Google Mapの航空写真はとても便利で重宝する。東京電力の事故原発に関する記事を読むときにも、1号機廃棄物処理建屋とかプロセス主建屋とか、H4タンクエリア、G4エリア、排水路出口付近などと言われても、位置関係がわからない。東京電力が発表する資料にある地図は簡略化されすぎていることもある。
そんな時に、Google Mapの航空写真を参照すると位置関係がはっきりする。場所が分かっただけで、発表内容の理解まで進むような気がするほどだ。
ところが、今日(2014年9月5日)、Google Mapで事故原発付近を見てみたら、なんと写真がすっかり差し替わっていたのだ。
2枚の航空写真、どちらが古いか?
2枚の写真を見比べてほしい。(別ウィンドウで開いてもらった方が見やすいかもしれない)
2枚のどちらが古い写真か、3号機や4号機のあたりを見れば一目瞭然。上の写真では3号機・4号機ともに原子炉建屋の上に瓦礫が散乱した状態。爆発で破壊された建屋の解体がまさに進んでいる最中のもの。
それに比べて下の写真では、4号機には使用済燃料取出し作業用の建屋カバーが設置されているし、3号機も大きなガレキは撤去されてオペフロ上には円形のシールドプラグ(その真下に圧力容器がある)まで何となく見てとれる。
上の写真には1号機のカバーが設置されているから、2011年の10月以降、それほど下らない時期の航空写真だと考えられる。下の写真は元画像にDエリアの箱型タンクを移送している経過が見て取れるから、おそらく2014年初めごろのものだろう。
いま使われている画像はどちらか?
それでは、どちらの航空写真が2014年9月5日時点のGoogle Mapに使われているか。普通に考えれば、古い写真から新しい画像に差し替えられていくようなものだが、実際には逆だった。
少なくとも8月25日までは下の画像が使われていたようなのだが、現在では事故からおそらく1年未満の古い写真に差し替えられていたのである。
なんで??
たぶんこの件とは関係ないとは思うが、東京電力は今年6月2日、山側遮水壁の工事が始まったその日、報道機関が事故原発敷地内を上空から撮影したことに対して、異例ともいえる「お願い」を発表している。
福島第一原子力発電所における核物質防護に関するご留意のお願い
福島第一原子力発電所における地下水バイパスの排水作業ならびに凍土遮水壁の設置作業について、一部の報道機関より空撮映像が放映・掲載されております。
これらの放映された映像の中には、規制当局から情報管理の徹底を指導されている、原子炉等規制法に定められる「特定核燃料物質の防護のために講ずべき措置」に抵触する事項が含まれております。
再三お願いをしているところですが、今後も、核物質防護上、建屋の出入口、フェンス、センサー、カメラなどの核物質防護設備を望遠カメラ等で撮影をすることはご遠慮いただきますようお願いいたします。
*核物質防護:核物質の盗取又は不法移転、及び個人又は集団による原子力施設の妨害破壊行為に対し、核物質や原子力施設を守ること。
以 上
引用元:福島第一原子力発電所における核物質防護に関するご留意のお願い|東京電力(報道関係各位一斉メール)平成26年6月2日
まさか、今回の航空写真差し替えが、上記のような要請を汲んでのものとは考えにくいが、Googleが写真を替えたその理由が知りたいところだ。どこにどれくらいの核物質が保管されているかは、東京電力が定期的に公開している空間線量からすでに知れ渡っている。万一盗まれたり持ち出されたりしないようにするのは、事業者である東京電力の責任だ。
むしろ廃炉への進捗を確認するためにも、定期的に新しい写真に差し替えていってほしいほどだ。現在の状況を広く知らせることこそが、廃炉推進を応援する機運を高めていくことにつながると信じる。