2014年3月12日 今日の東電プレスリリース

しかし、格納容器が「放射性物質の漏えいを制限する機能を失って」いることは、平成23年(2011年)12月9日に原子力安全・保安院で行われた意見聴取会の資料で、東京電力自体が認めているところです。

水素爆発を抑制するための窒素ガスは、格納容器を満たす分量を注入すれば終了するものではなく、継続して注入し続けなければならない状況なのです。

また、窒素ガスを入れることで、もともと格納容器内にあったガス、新たに発生するガスは格納容器の外に漏れ出してしまうことになります。そのため、新たに原子炉格納容器ガス管理設備が設置され、2号機では平成23年10月28日から運用を始めています。

◆なぜ冷温停止状態の原子炉で水素ガスが発生するのか?

原発事故直後に発生した水素爆発は、核燃料を被覆しているジルコニウム合金と水蒸気が反応することで発生した水素によるものとされます。この反応は700℃以上の高温でおこるため、炉心の冷却機能が失われ燃料棒がオーバーヒートする中で大量の水素ガスが発生したと考えられています。

しかし現在、原子炉は100℃未満の冷温停止状態にあります。それでも窒素ガスを注入し続けなければならない、つまり水素が発生し続けている原因としては、強い放射能による水の分解が考えられます。

水の放射線分解による水素発生は、ジルコニウム・水反応にくらべて発生量は少ないものの、水素爆発を起こしうるとの指摘が、原子力規制委員会で行われた事故分析に係る検討会(第1回:平成25年5月1日)の資料、「4号機水素爆発における水素発生源について【PDF:925KB】」に記載されています。

◆窒素ガス分離装置とは何か?

窒素ガス分離装置とは、窒素をつくる装置です。空気の主な成分である窒素と酸素を分離することで窒素をつくることから、分離装置と呼ばれます。

装置の仕組みは、窒素分子と酸素分子の大きさの違いを利用して、フィルターや吸着剤で窒素と酸素を分離します。

1号機~3号機で稼働している窒素ガス分離装置の種類は、平成24年(2012年)12月に分離装置が新増設された際の資料から読み取ることができます。下のPDFファイルの2ページの系統図に窒素発生装置の種類が記載されています。

2台運用・1台待機が「常用窒素ガス分離装置」です。ピンク地で記されているのが「非常用窒素ガス分離装置」。いずれも「PSA」との文字が見えます。これがガス分離装置の種類を示しています。「D/G」とあるのはディーゼル発電機のことで、発電所内の電源が失われた緊急時に対応するという意味合いです。

PSA式窒素ガス発生装置は、高圧にした空気を装置内の吸着剤に送り込み、酸素と窒素による吸着速度の差を使って酸素を優先的に吸着。純度の高い窒素を分離する仕組みなのだそうです。

上のPDFの系統図、一番上には「膜式窒素分離装置(D/G)」というものも見られますが、こちらは処理能力からいっても予備という扱いと考えられます。

膜式窒素分離装置は、家庭用浄水器のように中空糸のフィルターを使って気体を分離する仕組みなのだそうです。

以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年3月12日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太