2013年6月22日、2カ月ぶりに楢葉町に入った。
最初に木戸駅周辺に来たのは今年の3月7日、次は4月19日。
ガレキと呼ばれるのを拒んでいた被災した物やクルマ、そしてあの貨車はどうなっているのだろうか。
伸びる夏草のほか、恐ろしいほど変わらない光景
想像していたことだが、駅近くの川に転落したパワーショベルは、変わらずそのままの姿で残されていた。引き上げるための重機を入れるには、仮の道を設置する必要がありそうだ。そこまで手が回らないということだろうか。
あの車はどうなっただろう?
まったく変わっていなかった。
ただ、伸び始めた夏草が、悲劇的な姿を覆い隠そうとしていた。
背の高い草に覆われているほか、細部までほとんど変わっていない姿に驚かされる。
変わったことは、折り畳み式のベンチシートが片方なくなったくらいか。
クルマはさ、ほら、持ち主のことがあるからさ
変わったものもあった。
被災した物のそれぞれが、「自分は元々なんだったんだぞ!」って自己主張している声が聞こえた場所。
いま、そこには何もない。
清酒の貯蔵タンクとクルマがあった場所には、
クルマだけが並んで残されていた。
貯蔵タンクはひとつ残らず消えていた。
4月に来たときに見た貨車はどうなっただろうか?
荒地の中にたたずむ、まるで現代アートのようにも見えたあの貨車は。
もはや、そこには何も。
近くで作業している人に、何の作業なのか聞いてみた。
「除染。除染の準備してるんだ。」
ゼネコンのヘルメットをかぶった監督さんにも聞いてみた。
「酒のタンク? うーん、分からないなあ。貨車はね、つい先日、機械を入れてバラしてから撤去したよ。クルマはさ、ほら、所有者の問題があるから。でも、残しておいたら除染作業ができないから、近々どこか一カ所にまとめる予定らしいよ。」
所有者の問題――。
クルマは家と同じく財産として扱われるので、所有者が名乗り出て処分するか、処分を依頼するかしなければ動かしにくいということらしい。
つまり、残されたままになっているクルマは、所有者が迎えに来るのを待っているということ。
クルマの所有者だった人は、何らかの理由で名乗り出ることができないということ。
物はガレキとして処分された。
クルマは別の事情から処分されずに厄介もの扱い。
夏草がぼうぼうと伸びる土地で、変わるものと変わらないものがせめぎ合っていた。
●TEXT+PHOTO:井上良太
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