ロンドンオリンピックで銀メダルに輝いた『なでしこジャパン』。U-20女子ワールドカップで銅メダルを獲得した『ヤングなでしこ』。女子サッカー界が大きな注目を集めている今、更に一つ下の世代に『リトルなでしこ』と呼ばれる17歳以下の日本代表の存在があります。今回はU-17女子ワールドカップで活躍した左サイドハーフの成宮唯選手のプレーの魅力に迫ります。
【成宮 唯】なるみや・ゆい
国籍:日本
生年月日:1995年2月22日
身長:154cm
体重45kg
在籍チーム:JFAアカデミー福島
ポジション:MF
元来はボランチの選手、攻撃力は田中陽子に匹敵する
U-17女子W杯では左サイドハーフでの出場が多かった成宮ですが、元々はボランチの選手です。予選リーグのニュージーランド戦ではボランチで先発し、圧倒的な攻撃能力を見せてくれました。中盤の底にスタートポジションを置きながら、ほとんどトップ下のようなポジションでプレーする超攻撃型ボランチです。フィジカルが強くキープ力は抜群で、中盤でしっかりボールが収まることから中央でタメを作りながら周囲の攻撃参加を引き出します。
攻撃の起点としてパスの出所になるだけでなく、自らドリブルで仕掛けることができるのでディフェンスにとっては厄介な存在です。キックの種類が多彩でパススピードが速く、限られたスペースにも中長距離のサイドチェンジを苦も無く通せる高いキック精度を誇ります。バイタルエリアからのドリブル精度、広い視野に裏うちされた展開力の高さはU-20の田中陽子を凌ぐものがあり、今後の成長次第では一気にA代表に上り詰める可能性もあります。
左サイドハーフでは他の追随を許さない突破力を誇る
成宮のストロングポイントは破壊力抜群の攻撃力にあります。吉田監督の考えは分かりませんが、ボランチから左サイドハーフにコンバートしたことは正解だと思います。成宮のようにサイドでも中央でもディフェンスを切り崩せるドリブラーは貴重な上に、アシスターとしてもゴールゲッターとしても高い能力を発揮します。田中陽子にも同じことが言えますが、得点に絡むプレーを得意とするプレーヤーは、なるべくゴールに近い位置でプレーさせた方が相手にとって脅威です。成宮の場合はサイドハーフにポジションを上げたことで、ボランチで持て余していたオフェンスのポテンシャルを一気に爆発させた感がありました。
サイドラインを突破するドリブルの破壊力は凄まじいものがあり、足元に吸い付くような柔らかいボールタッチで細かいターンを繰り返し、まるでヘビのようにクネクネと左右に華麗なステップを踏みながらトップスピードでDFを抜き去る独特のドリブルフォームを持ちます。攻撃パターンも多彩で、アタッキングサードから縦にドリブルで切れ込んで折り返すピンポイントクロス。サイドから中央にカットインしてミドルシュート。中央に絞ってタメを作り、サイドバックのオーバーラップを引き出すスルーパス。単独突破だけでなく、パス&ランを駆使したコンビネーションプレーも得意とします。
豊富な運動量でディフェンスでも貢献
元来のポジションはボランチということで、守備意識は極めて高いものがあります。カバーリングを意識しながら守備のリスクを管理するアンカータイプのディフェンスではなく、前線から激しくチェイシングをかけて中盤にプレッシャーを与え、相手のパスミスを誘ってインターセプトから一気の速攻でシュートまで持っていく攻撃的な守備が特徴です。90分間尽きることなく走り続ける無尽蔵のスタミナで、中盤で攻守の起点となる存在です。
総括
準々決勝のガーナ戦では中盤のプレッシングに負けてパスミスを連発していました。潜在能力では一級品のポテンシャルを持つ成宮唯ですが、体力面でも技術面でも伸びていくのはこれからでしょう。現時点でもU-20代表のアタッカー陣に引けを取らない能力を持つだけに、数年後は間違いなく『なでしこジャパン』を背負う逸材の一人です。早い段階でA代表に招集し、国際経験を積ませる策も有りだと思います。