1号機放水路でセシウムだけが急上昇。漏洩源がどこなのか、汚染水の種類も流入経路も不明。2号機側の井戸でも高いセシウム濃度を検出
10月24日(金曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
1号機放水路で、溜まり水のセシウム濃度が急上昇。22日採取分ではセシウム137が1リットル当たり12万ベクレル
※1~3号機放水路については、平成26年4月より溜まり水および降雨時の流入水による水質調査を実施していたが、9月までの調査結果において主にセシウムによる汚染は確認されているものの、建屋滞留水や海水配管に比べて十分に低い濃度*であった。
10月15日に台風後の放水路溜まり水の調査を行ったところ、1号機放水路上流側立坑において、セシウム137が6.1×10^4 Bq/L(セシウム134:2.0×10^4 Bq/L)とこれまでに比べて大幅に高い濃度であることを確認。
上昇した原因については、台風の豪雨により汚染土壌を含んだ雨水が、排水管または排水管脇の水抜き管から立坑を通じて1号の放水路に流入したものと想定。
また、その後の調査(10月22日採取)においても、1号機放水路上流側立坑におけるセシウム137が1.2×10^5 Bq/L(セシウム134:4.1×10^4 Bq/L)とさらに上昇していることを確認。
モバイル処理装置による浄化を出来るだけ早く開始できるよう準備を実施し、また、タービン建屋周辺の調査、除染を行っていくとともに、上昇原因の調査および溜まり水の浄化に向けた準備を進めることとする。
なお、以下の理由により、本事象による外部への影響は無いものと考える。
・当該放水路の水位は地下水の水位より低いことから、放水路から地下水への流出は無いと考えられること。
・当該放水路は土砂により閉塞しており、さらに放水路出口は海側遮水壁の内側であり、埋立が終了していることから、直接外洋に流出しないこと。
・港湾内外のセシウム濃度は、台風後も特に有意な変動が確認されていないこと。
*<9月26日採取> セシウム134:3.2×10^2 Bq/L、セシウム137:9.5×10^2 Bq/L
排水路の位置関係や原因の推定については下の資料に詳しい。
1号機放水路調査結果
■2度の台風通過後の10/15に採取した上流側の溜まり水の濃度が、61,000Bq/Lに急上昇。1週間後の10/22には、更に120,000Bq/Lに上昇していた。
■全β濃度も上昇しているが、セシウム濃度と同程度の濃度であることから、検出された全β放射能はほとんどがセシウムによるものと考えられる。また、トリチウム濃度は上昇していない。
■台風に伴う豪雨による何らかの汚染の流入と考えられるが、これまでの降雨時にはこのような上昇は見られておらず、具体的な流入経路は不明
全βのほとんどがセシウムによるもので、トリチウムの上昇も見られないとしたら、この汚染水の出所はどこなのか。
◆タービン建屋地下の溜まり水であれば、セシウムはもちろん他の核種も含まれる汚染の原水というべきものなので、セシウムだけが高い濃度であることは考えにくい
◆RO濃縮塩水と呼ばれる、タンク群からの漏洩で問題になってきた濃縮汚染水では、セシウム以外の核種による放射線量が高いはずなので、これも考えにくい
◆セシウムだけが選択的に高いものとしては、セシウム吸着装置の吸着塔内部の水、あるいは吸着用ゼオライトがあるが、装置や吸着塔の仮置き場は4号機のさらに南側にあって1号機からは距離が離れている
これまでにない種類の漏洩が発生しているおそれがある。今後の推移に注目したい。
多核種除去設備B系、10月23日に処理運転再開
10月23日午後5時42分に処理運転を再開。運転状態に異常がないことを確認。
運転再開に際してとられた対策は、
・バックパルスポット作動時の圧力を運転に影響がない範囲で低減する
・ブースターポンプ1出口でのカルシウム濃度測定を日々実施
・監視しながら処理を継続
・炭酸塩スラリーの流出が確認されたクロスフローフィルタ(8B)については、予備品と交換を実施
2号機建屋西側のサブドレン(井戸)で高いセシウム濃度
※ 1~4号機建屋近傍のサブドレン(全42箇所)については、ピット内の水質調査のため、サンプリングを実施。
その中で、2号機原子炉建屋西側に設置されているサブドレンNo.18およびNo.19について、10月22日および23日にサンプリングした水のセシウム134およびセシウム137が、その周囲のサブドレンに比べて高い濃度であることを確認。
なお、当該サブドレン近傍のサブドレンNo.20については、放射能濃度の上昇は見られていない。
当該サブドレンに高い放射能濃度が検出されたものの、当該サブドレンの水位は約OP.7~8m、2号機原子炉建屋の滞留水の水位は約OP.3mであることから、原子炉建屋からの滞留水の流出は無いと考える。今後、当該および周辺のサブドレンについて1週間程度の間1日1回の放射能分析を行い、傾向を監視していく。なお、No.18およびNo.19からの地下水汲み上げについては、当面の間、停止する。
<サブドレンNo.18>
(10月22日採取)
セシウム134:約9.4×10^4 Bq/L
セシウム137:約3.3×10^5 Bq/L
(10月23日採取)
セシウム134:約7.1×10^4 Bq/L
セシウム137:約2.5×10^5 Bq/L
(前回:平成25年12月2日採取)
セシウム134: 1.4×10^2 Bq/L
セシウム137: 3.4×10^2 Bq/L
<サブドレンNo.19>
(10月22日採取)
セシウム134:約1.0×10^5 Bq/L
セシウム137:約3.6×10^5 Bq/L
(10月23日採取)
セシウム134:約9.5×10^4 Bq/L
セシウム137:約3.3×10^5 Bq/L
(前回:平成25年11月28日採取)
セシウム134: 1.5×10^2 Bq/L
セシウム137: 3.5×10^2 Bq/L
<サブドレンNo.20>
(10月22日採取)
セシウム134:約8×10^0 Bq/L
セシウム137:約1.6×10^1 Bq/L
(前回:平成25年11月28日採取)
セシウム134: 2.7×10^1 Bq/L
セシウム137: 6.4×10^1 Bq/L
(概要)
2号機原子炉建屋西側のサブドレン(井戸)No.18、No.19で、放射性セシウム濃度が22日から急増。23日も高いレベルで推移。No.19ではセシウム137が36万Bq/Lを記録した。
サブドレンの水位は、原子炉建屋内の溜まり水の水位より高いため、建屋内からの滞留水の流れ込みはないと考えられる。
今後1週間ほど、1日1回の分析を行うとともに、該当するNo.18、No.19からの水の汲み上げは停止する。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年10月11日午前10時46分~)
※滞留水移送は稼働中
◆3号機
1号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年10月11日午前10時5分~)
※滞留水移送は稼働中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
地下水バイパス ~通算29回目の海洋排出を完了
同日午前10時14分に漏えい等の異常がないことを確認。同日午後4時40分に排水を停止。排水停止状態に異常がないことを確認。なお、排水量は1,638m3。
※同日とは10月23日
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
10月23日のパトロールにおいて、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井
新規事項なし
※「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」のページでの該当するデータ公開も行われていない。
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年10月24日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
10月23日分のデータでは、地下貯水槽ドレン孔水で最高値は「iの北東側」での250Bq/L。地下貯水槽漏洩検知孔水では「iの北東側」での57,000Bq/L。(ともに全ベータの値。1立方センチ当たりで発表された数値をリットル単位に換算)