2月22日に公表された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」をチェックします。
本日も、19日に発見された極めて高濃度の汚染水漏えいの続報から。
冒頭特記事項:H6エリアでの汚染水漏えい
新規事項として、漏えいの原因についての記載。
2月21日、漏えいした水の回収を実施しているが、今回の漏えいについては近傍に排水路がないことから、海への流出はないと考えている。
漏えいの原因は、淡水化装置処理後の水の受け入れ予定ではない当該タンクに接続されている弁が開いていたことにより、タンクに水が入り上部天板部から漏えいが発生したものと判明。閉まっているはずの弁が開いていたことの原因については、引き続き原因調査を進めている。
なお、漏えい箇所の土壌について線量測定を行った結果、地表面から3cm離れたところで70μm線量当量率で最大約900 mSv/h(ベータ線)、1cm線量当量率で0.1 mSv/h(ガンマ線)であったことから区画を行った。
驚くべきは、漏えい個所の土壌の測定結果です。地表面から3cm離れたところで最大約900mSv/hのベータ線を検出したとあります。
「900ミリシーベルト」は「0.9シーベルト」です。
放射線を被ばくしたことで100%の人が死亡する「致死線量」は全身被ばくの場合で7~10シーベルト程度とされていますから、ガンや白血病になる可能性があるというレベルではない、きわめて高い放射線量を記録したことになります。
日報では、「であったことから区画を行った」と記されていますが、つまり「きわめて線量が高い危険なエリアとして立入を制限した」という意味だと考えられます。
◆淡水化装置について
東京電力の事故原発には、淡水化装置として2種類のものが稼働しているようです。
ろ過膜を使ってイオンや塩類など、水以外の不純物と水を分離する、逆浸透膜(RO)方式の淡水化装置がひとつ。
もうひとつが、蒸発濃縮式の淡水化装置です。蒸発濃縮式はRO方式で濃縮された放射性物質を含む塩水を加熱することで水分を蒸発させ、さらに濃縮するのがこの淡水化装置。
2月20日に東京電力が発表した報道配布資料に詳しい位置関係が記されています。
1号機(平成24年4月19日廃止)
新規事項の記載なし。
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
2号機(平成24年4月19日廃止)
1号機と同じ4項目に加え、
タービン建屋の高濃度滞留水を2号機タービン建屋から3号機タービン建屋へバケツリレー的に移送作業が再開です。新規事項として記載されました。
・2号機タービン建屋→3号機タービン建屋へ高濃度滞留水を移送開始(平成26年2月22日午前10時37分~)
3号機~6号機
新規事項の記載なし。
◆3号機
1号機と同じ4項目に加えて、
・3号機タービン建屋→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年1月24日午後2時37分~)
バケツリレーの後半部分は動き続けています。
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし。
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
H4エリアタンクおよび周辺排水路の状況
引き続きタンクの監視と、タンク周辺のサンプリングを実施していると記載。新規事項はパトロール結果とサンプリング実績。
<最新のパトロール結果>
平成26年2月21日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β+γ線(70μm線量当量率))は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、福島第一南放水口付近、福島第一構内排水路、H4エリアタンク周辺および地下水バイパス揚水井No.5~12のサンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
1~4号機タービン建屋東側は、原子力発電所で海に面したエリア。地下水のくみ上げとサンプリングによる監視が行われており、新規事項としては最新のサンプリングについて記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
地下貯水槽の状況
露天掘りで施工し、止水の不備から貯水槽として利用できなくなった地下貯水槽。新規事項として最新のサンプリング実績を記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年2月22日分の変更箇所についてピックアップしました。
構成●井上良太
「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」の一覧ページ。過去の「日報」との比較に役立ちます。