藤原紀香さんの赤旗登場をめぐる産経新聞の「虚報」

日本報道検証機構によるWebページ「GoHoo」が、産経新聞の記事「あの藤原紀香さんが『赤旗』登場 共産党のソフトイメージ戦略象徴」は虚報と伝えた。

《注意報1》 2013/11/25 19:00

産経新聞は、11月21日付でニュースサイトに「あの藤原紀香さんが『赤旗』登場 共産党のソフトイメージ戦略象徴」と見出しをつけ、共産党の機関紙『しんぶん赤旗』日曜版11月24日号に女優の藤原紀香さんが登場し、特定秘密保護法案への反対を訴えているなどと報じました。しかし、赤旗に掲載された藤原さんのインタビュー記事には、特定秘密保護法案に関して触れた発言は一切なく、法案への反対も訴えていませんでした。

引用元:藤原紀香さん「赤旗で秘密保護法反対」は虚報 | GoHoo

ことの経緯は以下の通り。
◆11月24日のしんぶん赤旗日曜版1面、「この人に聞きたい」というインタビューコーナーに藤原紀香さんが登場。
◆これに先立つ11月21日、産経新聞が「特定秘密保護法案への反対を訴えていることが分かった」など伝えた。
◆このニュースがネットで拡散し、「え… 藤原紀香、なにやってるの?」「迷走してるとしか思えない」「終わったな 」などのコメントが複数のサイトに投稿された。
◆11月22日、藤原さんは自身のブログで「赤旗日曜版の芸能ページの取材をうけたことで、あるメディアに、話題になっている法案の事とこじつけられ、各方面に誤解を受ける書かれ方をしていてとても悲しいです」と表明。
◆藤原さんのブログでの表明以後も、『「赤旗」にまで登場した藤原紀香、政治的発言は自己プロデュースの一環!?』といった解説記事が発信される。

産経新聞の記事と藤原さんのブログを読み比べると、どうにも納得のいかない感情が湧き上がってくる。藤原さんのファンでもなければ、赤旗のシンパでもアンチ産経でもないのだが。

産経新聞記事が虚報であるとした「GoHoo」の指摘は3点。

特定秘密保護法案について発言していない

産経は、この記事で「藤原さんは『ニュースを知らないことは一番危険だし、知らない間に国の大事なことが決まるなんてことにならないように、ひとりひとりがその事を知り、判断し、意見を出していく。そんな世の中になればいい』などと語り、特定秘密保護法案への反対を主張している」と報道。しかし、実際の発言の前後をみると、藤原さんがインターネット上で政治や社会のさまざまな問題について発信していることへの思いを述べたもので、特定秘密保護法案について述べた発言ではありませんでした。

引用元:藤原紀香さん「赤旗で秘密保護法反対」は虚報 | GoHoo

ブログでも法案への反対を明言していない

また、産経の記事は「同党は9月、藤原さんが自身のブログで同法案への反対を表明した際に『しんぶん赤旗』日刊紙の一面コラム『潮流』で紹介するなど“接近”を図っていた」と伝えています。

引用元:藤原紀香さん「赤旗で秘密保護法反対」は虚報 | GoHoo

細かいところだが、接近という言葉を、“ ” 付きで表記したのにはどんな理由があるのだろうか? ほかにも記事には「共産党からのアプローチに藤原さんが応じた」「共産党の力の入れようは相当なものだ」といった表現も登場する。インタビュー記事に登場したということ以上のつながりを無理やり暗示しようとするような、お行儀の悪さを感じる。

藤原さんはブログで「日経や朝日など各新聞の社説でも、これがこのまま通ると大変なことになると書かれており、もしその可能性があるとしたら、国民の一人としていかがなものかと心配しています」などと法案への懸念を示す一方、「もちろん、日本を陥れるべくスパイ行為を働いた輩には罰を与えるべきだと思うし、そのようなスパイ行為が起きないよう なんらかの法案が必要となるとは思います」とも言及。

引用元:藤原紀香さん「赤旗で秘密保護法反対」は虚報 | GoHoo

藤原さんが9月に書いたブログでは、「国の情報は公開が大原則のはず」と法案の内容について危惧する言葉はあるが、「まずは‘知ること’が大事」と、9月17日期限のパブリック・コメントへの書き込みを呼びかける内容だった。法案に反対とは明言していない。

赤旗に非党員の有名人が登場するのは珍しくない

産経の記事は冒頭で「共産党機関紙に『非党員』の有名女優・タレントが登場するのは異例だ」とも書かれています。しかし、当機構が調べたところ、加山雄三さん(11月17日付)、仲代達也さん(11月10日付)、中村雅俊さん(9月15日付)、田中圭さん(7月21日付)、稲森いずみさん(7月7日付)、野際陽子さん(6月30日付)、佐藤浩市さん(3月3日付)、釈由美子さん(2月3日付)など多数の俳優・タレントが赤旗のインタビュー記事で登場しており、藤原さんの登場は「異例」とはいえないと考えられます。

引用元:藤原紀香さん「赤旗で秘密保護法反対」は虚報 | GoHoo

驚いたことに前の週も、その前の週にも俳優やタレントが登場している。調べることなく「異例」と断じたのだろうか。

この記事の危うさ

さらに、産経新聞にはこんな一文も。

特定秘密保護法案は26日に衆院を通過し今国会での成立は揺るがない情勢だが、藤原さんはなおも「廃案キャンペーン」を繰り広げる共産党の応援団となった形だ。

引用元:あの藤原紀香さんが「赤旗」に登場 共産党のソフトイメージ戦略象徴+(2/2ページ) - MSN産経ニュース

この文章から、産経新聞(少なくともこの記事を書いた記者)は特定秘密保護法案の成立を期待しているものと想像できる。この法案は通さねばならないという使命感に燃えているのかもしれない。しかし、だからといって、GoHooが虚報と指摘しているように、作文まがいの記事を構成した挙句に「共産党の応援団となった形だ」などと断じて良いものではないだろう。不自然とか違和感といった言葉では表現できない危うさを感じる。明らかにレッドカードものだと思う。

旗幟を明らかにする。信念に従って意見を述べる姿勢は大切だが、報道のプロが話を曲げてまで自説を流布しようとするのは、恥ずかしいことではないだろうか。

●TEXT:井上良太