2014年6月3日 今日の東電プレスリリース

4,000トンの箱型タンク群から漏水。漏れた「雨水」には、水道水基準の7200倍に相当する全ベータ

6月3日(火日曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。

汚染水タンクエリアに設置してある4,000トンノッチタンク群からの水漏れ

いくつか疑問のある報告。
4,000トンノッチタンクのボルト付近から、1秒に1滴程度の水漏れ。漏れた水は堰の内側に留まっている。このタンクには汚染水タンク堰内に溜まった雨水を貯留していたという。

※平成26年6月2日午後3時頃、汚染水タンクエリアに設置してある4,000トンノッチタンク群における2つのタンクの側面上部のボルト付近から水が漏れていることを、パトロール中の原子力規制庁保安検査官が発見。

その後、当社社員による現場確認において、当該ボルト部から1秒に1滴程度の水漏れがあることを確認。当該ノッチタンクには汚染水タンク堰内に溜まった雨水を溜めている。漏えいした水は堰内に留まっており、堰外への漏えいはない。午後7時40分頃、当該タンク群の水を別のタンク群に移送して水位を低下させたことにより、漏えいが停止したことを確認。

当該タンク内水および堰内溜まり水を分析した結果、セシウム134と137はいずれも検出限界値未満、全ベータ値は当該タンク内水では72,000Bq/L、当該タンク堰内溜まり水では9,800Bq/Lだった。

なお、堰内雨水の排出基準(※)と比較すると、セシウム134と137は排出基準を下回っているが、全ベータ値については、堰内雨水のストロンチウム90の排出基準と照らし合わせて高い値となっている。

(中略:「参考 堰内雨水排出基準」)

また、当該タンク内水の分析結果に比べ堰内溜まり水の分析結果の値が小さくなっているのは、タンクから漏えいした水が堰内に溜まっていた雨水と混ざり薄まったものと考えている。

<当該タンク内水の分析結果(6月2日採取)>
セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:13Bq/L)
セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:18Bq/L)
全ベータ:72,000Bq/L
<当該タンク堰内溜まり水の分析結果(6月2日採取)>
セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:12Bq/L)
セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:17Bq/L)
全ベータ:9,800Bq/L

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年6月3日

漏れたのは雨水だと言わんがばまりの表現に疑念を覚える。漏えいが起こったノッチタンク内の全ベータは72,000Bq/Lだ。いくらセシウム134と137が検出限界値未満とはいえ、全ベータは極めて高い。漏れたのは雨水と誤解させるような表現とは裏腹に、漏れた水は実質的に中程度の汚染水に他ならない。

また、水道水の基準の7,200倍もの(厳密には水道の基準はセシウムで10Bq/kg)放射性物質が、タンクの運用開始以来、どのように推移してきているのか明らかにされていない。

さらに、ノッチタンク群にどのような形の堰があるのかも不明だ。外周堰やコンクリート基礎堰の設置計画の中に、雨水用ノッチタンクの計画は見当たらない。掘り下げた場所に設置しているから堰は必要ないということか。止水がどのようになっているのか確認したいところだ。

1号機~6号機

新規事項なし

◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中

◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年5月29日午前10時35分~)

◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年5月19日午前10時6分~)

◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中

◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中

◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中

共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況

新規事項なし

◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中

◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置運転中
・第二セシウム吸着装置(サリー)停止中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中

地下水バイパス揚水井の状況

新規事項なし

※地下水バイパス揚水井No.1~12のサンプリングを継続実施中。

焼却工作建屋の水位、焼却工作建屋西側サブドレン水の分析結果

新規事項なし

H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果

◆最新のパトロール

<最新のパトロール結果>
6月2日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年6月3日

◆H4エリア

<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年6月3日

◆H6エリア

<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年6月3日

1~4号機タービン建屋東側の状況

新規事項なし

1~4号機サブドレン観測井の状況

新規事項なし

地下貯水槽の状況

<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年6月3日

以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年6月3日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太