2012年10月24日の気仙沼
2012年10月24日の気仙沼。土地に水が上がるということ
気仙沼湾を囲む陸地の東側、県道218号線沿いにこんな看板があった。
「路面冠水時通行注意」。
まるで冠水することが当然みたいな注意喚起にドッキっとした。
土地に水が上がるということ
道が冠水するということは、周りの土地も水に沈むことを意味する。地殻変動による土地の変化がどんな状況なのか、気仙沼市内を回ってみると・・・
どこから海で、どこからが陸なのか。
陸地のうち、港の施設がどこまでで、私有地の境界がどこにあるのか。境目は水と泥に覆われていく。
本当なら海へ下っていくスロープではなかったのに。しかもガードレールは火災の熱でぐにゃぐにゃに融けて千切れていた。
えーっと、現状を説明しますね。左手に並べられた黒い土嚢は、道路をかさ上げするために仮設されたもの。本来の県道は土嚢の右下の部分です。ところどころ蓋が開いているコンクリート製の構造物は道路の側溝(雨水などを排水するための溝)です。
側溝の右側はおそらく民有地だったはず。
もちろん海水が入ってくる水たまりではなく、ちゃんと乾いた普通の土地だったところです。
こちらは県道218号線の山側です。
破壊されたハシケのようなものが残された場所は、水が引かない湿地帯と化していました。
市内浪板橋付近の決壊した護岸。海が土嚢に迫ります。
防潮堤の向こうの護岸は水浸しです。
二ノ浜の漁港護岸は傾いて沈下していて、かなり危険な感じ。
二ノ浜漁港の工事現場脇にはこんな看板が掲げられています。この看板が意味する工事がどれくらいのものになるのか、ざっくりと計算してみましょう。
TPは東京湾の平均水面高さのこと。気仙沼の水面も同じ高さだと仮定します。陸地が完全に水没しているわけではないので、平均1.3メートルかさ上げするという設定にします。2メートル幅の自動車が離合できるよう幅員6メートルの道路にする場合、道路の距離100メートルあたりで必要な土の量は、
1.3×6.0×100=780立方メートル
1立法メートルあたりの土の重さが1.7トンだとすると、
780×1.7=1,836トン
10トンダンプ(大型トラック)で運んでも、184台分の土が必要になる、ということです。
普通免許で運転できる2トンダンプなら、918回、現場に土を入れなければ完成しません。
しかも、この土の量は押し固めることで目減りする分を勘定していません。土で路盤を作った上にはアスファルト舗装も必要になります。
「1.8mのかさ上げ」は、かなり大規模な工事になるのです。
さらに、かさ上げが必要なのは道路だけではありませんよね。道だけかさ上げしたのでは、土地に水が流れ込んでくることになってしまいます。
いったいどれだけの工事が必要になることやら。
沿岸部だけの問題ではありません。南気仙沼駅近くの市街地では、潮位によって下水道の敷地内枡から水があふれ出てきます。
町全体、そして東北の沿岸部全体のかさ上げ工事が終わるのは、いったいいつのことになるのでしょうか。
●TEXT+PHOTO:井上良太(株式会社ジェーピーツーワン)