2014年2月16日に公表された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」をチェックします。冒頭では、汚染水を貯めているタンクエリアの堰からの漏えいについて報告されています。
冒頭特記事項
◆「H5タンクエリア堰内に溜まった水の堰外への漏えいを発見(2月16日午前9時15分頃)」の件
タンクエリアの場所について、「報道関係各位一斉メール 2014年 福島第一原子力発電所H5タンクエリアの堰からの漏えい 平成26年2月16日(http://www.tepco.co.jp/cc/press/2014/1234275_5851.html)」に、
配置図が掲載された資料が紹介されました。ありがたいです!
以下に日報の記載を引用します。
※2月16日午前9時15分頃、タンクエリアパトロールにおいて、H5タンクエリア堰内に溜まった水が堰外に漏えいしていることを協力企業パトロール員が発見。漏えい箇所および状況は以下の通り。
・H5タンクエリア西側堰の嵩上げした鋼製堰の配管貫通部(2箇所)。漏えい量は鉛筆の芯1本程度と指の太さで4本分程度。
・H5タンクエリア西側堰のコンクリート堰と嵩上げした鋼製堰の継ぎ目部(1箇所)。漏えい量は1秒に1滴程度。
同日午前10時45分、H5タンクエリア西側堰の嵩上げした鋼製堰の配管貫通部からの漏えい箇所(2箇所)に、漏えい水を受けるための容器を設置。
なお、配管貫通部からの漏えい箇所については、コーキング処理にて補修を行い、漏えい量は、指の太さで4本分程度の箇所が1秒に3滴程度、鉛筆の芯1本程度の箇所が1秒に1滴程度に減少。
同日午前11時10分、H5タンクエリア堰内水をH6タンクエリア堰内へ移送を開始。さらに、午後0時30分、4000トンノッチタンク群へ移送を開始。
資料と併せて読むと、RO濃縮塩水(水は通すがイオン化した不純物は通さない逆浸透膜で淡水を分離した残りの塩分や放射性物質が濃縮された塩水)を貯蔵しているH5タンクエリアの山側の堰で、コンクリート部分にかさ上げするように増設された鋼製堰の配管貫通部と継ぎ目から、堰の中のたまり水が漏えいしているのを、協力企業のパトロール員が発見。
コーキング処理で漏えい部分の補修を行い、漏れる量を減らすことに成功したと記載されています。コーキング処理とは、目地や隙間をパテなどの充填剤で埋める、一般的な建築系の処理だと思われます。
さらに、該当するH5タンクエリア堰内水の移送について報告しています。ノッチタンクというのは直方体の(四角い)金属製の水槽です。4000トンというのは相当な容量なので、おそらく数10トンクラスのタンクをつないだ総容量が4000トンなのだと考えられます。
さらに同日、同じH5エリアで4カ所の漏えいが発見されます。
また、同日午前11時20分頃、昼のタンクパトロールにおいて、新たにH5タンクエ リア堰内に溜まった水の堰外への漏えい箇所(4箇所)を、協力企業パトロール員が発見。
・H5タンクエリア東側堰の嵩上げした鋼製堰の配管貫通部(1箇所)。漏えい量は1秒に5滴程度。
・H5タンクエリア西側堰の嵩上げした鋼製堰の配管を貫通されるための開口部の閉止箇所(1箇所)。漏えい量は鉛筆の芯1本程度。その後、コーキング処理にて補修を行い、1秒に2滴程度に減少。
・H5タンクエリア東側堰のコンクリート堰と嵩上げした鋼製堰の継ぎ目部(2箇所)。漏えい量は1秒に3滴程度と2秒に1滴程度。
H5タンクの水位については、有意な変動がなく、タンクからの漏えいはないと考えており、堰からの漏えい水は、降雪および雨水と判断。
堰の高さを増すために行われたかさ上げを、鋼製部品で行った部分では小規模な漏えいは発生しやすいということなのでしょうか。
続いて、H5タンクエリア堰内水の測定データが示されています。たしかに、それほど高い濃度とは言えないかもしれませんが、タンクからの漏水と堰からの漏水がバッティングすると、高濃度汚染水が漏えいしてしまう危険があります。
鋼製の堰が接合部や貫通部で漏えいが発生しやすいのだとすると、実は深刻な問題と言わざるを得ません。
【H5タンクエリア堰内水(2月16日採取、ストロンチウム90は簡易法による測定)】
・セシウム134 :検出限界値未満(検出限界値:12Bq/L)
・セシウム137 :検出限界値未満(検出限界値:16Bq/L)
・ストロンチウム90 :23Bq/L(簡易測定法により計測)
たしかに数値は高くありませんが、検出限界値が12Bq/L、16Bq/Lというのは、検出限界そのものが高いと感じます。ベクレルの計測は検査時間を長くとればとるほど検出限界値が下がり、検査精度を高めることができます。結果を早く出したいという状況だったのかもしれませんが、時間が許す限り精度の高い計測をお願いしたいと思います。
セシウム134 :検出限界値未満(検出限界値:12Bq/L)よりも、たとえば、
セシウム134 :7.0Bq/L
と、検査時間を延長することでより低い数値で限定された方が、周辺環境の汚染度についてのもやもやした印象が減ぜられると考えます。
1号機~6号機
新規事項の記載なし。
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
1号機の4項目に加えて、
・2号機タービン建屋→3号機タービン建屋へ高濃度滞留水を移送中(平成26年2月10日午前10時~)
◆3号機
1号機の4項目に加えて、
・3号機タービン建屋→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年1月24日午後2時37分~)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
福島第一原子力発電所4号機からの燃料取り出し
日報の記載では4号機の状況は昨日と変わりなし、ですが、4号機からの燃料取出しについての紹介ページが公開されました。
「毎週月曜日に更新します(祝日の場合は翌営業日に更新します」とのことですので、こちらについてもチェックしましょう。
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし。
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
H4エリアタンクおよび周辺排水路の状況
最新のパトロールとサンプリングについて新規事項を記載。
<最新のパトロール結果>
平成26年2月15日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β+γ線(70μm線量当量率))は確認されていない。なお、積雪による影響のため一部測定を実施していない。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。目視点検により漏えい等がないこと(降雪や凍結により漏えい確認ができない箇所を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、福島第一南放水口付近、福島第一構内排水路、H4エリアタンク周辺および地下水バイパス揚水井No.5~12のサンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
C排水路のC-1-1のセシウム137(2月15日採取:220Bq/L)および全ベータ(2月15日採取:140Bq/L)、C-2の全ベータ(2月15日採取:170Bq/L)、B排水路のB-0-1の全ベータ(2月15日採取:200Bq/L)の値において、これまでの当該箇所における最高値以下および多少超過している範囲ではあるが、前日採取した測定結果(いずれも検出限界値未満)と比較して有意な上昇が確認された。測定値が上昇した原因については、降雨により排水路周辺の汚れが流入したものと考えている。その他の分析結果については、前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
新規事項なし。観測孔からの汲み上げを適宜実施ということだが報告なし。
地下貯水槽の状況
新規事項はサンプリング実績を記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年2月16日分の変更箇所についてピックアップしました。
構成●井上良太
「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」の一覧ページ。過去の「日報」との比較に使えます。