2013年4月17日(769日目)の宮城県気仙沼市・岩井崎
陸中海岸国立公園の最南端、豪快な潮吹き岩で知られる岩井海岸。
三陸のリアス式海岸を縫って走る国道45号線沿いを走ると、たくさんの観光看板のお出迎えを受ける。
しかし、あれだけの大震災だ。しかも1m近い地盤沈下。潮吹き岩は無事だろうかと案じつつ、気仙沼市階上駅近くの岩井崎を訪ねた。
園地の入り口には遊歩道のポールがレスキューされていた。ここにあるのはなぜか縦パーツばかり。
岬は海面からかなり高さがあるのだが、津波はこの園地も襲ったということだろう。不安がよぎる。潮吹き岩は大丈夫だろうか。
松林を抜けると、立ち枯れた松の木の根元に、遊歩道の案内ポールが倒れ掛かったままになっていた。
あの日、この静かな海が盛り上がり、津波となって、岩井崎を呑み込んだのだ。
岬の先端近くには、国立公園を示す構造物。
津波に洗掘されて基礎までむき出し。危なっかしく傾いてはいるが、なんとか持ちこたえたらしい。
目を岬の突端に向けると、そこには江戸時代のご当地出身力士、横綱・秀ノ山雷五郎の銅像。
太平洋に向かって不知火型の土俵入りをする横綱の向こうには、
看板に描かれていたほどではないが、しっかり潮を噴き上げていた。
よかった。
大噴出する瞬間を捉えようと粘ってみたが、なかなかタイミングが合わない。
潮まわり(満潮や干潮など)や波の大きさ、風向きなどの条件が揃ったときに、大きな潮吹きがみられるという話だ。
潮吹き岩の右の方に目をやると…。
津波の被害を受けた松が、まるで龍そのもの!
冒頭の写真で紹介した「龍の松」、「辰の松」と呼ばれる有名な松。
2012年の辰年にはポストカードも発売されて、ボランティアや観光客のみならず、地元の人たちにも縁起物として大好評だったとか。
見てみれば、秀ノ山の銅像も基礎がちょっと危ない。
それでも、なんとか頑張っている。
岩井崎も周辺も、津波の被害は大きかった。
しかし潮吹き岩は健在だ。横綱も太平洋に向かって胸を張る。それに新しい仲間、龍の松も加わった。
岩井崎はきっと人気スポットとして復活できるんじゃないか。
そんな希望を少し、感じた。
しかし――。
園地のロータリーのすぐ近くで、工事予定を示す看板を見つけてしまった。
海岸を写した写真には、赤い文字で「TP+9.8m」という文字と点線が描かれていた。
「TP」とはTokyo Peil(東京湾平均海面を示すオランダ語)の略。東京湾の海面から9.8mの高さという意味。
この地に、写真の松の木が写っているあたりに、その高さの防潮堤を建設する予定だと示しているのだ。
同じ松の木を、少し引いて撮影してみると、こんな感じ。
上の写真の赤い点線のところまでの防潮堤が造られてしまったら、
園地のロータリーは防潮堤で埋まってしまうだろう。
大津波を耐えた松の木の多くも伐採されることになる。
もちろん、防潮堤の内側からは、海の景色を眺めることもできなくなるだろう。
なにしろ9.8mというのは、3階建てのビルの屋上くらいの高さなのだ。
岩井崎の未来には、多くの困難が立ちふさがっている。
●TEXT+PHOTO:井上良太(株式会社ジェーピーツーワン)
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