FIFAランク2位のドイツの強さは半端なかった
FIFAランキング2位のドイツと3位の日本との対戦はアウェーの地、ミュンヘンで行われました。過去の戦績は日本の1勝1分9敗。唯一の勝利は2010年ドイツW杯の準決勝です。それ以降、日本はロンドン五輪で準優勝を果たすなど輝かしい成績を収めました。しかし、この試合は2-4の惨敗。なでしこジャパンの実力に疑問符が付く展開になりました。ドイツとの差はどこにあったのか、検証してみましょう。
日本のシステムは4-4-2。GKは福元。DFは左から田中明日菜、熊谷、岩清水、有吉。MFは守備的な位置に宮間と阪口。攻撃的なサイドハーフは右に安藤、左に川澄。FWは大野と大儀見の2トップという布陣でした。試合開始からドイツのプレッシャーは激しく、日本は得意のパスサッカーが機能せず、ポゼッション率は低下の一途を辿りました。
特に1対1の攻防は全く歯が立たず、一発のドリブルでフィニッシュまで持っていかれるケースが目立ちました。ドリブル突破を警戒したディフェンスラインはズルズルと引き下がり、バイタルエリアに攻撃のスペースを与えてしまいます。前半17分には右サイドバックのマイアーに強烈なミドルシュートを浴びて失点。サイドバックがペナルティボックス付近に入ってくる状況から、いかに日本が押し込まれていたかが分かります。
大儀見の活躍で同点に追いつくも地力の差が表れる
この日、なでしこで最も輝いていたのは大儀見でした。屈強なDFを相手にしても1対1で競り負けず、巧みなポスワークから前線でタメを作り、ゲームメークからフィニッシュまで1人でこなす万能ぶりを見せました。前半39分に生まれた大野の同点ゴールも、大儀見の粘り強いポストプレーによるアシストが起点でした。
後半1分、ダ・ムバビのPKで2点目を奪われた後も、後半15分の宮間のフリーキックの跳ね返りを大儀見がボレーで押し込んで2-2の同点に追いつきました。ドイツ・ブンデスリーガで得点王に輝いた実力は伊達じゃなく、1人だけ別次元にいるようなワールドクラスのプレーを見せました。
運動量が落ちれば日本の良さは出ない
日本は後半30分を過ぎた辺りで運動量が落ちて失速します。コンパクトに保たれていた中盤はプレスが利かなくなり、後半42分にはカウンターから長距離をドリブルで独走されてダ・ムバビに3点目を喫し、ロスタイムにはラウデアの高速ドリブルを止められず、ペナルティエリア内で丸山が倒してPKから4点目を失います。
結局のところ、ドイツを相手に1対1では勝てないのが日本の現状です。運動量が落ちれば守備でプレッシャーをかけられず、攻撃ではコンビネーションを見せられません。ドイツは1人で持ち込んでフィニッシュまで運び、1人でタックルしてボールを奪う力があります。
それが最も顕著に表れていたのがシュートレンジでした。ドイツの選手は20~25mを射程圏内にしているのに対し、日本の選手は10~15mが平均的な射程距離です。日本はバイタルエリアでチャンスを迎えてもボールをこねて味方を待つことが多く、シュートよりもパスを選択するケースが目立ちました。ボランチの宮間や阪口は20m級のミドルシュートを打てるだけに、強引に打って出る必要があったと思います。
左サイドバックは人材難、新スターの発掘を!
この試合、左サイドバックに抜擢されたのは田中明日菜でした。守備では高い貢献度を見せたものの、攻撃ではオーバーラップするタイミングを掴めずに機能しませんでした。イングランド戦では左利きの宇津木瑠美が可能性のあるプレーを見せましたが、レギュラーの鮫島彩を脅かす力を持ちません。
左サイドバックは日本のアキレス腱と言ってもいいほど、代えの利かないポジションです。ヤングなでしこで頭角を現した浜田遥や、攻撃でも守備でもサイドで威力を発揮するレフティーの仲田歩夢をコンバートするなど、思い切った選手起用が必要だと思われます。
なでしこのパスワークとスピードは世界一
それでも、日本のキック精度とパスワーク、瞬間的なスピードとテクニックは世界一の実力でした。宮間のフリーキックはワールドクラスであり、大儀見の巧みなポストプレー、川澄のテクニックとゲームメーク、大野のスピードと突破力は世界でも屈指です。
同時に優れた個の力を生かすには組織力と運動量が不可欠なことも実証されました。イングランド戦から中3日の強行スケジュールで戦った欧州遠征の第2戦は、コンディション不良で本来のパフォーマンスを引き出すことができませんでした。しかし、超アウェーの不利な条件でも、世界最強クラスの強豪国と十分に渡り合えることが証明されたゲームでした。