民の力」は大いに存在するものであると思いました。
法整備の進んだ日本では、法の下と、裁判所での裁きなのでしょうが、この事件は当事者の集団の直接の話し合いという点で、全てが身近に感じられる裁きだったのだと思います。
(後略:続きはぜひロシナンテスのブログで)
ロシナンテというのは、あの有名な小説でドン・キホーテがまたがっていた痩せ馬の名前。その名には「元・駄馬」という意味がこめられているのだとか。
いまの姿はたとえダメな馬であっても、まっすぐな心をもった駄馬が集まれば、正しいことが実現できるはず。そんな思いが、複数形としてのロシナンテスにはこめられているのです。(個人的解釈ですが)
かく言う私もロシナンテ(これまた勝手に言ってるだけですが)。でもきっとあなただってロシナンテ。ひとりじゃただの駄馬かもしれない。しかし、自分のことを駄馬だと思っていても仕方がない。何も始まらない。駄馬は駄馬なりに、まっすぐな道を信じて歩いていくうちに、いつの間にか仲間達が集まって、ロシナンテがロシナンテスになっていく。大きなものを動かす力になっていくかもしれない。
その先に、「世界平和」があるのだと私は確信しています。
ロシナンテスはアフリカ・スーダンと、東北を大きなふたつの拠点として、活動を続けています。ホームページやブログを読んで感銘を受けてもらえたなら、きっとあなたもロシナンテ。ともに手を携えて、ロシナンテスとしてやっていきましょう。
アフリカ・スーダン、そして東北を問わず、これからもロシナンテたちの活動をご紹介していきますので、今後ともごひいきに!
ひとりはみんなの為に
みんなはひとりの為に
ぜひ、よろしくお願いいたします。