ロンドンオリンピックで銀メダルに輝いた『なでしこジャパン』。U-20女子ワールドカップで銅メダルを獲得した『ヤングなでしこ』。女子サッカー界が大きな注目を集めている今、更に一つ下の世代に『リトルなでしこ』と呼ばれる17歳以下の日本代表の存在があります。今回はU-17女子ワールドカップで活躍したフォワードの白木星選手のプレーの魅力に迫ります。
【白木 星】 しらき・あかり
国籍:日本
生年月日:1996年11月4日
身長:169cm
体重57kg
在籍チーム:常盤木学園高等学校
ポジション:FW
1トップのレギュラーフォワードは白木にするべき
リトルなでしこのフォワードに選出されたのはエースの増矢理花と白木星の2人だけ。4-2-3-1というシステムの都合上、フォワードの人数を最小限に留めたいという監督の狙いが見えました。本大会では経験と実力に勝る増矢がレギュラーフォワードとして起用されましたが、1トップとしてチームの戦術にフィットしていたのは白木の方でした。
ニュージーランドやガーナなどフィジカルコンタクトの強い相手と対峙した場合、1トップが増矢ではボールの収まりが悪く、ポストプレーヤーとして機能しない場面が目立ちました。サイド攻撃を主体とする日本は、トップに一度ボールを預けてサイドハーフとサイドバックの攻め上がりを待つ時間が必要です。相手がディフェンスラインを上げてきた場合、増矢のようにDFの裏に飛び出すフォワードは有効ですが、ディフェンスラインが引いてしまった場合、増矢の動きは封じられて前線で手詰まりが起こりました。
ハイボールにも強いが足元の技術も優れる
高校1年生にして169cmという高さを持つ白木星は、強さと上手さを兼ね備えた理想的なポストプレーヤーです。9-0の大勝を収めたメキシコ戦ではその能力を爆発させた感があります。トップの白木にボールが収まることにより、サイドハーフの成宮唯や井上綾香がアタッキングサードから一気にペナルティエリア内に飛び出して行く時間が生まれました。それまでは長谷川のミドルシュートや成宮のドリブル突破など個人の力で得点を奪っていた日本ですが、ターゲットに白木を置いたことでオフェンス陣が共通の攻撃意識を持てたことは確かです。
白木は足元に確実にボールを収めて味方にパスを落とせる技術を持ち、オフザボールの動き出しも質の高いプレーを見せます。ゴール前での落ち着きは素晴らしく、ニアサイドに絶妙のタイミングで飛び込むと冷静にシュートを打って難なくゴールを奪います。運動量の多さに加えてプレーエリアが広いのも特徴で、ときにはセンターサークル付近まで戻って献身的な守備をします。大柄な割にはスピードと柔軟性も秘めており、ボールを奪ってからパス&ランで一気に速攻を仕掛けるプレーを得意とします。DFの前から一度消えて再びゴール前に現れるなど、ディフェンスとの駆け引きも上手くストライカーとしての素質も十分です。
総括
高校1年生ということで、身体的な能力はまだまだ伸びる余地があります。将来的にはなでしこジャパンの大儀見優季やヤングなでしこの道上彩花を脅かすセンターフォワードに成長する可能性もあります。今大会では十分な出場機会が得られなかった白木ですが、エースの増矢理花と2トップを張る姿を長い時間見たかったです。この2人が上手く噛み合えば、0-1で惜敗したガーナ戦でも得点の気配をもう少し感じさせてくれたと思います。