G4タンクエリアの堰内から汲み上げられた水は、どのように処理されることになるのだろうか?
9月5日(金曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
G4タンクエリアの高濃度汚染水漏れの続報。漏出量を約1リットルと推計
当該連絡弁からG4南タンクエリア堰内に滴下した量を評価した結果、移送開始後にA5タンク水位が当該連絡弁の高さに到達したおおよその時間から、滴下発見後にビニール袋による養生を施すまでの時間を算出(滴下は1滴/秒として計算)して、約1リットルと推定。
A5タンク内の水位を下げるため、午後2時40分頃より、仮設ポンプにてA4タンクへの移送を行っていたが、ひび割れ箇所の補修および夜間における作業安全を考慮して、午後5時50分頃に移送を一旦停止。
その後、接着剤(パテ)にてひび割れ箇所の補修を行い、午後6時3分に滴下が停止したことを確認。9月5日以降、仮設ポンプを移送容量の大きなポンプに変更したうえで、A4タンクへの移送を再開する予定。
<A5タンクとA6タンク間の連絡弁からの滴下した水の分析結果>
・セシウム134:2.5×10^3Bq/L
・セシウム137:7.3×10^3Bq/L
・全ベータ :9.8×10^7 Bq/L
<滴下したRO濃縮水が混入したG4南タンクエリア堰内雨水(堰内の四隅から採取したもの)の分析結果>
・セシウム134:検出限界値未満~3.1×10^0 Bq/L(北東位置のみ検出)
(検出限界値:7.4×10-1~2.2×100Bq/L)
・セシウム137:1.3×10^0~6.5×10^0 Bq/L(最大値は北東位置)
・全ベータ:1.8×10^1~3.6×10^3Bq/L(最大値は北西位置)
上記の結果から、当該連絡弁よりRO濃縮水が滴下した場所に近い北西位置で全ベータが高い値となっているが、滴下した水(全ベータで9.8×10^7Bq/L)に比べて、十分低い値となっている。
<滴下場所近傍で採取した堰内雨水の分析結果>
・セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:1.6×10^1Bq/L)
・セシウム137:2.1×10^1Bq/L
・全ベータ:3.9×10^5Bq/L
なお、堰内雨水については、パワープロべスター(バキューム車)にて断続的に汲み上げを行っている。接着剤によるひび割れ箇所の補修を行った以降、定期的なパトロールを実施し、当該連絡弁からの滴下が無いことを確認。
引用元:福島第一原子力発電所G4タンクエリアのA5タンクとA6タンクの連絡弁からの水滴下について(続報2)|東京電力 平成26年9月5日
【ポイント】
・セシウム濃度が低いのは、セシウム除去装置を通した後に濃縮された汚染水だから。セシウム以外の全ベータは、滴下水で98,000,000 Bq/L、漏洩が発生した附近の堰内の水でも390,000 Bq/Lと、かなり危険な濃度を示している。
・堰内の四隅から採取した水の放射性物質濃度が低いのは、堰内に濃度を薄めるのに十分なだけの雨水がたまっていたこと、また堰の外周部までは放射性物質が拡散しきっていないことを意味すると考えられる。
※汲み上げられた堰内水の今後の処理について明示されていない。過去に堰内から汲み上げられた水は、雨水等との扱いで処理装置を通した後、敷地内への陸上散布が行われている。
操作卓が落下した3号機プール水の分析結果とプラントパラメータ ~9月4日分
使用済燃料プール水の放射能分析の結果(採取日:9月4日)
・セシウム134:2.1×10^2 Bq/cm3
・セシウム137:6.1×10^2 Bq/cm3
・コバルト 60:1.5×10^2 Bq/cm3
・プラントパラメータ(9月4日午後4時現在)
・モニタリングポスト:有意な変化なし
・原子炉建屋オペフロ雰囲気線量:有意な変化なし
・使用済燃料プール水位:有意な変化なし
・スキマーサージタンク水位:有意な変化なし
分析結果については、前回と比較して有意な変動がないこと、また、プラントパラメータに有意な変動がないことから、燃料破損等の兆候は確認されていない。
プール水分析結果をリットル当たりに換算
・セシウム134:210,000 Bq/L
・セシウム137:610,000 Bq/L
・コバルト 60:150,000 Bq/L
4号機プールからの使用済燃料取出し作業、9月4日から再開
※4号機使用済燃料プール内に保管している燃料の取り出し作業については、燃料取り出しに使用している4号機原子炉建屋および共用プール建屋の天井クレーンと燃料交換機の年次点検を行うため、平成26年7月1日から燃料取り出し作業を中断していたが、(ここまで既出)
当該点検が終了したことから、9月4日より燃料取り出しに係る作業を再開。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年9月3日午前10時47分~)
※滞留水移送は運転中
◆3号機
1号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年8月19日午後4時18分~)
※滞留水移送は運転中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
地下水バイパス
同日午後4時23分に排水を停止。排水停止状態に異常がないことを確認。なお、排水量は1,559m3。同日、この際の南放水口付近の海水についてサンプリングを実施し、前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
※同日とは9月3日
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
9月4日のパトロールにおいて、タンク間の連絡弁からの滴下の影響で堰内入域を制限したG4南タンクエリアを除き、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
※G4南タンクエリアは堰内の入域を制限中
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井
新規事項なし
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年9月5日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
トリチウム濃度が明示されないRO処理された雨水を今後も敷地内へ「適宜」散水