ガレキと呼ばないで(楢葉町木戸周辺の変化)

2013年6月22日、2カ月ぶりに楢葉町に入った。
最初に木戸駅周辺に来たのは今年の3月7日、次は4月19日。
ガレキと呼ばれるのを拒んでいた被災した物やクルマ、そしてあの貨車はどうなっているのだろうか。

2013年6月22日

伸びる夏草のほか、恐ろしいほど変わらない光景

想像していたことだが、駅近くの川に転落したパワーショベルは、変わらずそのままの姿で残されていた。引き上げるための重機を入れるには、仮の道を設置する必要がありそうだ。そこまで手が回らないということだろうか。

あの車はどうなっただろう? 

2013年4月19日
2013年6月22日

まったく変わっていなかった。
ただ、伸び始めた夏草が、悲劇的な姿を覆い隠そうとしていた。

2013年3月7日
2013年6月22日

背の高い草に覆われているほか、細部までほとんど変わっていない姿に驚かされる。
変わったことは、折り畳み式のベンチシートが片方なくなったくらいか。

クルマはさ、ほら、持ち主のことがあるからさ

変わったものもあった。

2013年4月19日

被災した物のそれぞれが、「自分は元々なんだったんだぞ!」って自己主張している声が聞こえた場所。

2013年6月22日

いま、そこには何もない。

2013年4月19日

清酒の貯蔵タンクとクルマがあった場所には、

2013年6月22日

クルマだけが並んで残されていた。
貯蔵タンクはひとつ残らず消えていた。

4月に来たときに見た貨車はどうなっただろうか?
荒地の中にたたずむ、まるで現代アートのようにも見えたあの貨車は。

2013年4月19日
2013年6月22日

もはや、そこには何も。

近くで作業している人に、何の作業なのか聞いてみた。
「除染。除染の準備してるんだ。」

ゼネコンのヘルメットをかぶった監督さんにも聞いてみた。
「酒のタンク? うーん、分からないなあ。貨車はね、つい先日、機械を入れてバラしてから撤去したよ。クルマはさ、ほら、所有者の問題があるから。でも、残しておいたら除染作業ができないから、近々どこか一カ所にまとめる予定らしいよ。」

所有者の問題――。
クルマは家と同じく財産として扱われるので、所有者が名乗り出て処分するか、処分を依頼するかしなければ動かしにくいということらしい。

つまり、残されたままになっているクルマは、所有者が迎えに来るのを待っているということ。

クルマの所有者だった人は、何らかの理由で名乗り出ることができないということ。

物はガレキとして処分された。
クルマは別の事情から処分されずに厄介もの扱い。

夏草がぼうぼうと伸びる土地で、変わるものと変わらないものがせめぎ合っていた。

●TEXT+PHOTO:井上良太