時間が止まった町・富岡町 ~その3~

海岸沿いを歩いた後、富岡駅に移動する。

途中、アスファルトの道路が所々で陥没している。スクラップのような無残な姿の車があちこちにあり、駅周辺にある建物の一階部分の窓やドアは、ことごとく津波で壊されている。

家屋の中には、津波により流された、ありとあらゆるものが散乱している。家具、電化製品、衣類、食糧品。その他、郵便ポスト、車までもある。

生活感を感じさせるものが特に多く、ここで暮らしていた方々の生活をどうしても連想してしまう。

私が今、立っているこの場所にも間違いなく、大勢の方の日常生活が存在していたのだ。

私は、2年以上たった今、目の前にあるこの光景で津波のパワーを改めて感じているが、当時、ここには実際の津波を目の当たりにした方たちがいた。

この場所で亡くなった方も大勢いる。

現在は誰も住んでいないこの町の住人の方々は今この時も故郷とは別の地で生活をしている。

放射能問題さえなければ、戻りたい方が大勢いることだろう。

2年以上たった今でも、誰一人住んでいない廃墟のような町を見て、放射能問題の根の深さ、恐ろしさを改めて感じている。

しかし、自然は人間とは対照的に、あたかも震災がなかったかのようにそこに存在していた。

植物は町のあちこちで、震災前と同じような美しい花を咲かせていた。

いつの日か、この町にもこの花のように、震災前と同じような人の笑顔と談笑が戻ることを願ってやまない。

<「時間が止まった町・富岡町」終わり>

Text & Photo:sKenji