毎年、九州と四国を合わせた面積に近い森林が地球上から失われているという。森林破壊については一時期テレビでよく取り上げられていたように思うが、ここ最近目にする機会が減ったように感じるのは気のせいだろうか。
私自身も意識が薄れてしまっており、先日森林破壊について調べた際に改めて深刻な状況であることを認識した。森林破壊、とりわけ地球環境に大きな影響をあたえると言われている熱帯雨林について調べてみた。
熱帯雨林とその減少について
熱帯雨林について、大辞林には次のように書かれている。
きわだった乾季のない熱帯地方に発達する樹林。高さ50メートル 以上の常緑樹を主体とし,つる植物・樹上着生植物が多い。熱帯雨林。熱帯降雨林。
通常は年平均気温25℃以上、年間雨量2000mm以上の熱帯地域に形成されるという。主に南米アマゾン川流域、アフリカのザイール川流域、東南アジアの島に存在しており、一般的に土壌がやせており、保水力も弱いのでいったん伐採されると砂漠化する危険が大きいと言われている。それにも関わらず、農地への転用などのために毎年北海道ほどの面積が焼かれたり、伐採されている。かつて、熱帯雨林は現在の2倍以上の面積だったそうだが、1975年までにその約4割が失われてしまっている。
熱帯雨林の破壊は南米のほか、アフリカや東南アジアでも著しいものがある。インドネシアのスマトラ島では、2500万haあった自然林はここ約25年間で半分以下の1200万haまで減っている。減少の理由は他の東南アジアの熱帯雨林の消失と同様に、パーム油を採るためのアブラヤシや、紙パルプの原料となる樹木を植えるために伐採されており、このままでは熱帯雨林が消滅する恐れが指摘されている。
熱帯雨林が果たす役割
熱帯雨林は野生の生き物のすみかである。陸地に占める割合が7%にも関わらず、地球上にいる生物の50~80%が生息していると考えられている。現在もアマゾンの熱帯雨林ではぞくぞくと新種の生物も見つかっている。
樹木は建築材や紙の原料など、資源として役割のほかにも二酸化炭素を吸収して、酸素を作り出すことはよく知られている。もともと地球には酸素が存在しなかったが、約30億年という長い時間をかけて植物が酸素をつくりだし、現在の世界がある。増え続ける二酸化炭素による温暖化が問題になっているが、二酸化炭素を吸収して酸素を作り出しているのは人ではなく植物である。世界最大の熱帯雨林であるアマゾン川流域の森では、地球の約3分の1近くの酸素がつくられているそうである。そのため熱帯雨林は「地球の肺」とも言われている。
また熱帯雨林は新薬の開発には欠かすことができない。熱帯雨林に生育する植物からつくられる薬は多く、特に抗がん作用があると特定された植物の70%は、熱帯雨林に生息していると言われている。
100年後、どうなっているのだろうか
貴重な熱帯雨林の森も、現在のペースで減り続けると100年後には地球上から消えてしまうと言われている。熱帯雨林の消滅は森だけではなく、そこに住んでいる生物や人間の存続も危うくさせるのは言うまでもない。
熱帯雨林が減少している要因について、日本人も他人事とは言えない。日本で使用される木材の7割は海外からの輸入であり、日本で販売されたコピー用紙のうち34%は輸入されたものである。日本は世界有数の熱帯木材の輸入国となっている。森を切り開いて作られた土地で栽培されたものについても、直接及び間接的に大きな恩恵を受けている。
1990年からの10年間で失われた森は地球全体で1億6千万ヘクタールにもなる。これは1秒間でテニスコート20面、1日にすると種子島1個分の森が失われていたことになる。今世紀に入り、減少のスピードは若干緩やかになったといわれているものの、今のままでは地球上から森が消えてしまう時期が若干先延ばしになったにすぎない。
参考WEBサイト
Text:sKenji