世界自然遺産をご存知でしょうか。ユネスコが登録する世界自然遺産は国際的な自然保護団体である国際自然保護連合(IUCN)によって評価されます。なんだか難しそうな話ですが、人々にとって何物にも代えがたい貴重な自然が、世界自然遺産として守られているのです。 このシリーズでは世界自然遺産の中でも離島に限定して紹介していきたいと思います。日本では屋久島と、小笠原諸島(父島・母島)が世界自然遺産に登録されていますが、世界を見渡しても、両島に匹敵する“世界遺産島”が盛りだくさん!
せっかくなので、ちょっとまとめてみました。なかなか凄い島ばかりです。いやはや、世界は広し。
その5.ヨーロッパ北部~西部編
どこかお洒落で、日本とはまた違う伝統的かつ美しい街並みを想像してしまうヨーロッパ諸国。世界遺産はヨーロッパだけで422件(全962件、2012年時点)ありますが、そのほとんどが文化遺産となっています。
数は少ない自然遺産も、内容では劣っていません。島々に関しても10数島が選定されており、見どころは十分!サンゴや大型回遊魚に恵まれた暖かい島々とはまた違う、北の島々の魅力を紹介します。
スルツェイ(アイスランド・スルツェイ島)
1963年、海底火山の噴火に伴い出現した新島。アイスランドの平均気温は10度をやや下回り、我々日本人にとっては寒い国ではあります。しかし、北極圏に近いことを考慮すればかなり暖かく、活発な火山が多いことから、しばしば「火の国」とも呼ばれています。
スルツェイ島も、氷河の下から噴出したマグマによって誕生しました。火山活動は停止した現在は、島内に多々見られる間欠泉や温泉が、火山島であることを物語っています。50年の歴史の中でわずかに植物も定着し、周辺の海鳥がこの島で羽を休めるようにもなりました。このように、スルツェイ島は、世界自然遺産の選定基準である「陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。」として認められ、登録されました。今後も、生まれたてのこの島がどう変わっていくか、注目が集まります。
また、日本では1973年、小笠原諸島西部の海底火山が噴火し、西之島新島(のちに西之島と統合)が形成されたことがあります。(参考画像はこちら)
ワッデン海(オランダ~ドイツ~デンマーク・フリースラント諸島)
オランダからドイツの北部に広がる海はワッデン海と呼ばれています。ヨーロッパを代表するアザラシの繁殖地であり、浜辺で群れを成して日向ぼっこをしている姿もよく見られます。しかし、注目すべきはアザラシだけでなく、ワッデン海で育つ数多の動植物相。ワッデン海は潮の満ち引きが6時間刻みで絶えず繰り返され、海と干潟の両方の顔を持つのです。ワッデン海のすべての生き物が、潮の満ち引きに応じた暮らしをしており、その姿もなかなかおもしろいので必見でしょう。もちろん人間も同様で、潮の満ち引きに応じて郵便配達をする人もいるとか。24時間営業も珍しくない日本からすれば、自然に従った生き方はかなり健康的に見えますね!
さらにこのワッデン海、全長約500km、面積はおよそ約10,000 km²とかなり広大!「世界最大の干潟」としても知られています。このワッデン海の上に形成されている島々はフリースラント諸島と呼ばれ、ワッデン海観光の拠点としても機能しています。
(参考画像はこちら)
ヘーガ・クステンとクヴァルケン群島(スウェーデン~フィンランド・クヴァルケン群島)
北欧・スウェーデンとフィンランド。この両国に挟まれるようにボスニア湾という巨大な湾があります。この湾の沿岸部、スウェーデン側の海岸をヘーガ・クステンと呼びますが、まずはこちらが人々の注目を集めます。年間1cm程度の継続的な土地の隆起が確認されたのです。1年に1cmと言えど、100年経てば1mですからオドロキですね「!
この現象の背景には、約1万年前に訪れた氷河期が大きく絡んでいます。この地域には、当時、じっくり時間をかけて形成された氷床が、陸地にずっしりとのしかかっているそうです。ところが、徐々に氷床が後退することで、陸地の負担が軽減。その結果、急速な地殻上昇現象が起こっているそうです。このヘーガ・クステンが2000年に世界自然遺産に登録されました。しかしその後、対岸にあるフィンランドのクヴァルケン群島でも同様の現象が確認され、2006年に遅れて世界自然遺産に登録されました。クヴァルケン群島はおよそ5600もの島々から成り、水鳥が多く生息しています。
南方の島々とは打って変わり、地形の隆起という、まさに北欧ならではの地理的要因で世界遺産登録となりました。島ひとつ見ても、色々な表情を見せますね。地球は不思議です。(参考画像はこちら)
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火山、干潟、隆起と、それぞれ違う状況から世界自然遺産になりました。そしてその背景には地学的な要因があり、その先には生物学的な期待が込められているのが印象的です。“島”という括りで見ても、そのアプローチは様々。
島好きな僕ですが、地理や生物といった分野の勉強には自信がありません。調べていると色々面白いだけに、「学生時代から、もっと勉強しておくべきだった」と、思ってしまいます。。逆にそういう分野に長けた専門家なら、こんな島々は面白いことづくめじゃないでしょうか!ほんと、奥が深いです。