やっと判明。3号機の水漏れは圧力容器・格納容器を貫通する配管の継ぎ手から
5月16日(金曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
3号機圧力容器から格納容器を貫通する配管からの水漏れをようやく確認
3号機原子炉建屋1階の主蒸気隔離弁室付近で1月18日に発見された水漏れについて、主蒸気配管(D)の伸縮継手周辺から鉛筆2~4本ほどの太さで水が漏れていることが確認された。発見から4カ月たってようやく水漏れ箇所が確認されるというところに、現場の環境の厳しさが読み取れる。
1月18日に公表された水漏れの映像を見る限り、とても鉛筆2本~4本ほどの太さの水漏れとは思えない。格納容器からの水漏れが発見されたのは3号機では初となるが、水漏れ箇所はほかにもある可能性が高そうだ。
※1月18日午後2時40分頃、3号機原子炉建屋瓦礫撤去用ロボットのカメラ画像を確認していた当社社員が、3号機原子炉建屋1階北東エリアの主蒸気隔離弁室の扉付近から、水が、当該扉近傍に設置されている床ドレンファンネル(排水口)に幅約30cmで流れ込んでいることを発見した。(ここまで既報)
5月15日、当該室内の調査を行った結果、主蒸気配管(D)の伸縮継手周辺から鉛筆2~4本程度の漏えいを確認。なお、主蒸気配管(A・B・C)と主蒸気系ドレン配管からの漏えいは確認されていない。
主蒸気配管は圧力容器内で熱せられた蒸気をタービンに送る、原発の大動脈のような配管。圧力容器から格納容器を貫いて、さらに隣接するタービン建屋のタービンまで核燃料で熱せられた蒸気を送るもので4系統がある。
主蒸気隔離弁は原子炉が緊急停止した際に、タービンへの蒸気の流れをストップし、原子炉を外界から隔離する弁で、4系統ある主蒸気配管に格納容器の内外それぞれ2つずつ、合計8つ設置されている。
伸縮継手からの水漏れということは、地震の揺れによって配管が破損したことも考えられる。
平成14年から15年にかけて実施された3号機の第19回定期検査を紹介する東京電力のページに、主蒸気隔離弁の分解点検について写真入りで紹介されている。
5,6号機北側Fエリア滞留水処理装置で漏えい(続報)
※5月15日午前9時20分頃、5,6号機北側Fタンクエリア滞留水処理装置(淡水化装置)より水が漏れていることを当社社員が発見。午前9時21分に当該装置を停止し、午前9時33分に漏えいが停止したことを確認。なお、処理装置自体は専用のトレーラーに積載されており、漏れた水はトレーラー下部に設置している堰内の鉄板上に濡れている程度でとどまっている。漏えいした範囲は、約10m×約5m×約1mm。(ここまで既報)
その後、淡水化装置周辺の堰内の雨水に混入した可能性があることが確認され、漏えい量については雨水の放射能濃度を分析した結果より約2m3と推定。淡水化装置送水ポンプ下流側に設置されている安全弁排出ラインのホースが破損したことにより、漏えいしたことを確認。堰内に漏えいした水については午後3時35分から午後7時10分にかけて回収を完了。
また、漏えい水の分析結果は以下の通り。
・セシウム134:2.970×10^2 Bq/L
・セシウム137:7.746×10^2 Bq/L
・全ベータ:1.494×10^4 Bq/L
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
1号機と同じ4項目
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年4月24日午前10時34分~)
※使用済燃料プール循環冷却系については、使用済燃料プール内の燃料交換機本体撤去作業に伴い、4月23日~6月上旬の間、原則毎週月曜日午前7時~土曜日午後4時の間停止予定(停止時間は最長で129時間、毎週土曜日午後4時~月曜日午前7時の間は運転予定)。また、水温は運転上の制限値65℃に十分な余裕を持った45℃を超えることがないよう、同冷却系停止前のプール水温度を29℃以下として管理する。
<最新の作業実績>
5月15日午前6時27分停止(停止時のプール水温度:19.5℃)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
焼却工作建屋の水位、焼却工作建屋西側サブドレン水の分析結果
<最新の集中廃棄物処理施設各建屋水位>
各建屋内の滞留水の深さについては、常設水位計による監視において、プロセス主建屋への移送後の水位と比較し、焼却建屋では1.8cmの上昇。引き続き監視を継続。
5月16日午後2時現在の各建屋深さ
・焼却建屋:深さ19.4cm(4月14日移送停止後と比較し、1.8cm増)
・工作建屋:5月12日よりプロセス主建屋へ随時移送を実施していたが、5月16日午前10時30分、回収作業が完了したため、移送を終了。
<最新のサブドレン水サンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
<最新のパトロール結果>
5月15日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による水位監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井の状況
新規事項なし
地下貯水槽の状況
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年5月16日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太