気仙沼大島とツバキ【島と○○】

 気仙沼大島と言えば、何を思い浮かべるでしょうか。例えば、環境省が「快水浴場百選」の特選として選定した小田の浜の美しい海でしょうか。それとも、作家の水上不二が「大島よ永遠にみどりの真珠であれ」と言ったように、その緑の美しさが印象強いでしょうか。 ここ最近、気仙沼大島を代表しつつある、新たな特産品が気になっています。それは、島内の亀山に多く自生する日本原産の常緑樹・ツバキ(椿)です。

国内に幅広く分布するツバキ

 離島でツバキと言えば、伊豆諸島の伊豆大島や利島、また長崎・五島列島のものが有名ですね。伊豆大島ブランドのツバキは有名ですし、利島は生産量が日本一と言われています。五島列島のツバキも高品質として名高いところです。

 そのあたりは有名ですが、恥ずかしながら気仙沼大島も「ツバキの島」だとは知りませんでした。それに東京の伊豆諸島、長崎の五島列島に加え、宮城の気仙沼大島で育つとなると、結構広範な印象です。ツバキとはどういう環境下でよく育つのでしょうか。 結論から言うと「ツバキは日本でよく育つ」と言って良いみたいです。特に原種であるヤブツバキは青森県から南西諸島と幅広く分布するほか、亜種も含めれば47の都道府県で生育しているそうです。

 また、その名所も全国各地にありました。例えば全国の自治体のうち、ツバキを「市区町村の木」に指定している自治体は、気仙沼大島が属する気仙沼市をはじめ、全国で57の自治体にのぼります。それだけ各地で親しまれていることが分かります。 主に山地や海岸に自生するようですから、山も海も備え持つ離島はツバキにとっては絶好の生育地なのかも知れません。また「寒気や乾いた風を大変きらう」という特徴もあるようです。気仙沼大島は東北地方ゆえに寒さも気になるところ。ですが、これについては「黒潮の影響を受けて比較的温暖な気候」の気仙沼大島。特別問題はないようです。気候や地理的な要素など、色々絡むだけに奥が深いですね!

他の観光資源を失ったなか、ツバキの生産をより強化

 2011年3月11日。東日本大震災が起こり、東北地方各地に大きな被害をもたらしました。気仙沼大島を含む気仙沼市も甚大な被害を受け、特に「海産物を中心とした観光資源が壊滅的な被害を受けた」とのニュースは相次いで見かけました。上で述べた小田の浜や、集落の周辺には、2013年となった今もなおガレキが残っていると聞きます。 今までの観光資源が失われたなか、それでも咲いていたのがツバキだったのでしょうか。

 もともとツバキの生産の下地があった気仙沼大島。気仙沼市・大島地区振興協議会が、復興に向けて打ち立てたプロジェクトの名前は、「つばきの島復興21世紀プロジェクト」でした。他の観光資源を失ったなか、ツバキの生産をより強化していこうという取り組みだそうです。 現在、復興に向けた気仙沼大島の取り組みには必ずと言っていいほど、ツバキ関連商品を見かけます。震災前と震災後では確実に印象が変わりました。

 特に印象的なのはツバキ油の入った「椿カレー」。個人的には「カレーに椿なんて!」と思いましたが、これが意外と美味しいらしく、栄養価・保存性共に優れているようです。一度食べてみたいですね! そのほか、定番の純性ツバキ油やツバキ油入りハンドクリームなど。今まで見かけなかったツバキ商品が気仙沼大島の新たな顔を担いつつあるようです。また、これらが次々登場したことで、島の雇用機会の増加にも繋がっているのだそうです。

 ツバキの島として復興を目指す、気仙沼大島の今後に注目です。