津波到来時間で止まった時計は数多い。大槌町旧役場庁舎の時計は、午後3時25分ごろを指していた時計の針まで破壊された。
大槌町の旧役場庁舎は、解体するか震災遺構として残すかで議論を呼んだ建物のひとつだった。見たくないと解体を主張する遺族と、津波の記憶を後世に伝える存在として残すべきと考える遺族。話し合いは根本的なところで嚙み合うことはなく、町は昨年3月28日「一部保存」という方針を発表した。
町のホームページによると、次のような方法で保存が行われるという。
旧庁舎の時計を含む正面玄関付近の部分を屋上まで切り取り、補強工事を施します。保存のための調査、整備費用に国の復興交付金があてられるよう、国に要望していきます。
保存計画によると、正面玄関部分以外は解体されることになる。一部保存とはいえ、建物としての姿はほぼ失われることだろう。
大槌町旧役場庁舎の2014年1月1日の姿を写真で紹介する。そこにはまるで時間が止まったかのような現実があった。
鉄筋コンクリートの外壁が、内側からめくれるように破壊されている。
震災から3年。残された建物の傷跡が津波の破壊的なパワーを物語る。
津波はいったいどんな力で、この建物を破壊していったのだろう。
破壊された旧役場庁舎の窓の向こうに、荒れ果てた土地が見える。
旧庁舎の内部も震災直後の傷跡が色濃く残る。赤いペイントに手を合わせて黙祷する。
一部保存の工事が始まると、この辺りは解体されることになるだろう。押し寄せた津波が突き抜けて行った町役場。
庁舎の外に大きな金庫が投げ出されていた。元はきっと庁舎の奥にあっただろうに。
大槌は湧水の町。震災後も枯れることなく湧き続ける清水が町の随所に残されている。役場そばにもこんこんと湧きだす清水があった。
あまりにも変わり過ぎてしまった町に、変わらないもの。
大槌町の旧役場庁舎はこれから先、どんな時間を送るのだろうか。
写真と文●井上良太