紙面から見る東北 ~福島第一原発での作業の現実~

4月9日付河北新報が報じた、福島第一原発での作業についての記事が衝撃的だった。「神話の果てに -東北から問う原子力」という、原発についてのシリーズものの記事の1本で、昨日は「廃炉の現場(上)過酷な作業/高線量状態が日常化」というタイトルで書かれていた。記事は、福島第一原発で作業されていた方の話を中心に書かれている。下記にその一部を紹介する。

右脳への血流が止まっていた。病名は内頸(けい)動脈閉鎖症。脳を写した画像は半分が真っ暗だった。
 東京電力福島第1原発で事故処理作業に当たっていた関東地方在住の男性は今、労災を申請するかどうか迷っている。
 焦点になるのは、原発作業による被ばくと発症との因果関係。診察した医師からは「常識的にはあいまいだ、としか言えない」と説明されたが、男性は納得できないでいる。
 「体の異常は原発作業が原因としか考えられない。確信は持てないけれども」
 事故処理作業に関わる前に撮った脳のコンピューター断層撮影(CT)は正常だった。それなのに、「普通だったら生きていられない」と医師から言われるほどの症状に陥った。
 他の原発でも働いた経験がある男性にとって、福島第1原発の現場は驚きの連続だった。原発作業の「常識」が通用しない過酷さだった。

引用元:第12部・廃炉の現場(上)過酷な作業/高線量状態が日常化 | 河北新報オンラインニュース

記事はその後も続く。それによると、福島第1原発では事故発生から今年1月までに、計3万2034人が作業にあたり、作業員が被ばくした積算線量は、平均で12.58mSv、最も多い人で678.8mSv。約半数の人は、労災認定の5mSvを超えているという。

現在、原発作業員の法定被ばく限度は、通常時で「50mSv/年かつ100mSv/5年」、緊急作業(事故対応作業)時で「100mSv/年」となっている。

東京電力発表の資料によると、福島第一原発で、平成23年3月~平成26年1月に作業された方の積算線量について、50mSv超の方が1751名おり、そのうち173人が100mSv超の線量を受けているとのことである。
原発で作業をされていた方は、公表されている累積線量を均等に受けていたわけではなく、短時間で多くの放射線を受けている可能性があり、健康への悪影響が懸念される。

記事で証言をしている作業員の男性は、他の作業員の被ばく線量を検査することが仕事だったという。調べていた際、線量が高すぎたために、測定器が壊れてしまったことがあるという。また、被ばく線量の把握に欠かすことができない、個人線量計が壊れていたために、作業員が実際にどれほどの線量を受けたのか、わからないこともあったと証言している。その上で、男性は次のように述べている。

「みんな命を削って作業している。誰もが体に異変が出れば福島での作業を疑う。近い将来、本当に放射線が原因の死者が出てもおかしくない」

福島第一原発の過酷な現場を物語っている証言である。

感覚マヒの怖さ

河北新報の記事「廃炉の現場(上)過酷な作業/高線量状態が日常化」では、男性作業員のリアリティある話を元に、過酷な現場を伝えている。その中の次の証言が印象深い。

作業初日は原発構内で昼食を取らなかった。休憩室の空間線量は毎時0.1ミリシーベルト近く。「通常なら飲食は絶対禁止の線量のはず」と考えたからだ。
 2日目からは休憩室で飲食した。「周りの人が当たり前のように弁当を食べていた。食べない方がおかしいと思うようになり、感覚がまひした」

引用元:第12部・廃炉の現場(上)過酷な作業/高線量状態が日常化 | 河北新報オンラインニュース

「感覚のまひ」。誰にでも起りうる現象。震災前ならば、原発から少量の放射性物質が漏れただけで大騒ぎだった。けれども今は、「またか」で済ましてしまうことも、正直多い。今も止まらない原発からの放射性物質の拡散。それを報じるニュースに対して、もっと注視しなければいけないことを感じさせられる。

作業員の待遇と原発作業ロボットについて

福島第一原発では、毎日約3000人の方が作業をしており、廃炉には少なくても30~40年はかかると言われている。ただし、この廃炉工程は、見通しが甘いという指摘もある。

仮に3000人が、365日、40年間作業をするとなると、延べで4380万人の人手が必要となる。作業員は、法定被ばく限度である100mSVを超えると、少なくとも5年は作業ができない。原発で作業をされている方の待遇が悪化していることもあり、将来的に、原発作業員が不足することが懸念されている。

原発作業は、東京電力の下に、大手建設会社が元請となり、さらにその下に7層を越す下請けが連なっているとも言われている。作業員の方への日当は、雇用されている会社が何次受けかによって大きく変わってくるといい、原発作業に比べて、被ばく線量が少ない周辺市町村での放射性物質の除染作業の方が、高給となる場合もあるという。

福島第一原発で、作業されている方のことを調べれば調べるほど、過酷で劣悪な環境と待遇の話を目にする。

原発作業の現実を伝える河北新報の記事を読み、作業員の方の待遇(雇用システム)改善と、被ばく線量軽減につながる、原発作業ロボットを早期に開発してほしいと改めて思う。

福島第一原子力発電所

参考WEBサイト

紹介:sKenji