いちえふ~福島第一原子力発電所労働記~(短い書評)

週刊モーニングで取って出し掲載されている漫画「いちえふ」をご存知だろうか?
東京電力福島第一原子力発電所で実際に作業員として働いていた作者が描いた、迫真のルポルタージュ漫画だ。

今日は俺たちの職場“1F”に皆様をご案内しよう

1Fは「いちえふ」と読む

現場の人間 地元住民 皆がそう呼ぶ 1Fをフクイチなんて言う奴はまずここにはいない

引用元:いちえふ ~福島第一原子力発電所労働記~/竜田一人 いちえふ ~福島第一原子力発電所案内記~ 【第34回MANGA OPEN大賞受賞作品】 - モーニング・アフタヌーン・イブニング合同Webコミックサイト モアイ

作者の竜田一人(たつたかずと)氏は、かつて漫画家として活動した時期があったものの、その後職を転々とし福島第一原発で作業員として働くことになった。その経緯も作品中に描かれている。

どうせ被災地で働くなら原発でと考えた竜田氏だが、実際に1Fで働けるようになるまで1年以上。さらに、最初に入った6次下請けでの管理業務の仕事から、防護区域内で実際の工事に携わる、特別手当の出る会社へ転職し、待望の現場での仕事に就くことができた。このことも作品中で描かれる。

画のテイストもさることながら、構成が徹底的にリアル。原発構内での仕事、それも視察や取材といったものではない、生業としての原発を経験している人にしか描けない物語であることが伝わってくる。

Jヴィレッジでの作業用具などの装備、検問を過ぎた後の信号の黄色点滅、国道6号線「中央台」交差点を右折した先にある東電の看板、「大熊通り」「ふれあい交差点」など原発構内の地名、車両サーベイでの大渋滞……。ほとんどメディアで伝えらえてこなかった福島の現実。

そんな「いちえふ」をネットで読むことができる。

1Fで起きていることをより身近に感じるために。東京電力が公表している資料をもっとリアルに読むために。

竜田一人氏の「いちえふ~福島第一原子力発電所労働記~」、必読だ!

文●井上良太