福島県の避難指示区域で、パトロールをしている警察官の方たちがいます。その名も「ウルトラ警察隊(※愛称)」。
2012年に福島県警に創設された隊です。お堅いイメージの警察組織において、少し異質な愛称にも思える「ウルトラ警察隊」をご紹介したいと思います。
ウルトラ警察隊について
ウルトラ警察隊は、2012年、東日本大震災後、避難指示区域の治安維持に当たるために全国22の都道府県から、福島県警に特別出向した350人の警察官で発足しました。
任期は基本、1年間。名称は、地球の平和を守るために戦う、正義のヒーロー「ウルトラマン」に由来しているそうです。
ウルトラ警察隊の主な任務は、パトロールや仮設住宅訪問です。福島第一原発の事故で、避難を強いられている地域では、震災以降、空き巣事件が多発しています。震災当時、避難して誰もいなくなった地域では、盗難被害が多かったために、住民の方が自主的にパトロールしていたという話を、昨年、福島県に行った際に聞きました。ウルトラ警察隊は、この避難指示区域での防犯のためのパトロールと、仮設住宅の訪問をしているとのことです。
ウルトラ警察隊?パトロール任務に遭遇
昨年、避難指示解除準備区域に指定されている、JR常磐線の竜田駅に行ったときのことです。駅前の駐輪所に、震災当時のままだと思われる自転車があったので、その写真を撮っていました。すると、
「何をしているんですか?」
と、いきなり3名の警察官に声をかけられました。パトカーを見てみると、神奈川県警と書かれています。
悪いことはしていませんが、ドキッとしました。私が怪しい人間に映ったのか(見られても仕方なかったかもしれません・・・)、職務質問をされました。
人生初の職質。少し緊張しながら、神妙に名前や写真を撮っていた理由などを答えると、一人の警察官が、無線で連絡をとりはじめ、何やら話をしていました。
しばらくすると、疑い?が晴れたようで、「避難指示区域で空き巣が多発しており、その警戒に当たっている」ことを説明してくれました。
その時、なぜ、神奈川県の警察官が福島県にいるのだろうかと、少し疑問に思ったのですが、今思うと、あの時の警察官は、ウルトラ警察隊の方たちだったのかもしれません。
住民に寄り添う、ウルトラ警察隊員
ウルトラ警察隊について、報じている記事がありますので、一部、ご紹介したいと思います。家族と離れて単身赴任を決意した警察官と、ウルトラ警察隊と住民との交流について書かれた記事です。
笠間さんは坂下高卒で1989(平成元)年に入庁した。震災のあった2011(平成23)年は5月から本県など被災3県で応援部隊として行方不明者の捜索やパトロールに従事、被害の大きさを目の当たりにし、出向を決意したという。東京に妻と子どもを残しての単身赴任。「子どもの教育を考えれば一緒にいたい」との思いはあったが「今回を逃せば次はない」と手を挙げ、家族も快く送り出してくれた。
家族で離れ離れに暮らすのは、隊員の方とその家族の方にとって、ご苦労が多いことかと思います。わたしも、中学に入学した時から、父が単身赴任だっために、少し、分かるような気がします。
次の2本の記事は、地元住民の方との交流について書かれています。
隊員らは毎日、仮設住宅の見回りを行っており、とくに毎週水曜日は仮設住宅の談話室などで住民と交流する時間をつくっている。子供と一緒に遊んだり、宿題を見てあげたりすることもあるという。ほかにも防犯講話や寸劇なども定期的に行っており、住民の大きな心の支えとなっている。
引用元:【いいたて通信(27)】「宿題見てくれる」「心のケアも」住民支える正義の味方! ウルトラ警察隊+(2/3ページ) - MSN産経ニュース
「お変わりないですか」。1月下旬の昼ごろ、福島市佐原の仮設住宅で住民に声をかけるのは、特別警ら隊県北分駐隊の女渕(おな・ぶち)義秀さん(36)と松田一生さん(32)。左腕にはウルトラ警察隊の赤い腕章が光る。
女渕さんは埼玉県警から、松田さんは京都府警からやってきた。女渕さんの背中には「埼玉県警察」の文字。住民に早く覚えてもらおうと、あえて着用し続けている。
浪江町から佐原の仮設住宅に避難している熊川馨さん(83)は2人を居間に上げた。「話をするのが楽しみなんです」
記事に書かれているような警察官と住民の方との交流。新鮮で心温まる話に感じました。住民の方にとって、宿題を見てくれたり、居間で団らんを共にする警察官の方たちは、頼りになる身近な存在なのでしょうね。
京都府警の松田さんも、地元住民の方と交流を通して、「一人の人をこんなに頻繁に通う経験は今までなかった。警察官を身近に感じてもらうのに、とても大事なことだと教えられた」と話しているそうです。
今年度も温かい交流を!
ウルトラ警察隊の任期は1年間です。先月18日に2013年度のウルトラ警察隊の離任式が行われました。昨年度のウルトラ警察隊員は、255名。先月で任期は終わりましたが、25名の方が、福島県警に「永久出向者」として転籍し、52名の方が出向期間を延長されたそうです。今年、離任される方も、
「被災者に少しでも希望の光を与えたいとの思いで働いてきた。帰っても福島県の現状を伝え、風化させないよう活動していく」
と話をされています。
春は出会いと別れの季節。3日前の今月15日には、2014年度の新しいウルトラ警察隊員の着任式が行われています。今年度、新しく隊員となった方は、149名。今年もウルトラ警察隊員と住民の方との温かい交流が生まれそうですね。
Text & Photo:sKenji