2月7日(金曜日)に公表された東京電力発表のリリース「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」は、前日のインシデントの続報を含めたくさんの記載内容になっています。
冒頭特記事項
◆「2月6日午前8時50分頃、登録センター1階の火災報知器発報」の件
その後、2月7日午前11時20分に火災発生有無の調査のため、富岡消防署立会のもと、機械室の空調設備のモータ分解点検を実施。その結果、ヒーティングコイルの破損による蒸気によって火災報知器が動作したものと推定され、火災ではないと判断された。
◆「2月6日午前10時50分頃、5,6号機北側のFタンクエリアに設置しているAタンクとBタンク間での水漏れ」の件
AタンクとBタンクの間にある流量調整弁と逆止弁間のフランジ部より、水が鉛筆1本程度の太さで漏れていた。A,Bタンクともに、5,6号機タービン建屋地下滞留水を貯水している。
その漏れた水の汚染度合が公開された。
漏えい量は、漏えい範囲が約2m×約2m×厚さ約1mmであること(約4リットル)、ビニール袋等で漏えい水を受けた量が約74リットルであることから、総量約78リットルであることを確認。漏えい水の分析結果は以下のとおり。
・セシウム134 :2.6×10-2 Bq/cm3
・セシウム137 :6.5×10-2 Bq/cm3
・コバルト60 :検出限界値未満(検出限界値:1.3×10-2 Bq/cm3)
・マンガン54 :検出限界値未満(検出限界値:8.4×10-3 Bq/cm3)
・ヨウ素131 :検出限界値未満(検出限界値:1.1×10-2 Bq/cm3)
・全ベータ :4.6×10-1 Bq/cm3
・γ核種合計 :約7.1×103 Bq
・β核種合計 :約3.6×104 Bq
数値の母数がリットル当たりではなく、1立方センチなのでリットルあたりに換算してみると、全ベータは460Bq/Lということになる。
被災で大きな被害を受けた1~4号機に比べれば、汚染度は低いが、タービン建屋内に存在してもいい全ベータなのかどうか、5,6号機が安全な状態なのかどうかについては検証が必要。
◆「2月6日午前11時5分頃、淡水化処理した原子炉注水用の水がタンクへ移送する配管の途中から漏えいした」件
漏えい水については、地面に染み込んでおり、水の全ベータ放射能濃度を測定したところ至近の放射能分析結果(昨年12月10日採取)より2.8×103 Bq/Lであることを確認。
このことから、本件については、同日(2月6日)午後3時6分に東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護に関する規則第18条第12号「発電用原子炉施設の故障その他の不測の事態が生じたことにより、核燃料物質等(気体状のものを除く)が管理区域内で漏えいしたとき。」に該当すると判断。
なお、漏えい水量は流量計指示値の変化量から約600リットルであると推定されることから、漏えい水の全ベータ放射能量は約1.7×106 Bqであると推定。
漏えい水は地面に染み込んだが、染み込んだ土壌を回収(掘削部は1.8m×2m×0.3m)し、当該地面の表面線量当量率(γ線+β線)が0.24mSv/hから0.018mSv/hに低減。
さらに、漏えい水は土のう外に流出していないことから海への流出はないものと判断。
漏えいの原因は圧力指示計内部の水の凍結により、ボンネット部から漏えいが発生したものと推定。対策として、当該圧力指示計にヒーターを取り付ける予定であり、今後、当該圧力指示計の交換を行う予定。
ここで東電が提示している全ベータ放射能量の算出根拠が不明です。
水がしみ込んだ土を取り除いた結果、表面線量当量率(γ線+β線)が0.24mSv/hから0.018mSv/hに低減とありますが、単位がマイクロではなくミリである点に注意が必要です。
土を取り除く前には240μSv/hだったものが、18μSv/hになったというのです。
漏えいが起こった場所の雰囲気の線量がどれくらいなのかは分かりませんが、高い数値であることに変わりません。原子炉の冷却に使われている「処理された水」には、高い放射能が残されていると理解する必要がありそうです。
1号機(平成24年4月19日廃止)
新規事項(アンダーライン表示)はありません。記載内容は下記の通り。
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
2号機(平成24年4月19日廃止)
1号機の4項目と同一の記載。新規事項なし。
3号機(平成24年4月19日廃止)
1号機と同一の4項目に加え、下記の記載。(新規事項はなし)
・3号機タービン建屋→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年1月24日午後2時37分~)
4号機(平成24年4月19日廃止)
新規事項なし。処置内容は下記の通り。
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
5号機(平成26年1月31日廃止)
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
これまでと同様の上記の処置に加えて、透明度が悪い使用済み燃料プールの水の入れ替え作業のために、原子炉と使用済燃料プールの冷却を止めていたが、冷却再開と再開時間、冷却再開時の水温について新規事項としてアンダーライン表記。
その後、作業が終了したことから、原子炉水冷却および使用済燃料プール冷却をそれぞれ起動した。起動実績は以下のとおり。
〈原子炉水冷却〉
・起動時間:2月6日午後6時6分
・原子炉水温度は停止時の32.8℃から35.4℃まで上昇したが、運転上の制限値(100℃)に対して余裕があり、原子炉水温度の管理上問題なかった。
〈使用済燃料プール冷却〉
・起動時間:2月6日午後5時50分
・使用済燃料プール水温度は冷却停止時の15.5℃から15.6℃まで上昇したが、運転管理上の制限値(65℃)に対して余裕があり、使用済燃料プール水温度の管理上問題なかった。
冷却を止めていた8時間45分の間に「3.2℃」の温度上昇があったということだ。1時間あたり0.366℃ほどの温度上昇なので、「冷温停止中」とされる5号機でも、単純計算すると8日以内に原子炉内の水温は100℃に達するということだ。
1週間も原発の冷却が止まってしまうような事態。そんなが起こりうるのか、起こりえないと言い切れるのか。
6号機(平成26年1月31日廃止)
処置の内容に変更なし。
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール
処置の内容に変更なし。
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
水処理設備および貯蔵設備の状況
処置の内容に変更なし。
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
※ホット試験とは処理対象である汚染水(RO濃縮塩水)そのものを使った試験。
H4エリアタンクおよび周辺排水路の状況
最新のパトロール結果のみ新規事項としてアンダーライン表記。
<最新のパトロール結果>
平成26年2月6日のパトロールにおいて、新たな高線量当量率箇所(β+γ線(70μm線量当量率))は確認されていない。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
上記の部分は前日と同じ内容。
<最新のサンプリング実績>
2月5日、H4エリアタンク周辺の地下水観測孔E-11のサンプリングを実施(初採取)。分析結果は以下のとおり。
[観測孔E-11の分析結果:2月5日採取分]
・トリチウム:190 Bq/L
・全ベータ :110 Bq/L(お知らせ済み)
その他の分析結果については、前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
上のサンプリングではトリチウムの数値が記載された。
1~4号機タービン建屋東側の状況
最新のサンプリング結果を新規事項としてアンダーライン表記。
2月6日、地下水観測孔No.1-6のサンプリングを実施(初採取)。分析結果は以下のとおり。
[地下水観測孔No.1-6の分析結果:2月6日採取分]
・全ベータ:560,000 Bq/L
その他の分析結果については、前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1月29日の全ベータは――――――――――検出限界値未満(検出限界値:18 Bq/L)
1月30日、再度採取の全ベータは―――――1,700,000 Bq/L
そして2月6日採取の全ベータは――――――560,000 Bq/L
いずれにしても高いです。
地下貯水槽の状況
新規事項は、最新のサンプリング実績のみ。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年2月7日分の変更箇所についてピックアップしました。
構成●井上良太