東京電力制作の動画「廃炉に向けて」

東京電力の事故原発で働く人の約50%は福島県の出身者だという。現場で働く協力企業の作業員2人、東電社員1人にインタビューする構成の動画が東京電力のホームページにアップされた。

動画に収録されたインタビュー内容を以下に書きだします。

協力企業作業員(双葉郡出身)

Q. 業務内容は?
電気工事を担当しています。震災後トータル1年半ほどこちらで工事をやらせていただいております。

Q. 大変だと思うこと(仕事)は?
見ての通りの装備なので、工事関係になると力を使いますので、そういった時にやっぱり一番体力的にきついところが出てきます。

Q. 放射線への不安はあるか?
あの震災後、直後はですね、非常に線量高かったんですけど、いまは大分環境も整えられてですね、線量も下がって来てますので、いま現在ではそういった不安は抱えてません。

Q. モチベーションは?
毎日ここで働かせていただいてますので、作業員の安全とかそういったことを守らなければいけないんで、自分のモチベーションが下がっちゃうとまわりに悪影響を与えますので、毎日気持ちを切り替えてですね、作業に当たらせていただいています。

Q. 地元の方へのメッセージ
廃炉に向けてですね、安全確実に電源を供給していけるように頑張っていきたいと考えています。

引用元:動画「廃炉に向けて」解説 福島第一原子力発電所の状況について|東日本大震災後の福島第一・第二原子力発電所の状況|東京電力

東京電力社員(双葉郡出身)

Q. 業務内容は?
工事監理と1F免震棟内の宿直業務、および巡視、パトロール等になります。

Q. モチベーションは?
福島県出身の方が多々働いておりますので、ふるさとを思う気持ち、1日でも早い帰還を望んでいるということもありまして、作業に対して真剣に取り組んできております。そういうところに責任感を感じております。

Q. どのような思いで働いているのか?
社員である自分が、廃炉作業に携わって行かなければならないという考えを持っています。

Q. 地元の方へのメッセージ
ふるさとを離れて、避難生活させていること、あと避難生活で苦痛等与えさせていることを、ほんと深く「申し訳ないな」と思っております。私は1日でも早い帰還に向けて、これからも奮闘していきます。

引用元:動画「廃炉に向けて」 福島第一原子力発電所の状況について|東日本大震災後の福島第一・第二原子力発電所の状況|東京電力

協力企業作業員(双葉町出身)

Q. 業務内容は?
工事監督の仕事を行っております。

Q. 大変だと思うこと(仕事)は?
やはり装備が非常に厳しいというところでは、全面マスクとかタイベック、それからゴム手袋二重にしてでの現場作業ですので非常に厳しい環境です。全面マスクですので現場では水も飲めませんし、トイレにもなかなか行けないというところで非常に大変です。またですね、少しでも被曝を抑えようところでは、低い線量のところを探して作業を行ったりという工夫も我々の方ではやっております。

Q. 放射線への不安はあるか?
いまは法律に則って決められたルールの中でやっていますので、そういう意味で不安というのはありません。正直、妻の方からは「もう仕事辞めてもいいよ」という風には言われています。

Q. 東京電力に期待することは?
いまいろいろとですね、我々と一緒になっていろいろと改善がなされていると思います。それは休憩所であったり、今後できる食堂であったり、(作業)エリアの環境の整備などされていると思いますが、さらに作業環境、インフラ、線量の低減とか図れれば、さらにいいと思っています。

Q. やりがいを感じることは?
自分の行った工事などがよく報道などされています。そういった時に自分の中で非常にやりがいを感じていますし、またそれを家族に話すことができて、「私がやった」と話せることがやりがいにつながっていると感じています。

Q. あなたの夢は?
私はですね、震災の月にこどもが生まれています。そのこどもはまだ自分の目で自分の家を見たことがない状況です。そういった意味では近い将来、早く、廃炉の方を行いまして、少しでも軽い装備で自分の家を見れたらいいと、また私の家族や地元の方がた、まわりのこどもさんも含めてですね、早く、そういった日が来ればという思いで働いております。

引用元:動画「廃炉に向けて」解説 福島第一原子力発電所の状況について|東日本大震災後の福島第一・第二原子力発電所の状況|東京電力

事故原発で働く人たちの人数は

最後に登場した双葉町出身という方のインタビューがとくにリアル。線量の低い場所を探して作業する工夫とか、わが子に自宅を見せてあげたい気持ちとか。胸に迫ってくるものがある。

インタビューに登場したのは東電社員1名、協力企業2名だったが、実際に第一原発で働いている人数は何人くらいなのだろう。少し古いデータだが、昨年の4月から9月の半年間、第一原子力発電所における線量計(APD)の貸出し数を集計した資料を東京電力は公開している。線量計の貸出数はそれ即ち、線量が高い危険エリアで作業した人数と考えていいだろう。

2013年4月のデータ。ピンクが協力企業の作業員、紺色が東電社員

10人単位で丸められたデータだが、4月1日から7日までの1週間で集計すると、東電社員ののべ人数は1,110名。協力会社作業員は15,270人。平日はほぼ3,000人態勢で作業が行われ、土曜日は約半数。日曜日は最低限の要員のみの出勤という体制になっているのがうかがえる。そしてどうやら東電社員は基本的に週休2日。作業員の休みは日曜日のみで土曜日は隔週といった出勤状況も想像される。

動画に登場した人数の割合は東電1人に協力会社2人だったが、事故原発で実際に危険エリアで働いている割合は、協力会社の作業員13~14人に東電社員1人という計算になる。

文●井上良太