「♪ラジオ体操第一~♪」
ビニールハウスと畑に囲まれた空き地にラジオ体操の音楽が響く。
ここは、宮城県亘理郡亘理町。NPO法人ロシナンテス(※)の復興支援活動のひとつ、「健康農業 亘理いちご畑」の畑にいる。
今年7月に初めてロシナンテスの東北事業部を訪れて、部長の大嶋さんに活動のお話を伺っていた。しかし、百聞は一見にしかず。話を聞くだけではなく、実際の支援活動を見てみたく、活動の体験をお願いしていた。
そして、今回「健康農業 亘理いちご畑」に参加する機会をいただけたのだった。
「健康農業 亘理いちご畑」は、農作業を通して体を動かすことにより、仮設住宅で暮らしている方々が、明るく楽しく健康的に過ごせることを目的としている。
その活動が、青空の下のラジオ体操から始まったのだ。
この日の参加者は、仮設住まいの7名の方とロシナンテスのスタッフが5名にインターンの大学生が1名。他、自分を含めて計15名。
懐かしいメロディが、CDラジオから流れてくると、みなさん元気に体を動かしはじめる。
体操をして、体を慣らした後に作業開始。
今日は、畑の雑草取り。仮設住宅に住んでいるおばあちゃん方が畑に散らばり、
草を取りを始める。
みなさん、屈みこんだ状態で、鎌を片手に一つ一つ雑草を取っていく。私は、取った雑草を埋めるための穴掘り担当。炎天下は流石に暑く、ちょっと体を動かすと汗がでてくる。がむしゃらに穴を掘っていると、
「深く掘りすぎだよ。落とし穴でも作る気かい。」
と言われて、別の新しい穴を掘る。
30分程作業をしたところで、休憩となった。日よけ用のワンタッチテントの下で涼みながら休む。ビールケースの椅子が一つ空いていたので、両隣りのおばあちゃんに
「ここ、座ってもいいですか。」と尋ねてみた。
すると、笑顔で迎え入れてくれた。
おばあちゃんと話をしていると、ロシナンテスのスタッフの方が、畑で採れた赤シソで作ったシソジュースを、湯飲み茶わんにいれて配ってくれる。少し酸味が強いのだが、汗を流した後にはこの酸っぱさがたまらない。
心地よい風が吹いてくる。
「湿気のないさわやかな風ですね。」隣に座ったおばあちゃんに言うと、
「山から吹いてくる風だから、海風とは違うのよ。」と教えてくれた。
なんでも海から吹く風はもっと湿気があるとのことだった。気さくな方達で、初対面の私にも壁を作らずに話をして下さる。
遠くに阿武隈山地の山々が見える。私は、蔵王山のことが気になって、
「蔵王山、登るのにどれくらい時間かかるんですか?」と聞いてみる。
「車で近くまでいけるから、簡単に登れるわよ。若いころは、私たちも登ったのよ。今はもう無理だけど。ワッハッハッハッ。」
まわりにいたおばあちゃん方も、
「私も登ったわよ。昔の話で今は登らないけど。」と言って笑う。
本当に明るい方達でよく笑う。
笑顔に心が和む。今回、飛び入り初参加の私にも、まるで以前から知っていたかのように、おばあちゃんたちは接してくれる。
15分程、会話を楽しみながら休憩すると、草むしりを再開。再び30分程の作業したところで、
「今日はこれで終わりにしまーす。」という大嶋さんの言葉で、午前の作業が終わった。
おばあちゃんたちが、ラジオ体操をした畑脇の空き地に戻ってくる。みなさん、清々しい顔をしている。今日のようなぬけるような青空が似合う笑顔だった。
(※)NPO法人ロシナンテスは、アフリカのスーダンで医療活動、学校・教育事業、水・衛生事業、交流事業、スポーツ事業に取り組んでいるNPO法人です。東日本大震災後には、宮城県南部を中心に復興支援活動も行っています。支援活動では、宮城県名取市閖上地区、亘理郡亘理町に「寺子屋」を開校し、「小中学生の学習指導・支援」や、「"健康農業" 亘理いちご畑」、「閖上復興だより発行サポート」、「被災地交流事業」などを行っています。
<”ロシナンテス復興支援活動体験記2 ~青空の下の笑顔~”に続く>
Text & Photo:sKenji