これまでの話
8月の夏休み、山梨、長野へバイクで行くことにする。初めてのロングツーリング。期待を胸に静岡を出発する。
1日目、山梨県北杜市の瑞牆山荘にある登山口近くまで移動する。
2日目、瑞牆山荘の登山口から瑞牆山、金峰山を日帰り登山。登山口近くの美しい渓流でキャンプをする。
3日目、霧ヶ峰にあるキャンプ場を目指したのだが、日没前に到着できそうにもなく、女神湖近くで偶然見つけたキャンプ場でキャンプをする。
4日目、霧ヶ峰キャンプ場にテントを設営後、美ヶ原、八島ヶ原湿原を散策する。夜はキャンプ場で出会った男性とたき火をしながら、話をする。
5日目
最終日、日の出とともに目が覚める。
テントから出ると、差し込む朝日が眩しい。ひんやりとした空気が清々しかった。今日は朝から快晴。いい一日になりそうだった。
朝食をとり、白樺湖まで早朝ドライブに行く。
湖に到着すると、湖畔を一周して霧ヶ峰に戻る。
キャンプ場と八島ヶ原湿原の分岐に差しかかったとき、ふと湿原が見たくなり、八島ヶ原湿原に寄ってからキャンプ場に帰った。
テントに戻ると、昨日のパスタの残り半分をゆでて食べた後、撤収作業に取り掛かった。
出発準備を終えると、隣のテントの男性に別れを言って、静岡に向けて出発した。帰路はどこにも寄らず、できる限り早く帰ろうと思っていた。
しかし、走り出して目にした光景に引き留められる。
空の青さと草木の緑は、天頂から降り注ぐ強い日差しと同調したかのように、
一段と深くなっていた。青と緑のコントラストが映え、草原の緑が眩しかった。今朝、通ったはずなのに、まるで別の風景を見ているようだった。
まさに「天空の楽園」だった。楽園に吹くそよ風が心地よい。
車では感じることのできない開放感と風が爽快だった。多くのライダーがバイクの魅力に取り憑かれる理由を少しわかったような気がした。
帰路
結局、2時間ほど楽園をバイクで駆け回った後、白樺湖を経由して、小淵沢に下った。
標高が下がるにつれ、暑さが増していき、霧ヶ峰の涼しさが恋しかった。小淵沢に下った後は、休まず静岡まで走った。
今回、次点での繰り上がり当選のように決めた信州ツーリングだったが、最終日に青い空と輝く緑の大地をバイクで走ることができ、信州に来て本当に良かったと思った。
ビーナスラインは、まさに楽園に通じる道だった。楽園の魅力を知ってしまったいま、次の楽園のことを考えてしまう。
来年の夏はどこに行こうか。そんなことを帰りのバイクを運転しながら考えていた。4泊5日の信州ツーリング。素敵な夏休みだった。
<終わり>
楽園
Text & Photo:sKenji