NHK、この期におよんでなぜ「紛らわしい表現」?

10月22日13時36分のNHK「NEWS WEB」が、東京電力柏崎刈羽原子力発電所で、工事中のフィルターベント設備を報道陣に公開したと伝えました。

ニュースでは、設備についての説明、工事の予定、放出する気体に含まれる放射性物質の量を最大1000分の1まで減らせるといった説明の後、次のように続けました。

フィルターベントを巡っては使用の際、住民の被ばくを避けるため、新潟県は東京電力に県や自治体と避難計画などについて協議して了解が得られないかぎり使用を認めないとしています。

引用元:柏崎刈羽原発 フィルターベントを公開 NHKニュース

「使用の際、~協議して了解を得られないかぎり使用を認めない」という文脈からは、新潟県が事故時の了解を求めているかのように読めます。

ところが新潟県が9月26日東京電力に手渡した条件付き承認の文書にあるのは、

「今回申請のフィルタベント設備は地元避難計画との整合性を持たせ安全協定に基づく了解が得られない限り使用できない設備であること」

という条件で、事故発生時の使用について個別に了解を求めるという内容ではありません。

のみならず…

フィルターベントの運用に関しては、

・9月28日付の日本経済新聞の「社説」
・9月30日の産経新聞「主張」

でそれぞれ、
「フィルター付き排気(ベント)の実施に、県の事前了解が必要としたことだ。事故時の対応は一刻を争うだけに、それで迅速かつ適切な初動たできるのか」(日経)
「「フィルター付き排気装置」を使用するさいには、事前の地元了解を取り付けることを条件にした」(産経)
と記載したことに対して、

県の原子力安全対策課長名で、「修正していただくよう要請」。

両紙とも後日、事実上の訂正報道を行っています。
この経緯は日本報道検証機構のリポートが詳しく伝えています。

NHKのニュース内容は、フィルターベント実施時に県が了解を求めているとの誤解を招きかねない紛らわしいものです。

しかも、先月末から他紙において同様の紛らわしい表現 → 新潟県の抗議 → 事実上訂正報道に至った経緯があるのです。まさか現場の記者からデスク、掲載責任者に至るまで全員が訂正記事のことを知らなかったとは考えにくいでしょう。

NHKはなぜ1カ月近くも経過したいま、こんな報道をしてしまったのだろう?
好きな放送局だから、変なことはしないでほしい。

●TEXT:井上良太