2014年5月12日 今日の東電プレスリリース

風速5メートル前後だった楢葉町の資材ヤードで100tクレーンが転倒。原子炉建屋1階の高所調査ロボットによる作業は予定変更か?

5月12日(月曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。

楢葉町の資材ヤードで100tクレーンが転倒

100tクレーンと言われても素人にはどんなクレーンなのかよく分からないだろう。ちなみに下の写真で3号機のがれき撤去を行っている大きなクレーンは600t吊りクレーンだという(2013年9月5日にはこのクレーンのジブ・腕の部分が倒れる事故が発生している)。100tクレーンは一般的な工事現場でも使わる大型クレーンと思われる。

福島第一ライブカメラ(http://www.tepco.co.jp/nu/f1-np/camera/index-j.html)より
※平成26年5月12日午前10時20分、双葉郡楢葉町にある資材ヤードで使用している100tクレーンが転倒したと連絡が入った。

当該の資材ヤードについては、福島第一原子力発電所構内で使用する資機材等の積み替えに使用している場所。

クレーンが倒れた際、オペレーターが割れたガラスで手のひらを切ったが、けがの程度は軽く救急車の要請はしていない。

また、クレーンの燃料に使用している軽油が200cc程度漏えいしたとの連絡も受け、本件については、元請会社より双葉警察署(10時30分頃)および双葉消防本部(11時16分頃)へ連絡。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年5月12日

クレーンの転倒は非常に重大な事故で、状況によってはオペレータが行政処分される可能性のあるものです。資材ヤード内というルーチン作業でクレーンが転倒する危険性が高いものとして風の影響が考えられます。

労働安全衛生法に則って制定されたクレーン等安全規則では強風(10分間の平均風速が10m/s以上)の場合、作業を中止するよう定められています。当日の風速は10時で4.9m/s、11時で5.5m/s(いずれも隣町の広野町のアメダスデータ)でしたが、現場ではとくに風が強かった可能性も考えられます。転倒の原因が突風の影響なのか、アウトリガーの張り出し等作業上の問題があったのかなど、詳しい状況は他の資料でも触れらていません。

5月13日、原子炉建屋1階の高所調査ロボットによる作業を予定(報道配布資料より)

3号機原子炉格納容器内部調査に向けた現場調査計画策定のため、原子炉建屋1階北西エリア(X-53 ペネ周辺)の線量測定などを高所調査用ロボットにて実施予定。

引用元:福島第一原子力発電所の状況 | 東京電力 平成26年5月12日

直近のリリースでは5月8日に公表された「「原子炉建屋内の遠隔除染技術の開発」1~3号機原子炉建屋1階高所部の汚染状況調査の実施について(ガンマカメラによる調査)」に該当すると考えられますが、リリースでは5月9日から1号機で実施予定となっていました。何らかの変更があったのかもしれません。

1号機

新規事項なし

・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中

2号機

1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送実施(平成26年5月10日午前10時14分~平成26年5月12日午前9時36分)

新規事項として、使用済燃料プールの冷却停止について報告

※平成26年5月12日午前6時10分、使用済燃料プール代替冷却系について、当該系の遠隔監視装置の信頼性向上工事を行うため冷却を停止(停止時プール水温度:17.3℃)。

停止期間は約57時間を予定しており、冷却停止時のプール水温度上昇率評価値は0.156℃/hであることから、停止中のプール水温上昇は約9℃と評価。

運転上の制限値65℃に対して余裕があり、使用済燃料プール水温管理上問題はない。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年5月12日

3号機~6号機

新規事項なし

◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年4月24日午前10時34分~)

※使用済燃料プール循環冷却系については、使用済燃料プール内の燃料交換機本体撤去作業に伴い、4月23日~6月上旬の間、原則毎週月曜日午前7時~土曜日午後4時の間停止予定(停止時間は最長で129時間、毎週土曜日午後4時~月曜日午前7時の間は運転予定)。また、水温は運転上の制限値65℃に十分な余裕を持った45℃を超えることがないよう、同冷却系停止前のプール水温度を29℃以下として管理する。
<最新の作業実績>
5月10日午後3時13分起動(起動後の温度:21.9℃)

◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中

◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中

◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中

共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況

新規事項なし

◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中

◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中

焼却工作建屋の水位、焼却工作建屋西側サブドレン水の分析結果

ポンプの誤作動により焼却工作建屋にたまった滞留水のうち、工作建屋側からプロセス主建屋への移送を開始。

・焼却工作建屋への滞留水の流入に関して、5月9日焼却工作建屋への仮移送設備の設置、および焼却工作建屋からプロセス主建屋の移送ラインの漏えい確認が終了。焼却工作建屋滞留水のうち工作建屋側からプロセス主建屋への移送について、5月12日11時50分より開始。また、移送開始後に漏えい等の異常がないことを確認。なお、移送については5月下旬頃まで行う予定(移送は平日の日中のみ実施)で、移送中は監視員を配置して常時監視。

<最新の集中廃棄物処理施設各建屋水位>
各建屋内の滞留水の深さについては、常設水位計による監視において、プロセス主建屋への移送後の水位と比較し、焼却建屋では1.6cmの上昇。工作建屋については、本日(5月12日)よりプロセス主建屋への移送を実施していることから、建屋深さは移送が終了した段階でお知らせすることとし、その間は「移送中」とする。なお、引き続き監視を継続。
5月12日午後2時現在の各建屋深さ
・焼却建屋:深さ19.2cm(4月14日移送停止後と比較し、1.6cm増)
・工作建屋:移送中

<最新のサブドレン水サンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年5月12日

H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果

◆最新のパトロール

5月11日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による水位監視(警報監視)においても異常がないことを確認。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年5月12日

◆H4エリア

<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年5月12日

◆H6エリア

<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年5月12日

1~4号機タービン建屋東側の状況

新規事項なし

1~4号機サブドレン観測井の状況

新規事項なし

地下貯水槽の状況

サンプリング実績を記載

<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年5月12日

以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年5月12日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太