ホストクラブとは男性従業員が女性客の隣に座って接待をする飲食店。主役はあくまでもお客様である女性です。ホストは女性を良い気分にさせて喜ばせるのがお仕事です。「イケメン!色恋トーク!枕営業!自分の持つ武器を駆使して女性を満足させてみろ!」という成果主義の特殊な世界。そんなファンタジーワールドに迷い込んだ僕のホスト体験記を告白します。
トシヤさんていう筋肉バキバキのホストがいた
僕がいたホストクラブにはトシヤさんという用心棒に近い人がいました。とにかくケンカの強い人で、とりあえずタチの悪い酔っ払いが店に絡んできたらトシヤを呼んで追っ払え!とみんなに頼られていました。
身長は175cm前後でそれ程大きい訳でもなく、近視用のメガネをかけていて威圧感はありません。しかし、肉体のフォルムは強靭で胸板は異常なまで分厚く、Tシャツの袖を捲りあげたときの腕っぷしの太さは尋常ではありません。まさに全身が筋肉の塊!ムキムキとかバキバキという言葉はこの人のためにあるのではないか?と思いました。
出会ってから1ヵ月はホストだと気づかなかった
トシヤさんはだいたい朝7時くらいに店に来ます。いつも同じ女性と手を繋いで仲良く来店し、ほとんどTシャツとジーパンというラフな服装なのでどう見てもホストには見えません。出会ってから1ヵ月くらいは、彼女のホストクラブに遊びに来るマニアックな男だと思ってました。
トシヤさんは店内にある椅子やテーブルが壊れていると、どこからともなく金づちやネジやドライバーを持ってきて、ガンガン叩いたり部品をばらして修理を始めるダイナミックな人です。どう見ても酔っ払いが暴走して店を荒らしているようにしか見えませんでした。
ヒロヤ「イナバ!この酒、トシに持ってって!」
僕「あの人・・・ホストだったんですか?」
ヒロヤ「お前、知らなかったの?」
トシヤさんの彼女さんも強い人だった
トシヤさんの彼女さんはなかなか強い人で、テーブルマナーにめっちゃ厳しい人でした。お客さんのグラスのお酒を作るとき、グラスを自分の手元に一度下げて水滴を吹いてから酒を作るのが通例です。僕は会話に夢中になっていると、それを忘れてお客さんの手元にグラスを置いたまま酒を作る悪い癖がありました。
「やめて!ここでお酒を作らないで!」
という感じでビシッと説教する強い人です。リレイズのお客さんは新米ホストのミスも優しくスルーしてくれる人が多いのですが、トシヤさんの彼女はやたら厳しい人なのでドキドキしながら接客してました。
ある日突然クビになっていたトシヤさん
僕「そういえば、最近トシヤさん来ませんねぇ」
ヒロヤ「トシはクビになった」
僕「え、マジですか?」
ヒロヤ「傷害事件を起こしちゃったんだ、これで2回目だよ」
結局、トシヤさんは路上で本気のストリートファイトをして警察に現行犯逮捕されたそうです。そして、これが1度目ではなく2回目ということで、これ以上お店には置いておけないという判断を下したのでした。
タクヤ代表「あいつ、食わしてくれる女は幾らでも居たのに・・・何でケンカしちゃったんだろ?」
2部営業のホスト達の話では、トシヤさんのケンカ癖が直らないのは一種の病気ということでした。
しかし、その1年後・・・店のホームページにはトシヤさんが復活!
ホスト業界は芸能界のように何度でも復活が可能な業界だと知りました。