アウェーの地でイングランドと激突
ドイツW杯で唯一の黒星を喫したイングランドにリベンジなるか?という意味で注目された大一番でした。日本のスタメンはDFに左から宇津木、長船、岩清水、有吉。守備的MFは熊谷と阪口。攻撃的なサイドハーフは左に川澄、右に安藤。FWは大野と大儀見の2トップ。代表ではセンターバックだった熊谷がボランチに入り、本来はボランチの宇津木が左サイドバックに入るという新しい守備陣で挑みました。
対するイングランドはFIFAランキング7位の強豪。4-4-2のシステムでサイドアタッカーのウィリアムズとヤンキーがスピーディーなドリブルでワイドに攻撃を仕掛け、2トップに強さと速さを持つアルコとホワイトに早いタイミングでクロスを合わせます。ホームという地の利を生かして前方からハイプレスを仕掛け、高い位置でボールを奪ってショートカウンターを狙いにきました。
1-1の引き分けもアウェーでは収穫ありか?
アウェーにも関わらず、日本は前に速いプレッシャーをかけて高い位置でボールを奪いにいきました。1対1でも組織力でも決してイングランドに引けを取りません。前半41分、アルコに奪われた先制点はバイタルエリアでDFのパスミスから生まれたゴール。崩されて失点した得点ではないので、新しいディフェンスラインは機能していたと思います。
1点をリードされて前半を折り返した日本は、後半からリスクを冒して攻めに入ります。サイドハーフの川澄と安藤がサイドから突破をしかけ、FWの大儀見と大野、ボランチの阪口までもがペナルティエリアに進出してゴールを狙います。サイドバックの有吉と宇津木のオーバーラップもMFと見事に連携し、厚みのある攻撃を展開しました。
後半31分、イングランドはバイタルエリアで致命的なパスミスを犯します。これを見逃さなかったFW大野がインターセプトから一気にゴール前にドリブルで侵入。DF3人に囲まれながらもタメを作って粘り、サイドから走り込んできた川澄にラストパス!川澄はGKをギリギリまで引きつけて脇を抜く技ありシュートで同点に追いつきます。超アウェーの地でイングランドを相手に土壇場で同点に追いついたのは大きな自信になったと思います。
左SBの宇津木とボランチの熊谷は機能していた
左サイドバックで先発した宇津木瑠美は攻守に渡って可能性のあるプレーを披露。高いキープ力でボールを失わず、得意の左足で高精度のクロスボールを供給しました。あれだけ高い位置でボールを持てるなら、もっと積極的にシュートを打っても良いと思います。宇津木なら20mくらいまでのミドルシュートは射程圏内なので、もう少し早いタイミングでシュートを狙えばゴールの可能性も高まると思います。
ボランチに入った熊谷も攻守に質のプレーを見せました。1対1の強さは勿論、ボールを持ったときのビルドアップは素晴らしく、中盤の底から巧みにボールを散らしていました。所属クラブのフランクフルトでは、ボランチでレギュラーを張る実力をいかんなく発揮してくれたと思います。
右MFの中島、左SBの上尾野辺も潜在能力は高い
後半から右サイドハーフに入った中島依美、左サイドバックに入った上尾野辺めぐみも高い潜在能力を見せました。後半36分、右サイドでボールを受けた中島はクロスを上げると見せかけて角度のない位置からミドルシュートは放ちます。GKは完全に逆を突かれて反応できず、シュートは右ポストを激しく叩きました。あとボール半個分ずれていればネットを揺らしていたでしょう。中島の意表を突くアイデアとキック精度の高さはチームに違いをもたらしました。
左サイドバックに入った上尾野辺はMFの選手でありながら、最終ラインから積極的にオーバーラップをしかけました。本来は受け手ではなく、ゲームメーカーとしてボールの出し手の選手なのでチームにフィットしていたかはどうかは微妙です。しかし、今後も粘り強く起用を続けることで新境地を開く可能性を十分に感じました。