[コラム]謎が多い3号機格納容器からの水漏れ箇所

3号機主蒸気隔離弁室の水漏れ

東京電力は5月15日、3号機1階の主蒸気隔離弁室の調査結果として、主蒸気配管Dから水が漏れていることを発表した。

「福島第一原子力発電所3号機主蒸気隔離弁(MSIV)室内調査結果<速報>|東京電力 平成26年5月15日」2ページから引用

主蒸気配管、主蒸気隔離弁ってどんなもの?

例によって原発関係の用語は分かりにくいものが多い。主蒸気配管、主蒸気隔離弁、伸縮継手のそれぞれについて調べてみると、この水漏れの重大さが見えてくる。

主蒸気配管はタービンを回す蒸気の通路

主蒸気配管C(ここからは水漏れは確認されなかった)管の向こうは格納容器内部につながっている。管の外にガイドのようなものが見えるので、伸縮継手の部分かもしれない

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事故を起こした原発は、原子炉でお湯を沸かして蒸気をつくり、その蒸気でタービンを回して発電する。原子炉の圧力容器上部からタービンまで、電気をつくる源である蒸気を送り届けるのが主蒸気配管。東日本大震災で事故を起こした原発には、1基あたり4つの主蒸気配管が設置されている。

それぞれの配管の直径は約40センチ。運転中には282℃、約65気圧という想像を絶する状態の蒸気が勢いよくタービン建屋に送られていた。

事故原発と同じタイプの沸騰水型(BWR)と呼ばれる発電所では炉心が熱した水(水蒸気)が、直接そのまま主蒸気配管を通って隣にあるタービン建屋に送られ、発電を行った後には海水で冷やされて炉心に戻されるという循環が行われている。

主蒸気隔離弁は緊急時に主蒸気配管をブロックする

原子力発電所に異常が起こり緊急停止することをスクラムという。スクラムは圧力容器の中に並べられた燃料棒の間に制御棒を挿入して行われる。中性子を吸収する素材で造られた制御棒(棒といっても沸騰水型の原子炉では断面は「+」字形)を核燃料の間に入れることで、核分裂の連鎖反応をストップさせる。

核分裂反応はストップするものの、温度や圧力はすぐには下がらない。また主蒸気配管を通って蒸気が圧力容器・格納容器・建屋という3つの壁の外にあるタービン建屋に送られ続ける。この蒸気をストップさせるのが主蒸気隔離弁(MSIV)だ。

バネのように見えているのは弁を駆動させる部分で、主蒸気配管は弁の下に水平に通っている。蒸気圧に抗って短い時間(4秒ほど)で弁を閉めるため、駆動部分が斜めに設置された特殊な弁になっている。

原子炉でつくった蒸気でタービンを回す沸騰水型原発の主蒸気配管は、圧力容器の上部に取り付けられている。そこから格納容器内を1階部分まで引き下ろされて、格納容器を貫いて水平に配管されている。主蒸気隔離弁は格納容器内と格納容器の外に1系統2基ずつ合計8基が設置されている。

格納容器に隣接して、4つの主蒸気配管が集められているのが主蒸気隔離弁室。ロボットによる調査により、この部屋の近くで大量の水漏れが発見された。

配管に掛かる力を吸収する伸縮継手

その名の通り伸縮継手とは伸び縮みする継手。ジャバラ等の形状をした伸縮部分とスリーブで構成され、配管にかかる伸縮する力を吸収する。エルボー(曲がり)部分に複数組み合わせて立体的な動きに対応する「耐震用の伸縮継手」もあるが、単独で配管に組み込まれていることから、熱膨張による収縮を吸収するために設計されたものと考えられる。

調査結果の「?」

調査は主蒸気隔離弁(MSIV)室に直接立ち入って行うのではなく、MSIV室の上に位置する空調機械室から放射線モニタ管を使って内視鏡やカメラを入れて行われた。調査を行った現場が高い線量であることがうかがえる。

主蒸気配管Dの伸縮継手周辺からの漏えいが確認された。
漏えい水は、鉛筆2~4本程度の量と推定される。

引用元:「福島第一原子力発電所3号機主蒸気隔離弁(MSIV)室内調査結果<速報>|東京電力 平成26年5月15日」2ページ

主蒸気配管A・B・C、主蒸気系ドレン配管からの漏えいは確認されなかった。

引用元:「福島第一原子力発電所3号機主蒸気隔離弁(MSIV)室内調査結果<速報>|東京電力 平成26年5月15日」3ページ

床に溜まった水の流れからも、漏洩が起きているのは主蒸気配管D付近のみ。流れ出ている量は鉛筆2~4本ほどの太さと推定、という調査報告だ。下記にリンクしたページの下の方には動画のリンクも掲載されている。

東京電力では、格納容器内に溜まっている水の水位が、主蒸気配管などの配管貫通部より高いことから、格納容器と配管の隙間からの漏えいの可能性を示唆している。しかし水漏れが配管の外を通してなのか、配管内からのものなのか、現時点では判断できる材料はない。

配管そのものの破損の可能性を考慮しつつ、水漏れの謎について考えてみたい。

主蒸気配管Dの伸縮継手はいつ壊れたのか

原発で電気をつくる上での大動脈と言うべき主蒸気配管(あるいはその貫通部)が破損してた。この衝撃は大きいが、問題はその破損が事故のどの時点で起きていたのかということだ。

地震の揺れで壊れたのか。炉心の冷却が効かなくなった後、圧力容器や格納容器が極めて高い温度・圧力に達したとされる時間帯に壊れたのか。4階の燃料プール近くで爆発が起きた時の衝撃で1階にある配管(あるいはその貫通部)の一部だけが壊れたのか。

地震動で破損していたとしたらその後の格納容器内の圧力上昇を説明できるのか?
高温高圧状態になった後で破損したとしたら鉛筆数本分の破損で済むものなのか?
爆発は建屋内の設備や躯体にどんな影響を及ぼしたのか?
分からないことだらけだ。

漏えい箇所が高い線量の場所であるため、結論が出るまでには長い時間がかかることだろう。仮に伸縮継手の破損個所を切り出して分析したとしても、地震動の擦痕でも残っていない限り、地震の揺れによるものと判断される可能性は高くないかもしれない。

しかし、地震の揺れによる破損の可能性を完全に否定する証拠がはっきりするまでは、可能性を念頭に置き続ける必要があると考える。「分からない」と「ない」は違うのだから。

比べ物にならない流量

そもそもMSIV室での漏水が疑われたのは、今年の1月18日に3号機MSIV室の扉付近から排水孔に向けて水が流れ出ているのを、がれき撤去用ロボットの映像で確認したことが始まりだった。その後、4月にMSIV室上部、さらに5月15日にMSIV室下部のカメラによる調査が行われ、上に記したような調査結果となったわけだが、1月時点の動画をぜひご覧いただきたい。(リンクページの下の方からダウンロードできます)

3号機原子炉建屋主蒸気隔離弁室近傍における水漏れ | 東京電力 平成26年1月18日

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