[よく分かる事故原発マップ]タンクエリア編

百聞は一見に如かずということで

「凍土遮水壁」「地下水バイパス」「多核種除去設備ALPS」など、事故原発のニュースではさまざまなプロジェクトや施設の名称がぽんぽん飛び出してきますが、見たことも行ったこともない場所を想像するのは難しいですね。

東京電力が情報公開している様々な資料やリリースには、多くの地図や航空写真に施設の場所を記したものも登場しますが、全体の位置関係は今一つ。そこでグーグルマップの地図に、東京電力が公開している資料から施設やプロジェクト現場を落とし込んでみました。地図は海側(東)が北になるように回転しています。

まず今回はタンクエリアから。事故原発の今を見つめ、事故なき廃炉を応援する参考にしていただけたら幸いです。

まずは全体像をざっくりと。原発敷地の半分ほどにクローズアップしています。ブラウザを全面表示にするか、写真を別タブで開くと見やすくなります

と、写真を載せてみたものの、やはり見やすいとはいえない。原発の敷地が広すぎて、文字が読みにくくなってしまいます。なので、なじみのある場所から空中を移動するように拡大写真で紹介しましょう。

原子炉建屋の上空から

1号機から4号機が立ち並ぶ海沿いのエリア

事故で大きな被害が出ている1号機から4号機が立ち並ぶ海沿いのエリアです。白く見える1号機には原子炉建屋全体を包むようなカバーが施されています。このカバーは、1号機上部のがれき撤去作業のため、取り外される予定です。右隣に建屋そのものは壊れなかった2号機、爆発で建屋が大きく壊れた3号機、使用済み燃料プールから核燃料の取り出しが行われている4号機にもカバーが設置されています。

写真は上が東で海の方向。原子炉建屋の海側には、原子炉からの蒸気で発電を行うタービン建屋が並んでいます。3号機のタービン建屋の屋上には、2011年3月14日の爆発で破壊された穴を修復した跡も見えます。タービン建屋から東側には地下にトレンチが設置されていて、線量の高い場所が数多くあるとされています。

1号機の下(西)にTEPCOマークの形の植え込みが見えます(倒立像)。原発敷地内の法面を利用して東京電力のロゴをランドマークとして設置したのでしょう。

ロゴマークの植え込みが設置されるほどですので、かなりの急斜面なのが判ります。

TEPCOの植え込みから西へ

坂道をのぼってタンクエリアへ

1号機のそばから直線道路を西に向かいます。この通りは大熊通りと呼ばれているそうですが、両面はTEPCOマークから続く急斜面。法面の幅が西ほど少しずつ減少しているのは、この坂道が海と丘を結ぶ坂道だということです。北側の法面の上にはプレハブが増設された免震重要棟が見えます。

建屋の西、丘の上にはタンク群

タンク増設の作業も進行中

大熊通りの坂道をさらに上って行くと交差点に辿り着きます。大熊通りの南側、原子炉建屋の西の坂道の上には所狭しとタンクが立ち並びます。矢印で示したのは、箱型タンクで貯蔵効率の悪かったDエリアのタンクを空にして、矢印の場所に移動。空いた場所に溶接式の新しいタンクを建築する計画の1プロセスです。H1ブルータンクと示されたタンク群もリプレースが予定されています。

事故が発生したタンクの現状も

ボルト止めで造られたタンクから高濃度汚染水が流出した事故は、昨年夏のこととはいえ、まだ記憶に新しいでしょう。このタンクは後に解体され、跡地はきれいに整地されているようです。

こちらは2014年2月、バルブの操作ミスで汚染水があふれたH6エリアのタンクです。汚染水が漏えいした部分の除染作業が進められているところかもしれません。

それにしても、作業現場の車両と比較するとタンクの大きさが際立ちます。帯状の鉄板をボルトで締結して組み立てられるこのタンクの容量は約1000トン。より安全性の高い溶接式のタンクに随時リプレースされる予定になっています。

航空写真で見る現場の困難

上に紹介した「地下水バイパス一時貯留タンク」の近くを拡大すると、下のような映像が見えてきます。

タンク群と配管、配線、そしてホースの束

注目してほしいのは、タンク周りの道の脇を埋める配管やホースの束。黒く見えるラインは地下水バイパス用の常設配管だと思われます。オレンジ色っぽいのは仮設のビニールパイプやホース類のようです。その数もさることながら、道路を横断する場所には配管やホースを通すための段差が設けられているのも分かります。

建屋地下からさまざまな水処理施設を経由して原子炉の循環冷却水として送られるライン、地下水バイパスの井戸からタンクへ、タンクから海へと走るライン、濃縮した汚染水を将来行われる処理までの間保管するタンクへ伸びるライン。さまざまな内容物を運ぶ配管やホース。種類だけでも複雑極まるものが、場合によっては同じ道路脇に設置され、さらに重機が走り回る道路との横断ポイントでは車両と配管の立体交差――。

「○○タンクエリア」と聞くと、タンクが設置されている場所というイメージしか湧かないかもしれませんが、車両や移送ラインまで写り込んだ写真として見ることで、現場の困難が多少なりとも伝わってくると思うのです。

トラブルが発生した時(もちろん発生してほしくはありません)、見ず知らずの遠い福島県のとある町にある発電所の、なんだか分からない場所で何かが起きたらしいと漠然と感じていては何も変わらないような気がします。ほんの少しでも具体的な知識や「見た覚え」があるだけで、廃炉に向けての事故原発での作業が身近に感じられるはず。

ぜひ一度、GoogleMapなどの地図サイトで福島第一原子力発電所を探してみてください。拡大していけば「これなんだろう?」にきっと出会えるはずです。

タンクエリアのほぼ全体像

構成●井上良太