世界自然遺産の島々 ~その4.中米編~

 世界自然遺産をご存知でしょうか。ユネスコが登録する世界自然遺産は国際的な自然保護団体である国際自然保護連合(IUCN)によって評価されます。なんだか難しそうな話ですが、人々にとって何物にも代えがたい貴重な自然が、世界自然遺産として守られているのです。 このシリーズでは世界自然遺産の中でも離島に限定して紹介していきたいと思います。日本では屋久島と、小笠原諸島(父島・母島)が世界自然遺産に登録されていますが、世界を見渡しても、両島に匹敵する“世界遺産島”が盛りだくさん!

 せっかくなので、ちょっとまとめてみました。なかなか凄い島ばかりです。いやはや、世界は広し。

その4.中米編

中米諸国は、カリブ海の西インド諸島に代表されるように、小さな島々をイメージします。島の数だけ国があり、日本で言えば、伊豆諸島や南西諸島のように、その楽園的風土を好む人々が、のんびり暮らしている印象がありました。

調べてみると、やはりそれぞれの島に個性や歴史、人々の関わりがあり、奥が深いなぁと感じました。世界遺産の島々にしても、独特の美しい自然はもちろんですが、人々に愛されるか否かも重要な要素になる気がしました。しかし、さすがは世界遺産の島々。どれも魅力的です。

ココ島国立公園(コスタリカ・ココ島)

コスタリカ本土とガラパゴス諸島のちょうど中間あたりに位置するのがココ島です。島は国立公園に指定されており、1997年に世界自然遺産に登録されました。島にココヤシの実がなっていたことからココ島と名付けられたそうです。

島は断崖絶壁に囲まれ、周辺海域はネムリブカやジンベイザメ、シュモクザメといった数多のサメが群れを成しています。サメ以外にも大型の回遊魚が多く生息することから、中米屈指のダイビングスポットとして、登録前後からたちまち有名になりました。フランスの海洋学者で、「海の恋人」と言われたジャック=イヴ・クストーは、このココ島を「世界で一番美しい島」と評しています。現在は一部関係者が常駐するのみで、ほぼ無人島に近いココ島ですが、その昔は「海賊が財宝を隠した島」という噂が立ち、財宝を求めたハンターたちが大挙して訪れた歴史があるそうです。なかなかマンガのような話でわくわくしますね!年間降水量も高く、岩場や洞窟やジャングルの多い島ですので、なんだか雰囲気も想像できてしまいます。ただ、残念ながら、いまだにそれらしきものは見つかっていないとか。

そんなロマンあふれる島だからか(?)、スティーブンソンの小説「宝島」や、映画「ジュラシックパーク」に登場する島は、この島がモデルになっているそうです。(参考画像はこちら)

 

ピトンズ・マネジメント・エリア[PMA](セントルシア・ウィンドワード諸島)

カリブ海の南方に浮かぶ島々・ウィンドワード諸島の独立国・セントルシア。目安としては、淡路島に近い面積の小さな島であり、また、非常に起伏の激しい火山島でもあります。しかし、その豊かな自然の価値が認められ、2004年に世界自然遺産に登録されました。

登録された区域は、島の南西にあるピトンズ・マネジメント・エリアという場所。ここは777mの大ピトン山と、743mの小ピトン山を中心に、海を含めた29.09㎢の範囲がこの自然区域に指定されています。陸地は火山島ゆえに地熱に恵まれ、硫黄の噴気孔や温泉が見られます。一方断崖の下に広がる海は美しいサンゴ礁が広がり、さらには170種近くにおよぶ魚類、沖合にはクジラなど、わずかな範囲に多様な生き物が所狭しと生息しているのです!日本で言えば、火山島である八丈島、青ヶ島の土壌と、多様な海の生き物が楽しめる小笠原諸島をひとつにしたようなイメージでしょうか。小さな離島国家ですが、水陸の魅力がぎゅっと凝縮されています!

セントルシアは日本人にとっては馴染みが薄い国だと思います。そんなセントルシアですが、実は1番の主要援助国が日本だったりします。(参考画像はこちら)

コイバ国立公園とその海洋特別保護地域(パナマ・コイバ島)

パナマ本土から30kmほど南西へ離れたところに、コイバ島という離島があります。

大昔、1万年以上前は、パナマ本土とくっついていたそうですが、時間と共に切り離され、長年の月日と共に独自の生態系を築き上げていきました。その結果、コイバホエザルやコイバアカオカマドドリといった、固有の亜種が多くみられるようになります。かつては、パナマ国家の大規模な刑務所が建てられ、受刑者の島として機能していたそうです。当時の独裁政権もあって、パナマ国内では恐れられた島でしたが、結果として島の自然は保たれ、今となっては手付かずな環境が高く評価されるように至りました。

首都パナマ・シティからバスで6~7時間程度離れたサンタ・カタリーナという町から船で行くのが一般的だそうで、ダイビングのメッカ的存在になっています。この島の周辺も、他の中南米の島々と同じく、サメが豊富に見られることが人気のポイント。また、大平洋最大級のサンゴ礁にも恵まれ、多様な魚たちのほか、クジラやイルカの貴重な繁殖地になっています。パナマにとってかつては恐怖の対象だった島も、今となっては国内外問わず、多くの観光客に愛される島となりました。自然は人々を癒す存在なのだつくづく感じさせられます。

(参考画像はこちら)

 

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各島々、自然遺産として登録されており、特色ある生態系や手つかずの自然が注目されています。しかし一方で、人々と自然とのかかわり方もまた印象的でした。観光開発が進む島もあれば、逆に徹底して手つかずな状態を保つ島もあります。上で述べたように、かつては刑務所として機能し、恐れられた島もありました。自然遺産とは言いますが、世界遺産として登録されている以上、今後間違いなく人々と関わっていく存在になるでしょう。自然にとっても人々にとっても良い関係であり続けることに期待したいですね!