焼尻島ならではの“超”高級グルメ!サフォーク種の羊肉を食べる。【旅レポ】

友人数名と訪れた夏の北海道。僕らは天売島から焼尻島へと移動した。小さな離島ゆえか、相変わらず食事処は限られているのだが、焼尻島も天売島同様、知る人ぞ知るグルメ御用達の島らしい。なんでも「この島でなければ食べることができない」“超”の付く高級食材が食べられるそうだ。午前11時、期待を込めて島に降り立った。

グルメ御用達!“超”の付く高級食材

僕らは宿泊場所となる焼尻島白浜キャンプ場にてテントを張った後、まずは島内を散策する。高い建物は無く、高原を思わせるような広々とした風景があり、海の向こうにはついさっきまで滞在していた天売島も見えた。この日はあいにくの曇り空で、海も少し荒れ気味だったが、それでも開放的な気分になれた。

そんな焼尻島の風景に溶け込んでいたのが、草を食む羊たちだった。この広々とした空間が牧場になっているらしく、のんびりと過ごしている。この羊たちこそが、グルメ御用達の“超”の付く高級食材だ。僕らは広い牧草地の中に仕切られた小さな歩道を歩く。

2時間ほど散策したあと、僕らはふたたび港へ。港の前には島にふたつしか無い食堂がある。中でもさきほどの羊を食べさせてくれるのが、島っ子食堂だ。

その日は8月と言えど、平日。学生旅行の僕らがせいぜい賑やかし程度の存在で、島は静かだった。食堂からは海鳥の鳴き声や潮騒が聞こえるのがたまらない。さっそく例の食材を注文すると、食堂のおばちゃんがアルミパックに入った羊肉を持ってきてくれた。

「銀座だと半分の量で5ケタもするのよ。」

「わざわざ関西から!よくまぁこんなところまで来てくれたね!」

定食の準備をしながら話しかけてくれる気さくなおばちゃん。もう何十年と島で暮らしているという、生粋の島民だ。「せっかくだから」と建物の外にある炭火コンロで食べさせてくれるらしい。

この島でいう羊とは、イギリス・サフォーク州原産のめん羊のことで、原産地からサフォーク種と呼ばれている。周囲が海に囲まれた焼尻島のため、潮風のあたる牧草は塩分やミネラルが豊富らしい。加えてヘビや野犬など羊たちの嫌う外敵が存在しないため、島はストレスのない最高の環境なのだそうだ。

「はい、これで2000円ね。1食で2000円なんて高い気がするでしょ?でもこれが銀座だと半分の量で5ケタもするのよ。」

とおばちゃんは言う。「なんと言ってもこの羊肉は、フレンチ業界では一目置かれている存在。」、「東京・銀座の高級レストランなどに出荷されているのよ。」とのことで、特に「純血、(いわゆる単一種血統)のものは焼尻島でしか生産されてないの。」らしい。

ところが、貧乏学生の僕らにはその凄さがいまいちピンとこない。

「本当に関西から来たの?もっと驚きなさい!」

と、おばちゃん。ひえー。

高級食材、気合いを入れて食べなければ・・・!

「しっかり働いて、美味しいものいっぱい食べなさいよ!」

さて、実際に食べてみる。感想・・・「うまい!」。羊肉と言えば、その臭みが好き嫌いを分けるところだが、この肉はその臭みがまるでない。フレンチでは手の込んだソースを添えたりする(らしい)が、炭火焼に塩こしょうのシンプルな味付けが焼尻流。歯ごたえが良く、塩こしょうがほのかな羊肉の風味を引き立てる。

ところが僕を含め、友人連中は大学付近のファーストフードでさえ、「うまい!」と喜んで食べてしまう連中だ。「うまい!」以外のリアクションができないのだ。僕らはボキャブラリーの少なさを嘆いた。



翌日の焼尻島はすっかり晴れ、キャンプ場近くの牧場では昨日と同様に羊たちが牧草を食んでいた。海は青く、風も気持ち良い。それ以外は何もないが、だからこそ、羊たちにとっては住みよい環境なのは言うまでもない。

昨日は時化ていた海も穏やかになり、僕らは焼尻島を出ることにした。船に乗り込むと、島っ子食堂のおばちゃんが見送りに来てくれた。

「しっかり働いて、美味しいものいっぱい食べなさいよ!」

おばちゃんからの檄が飛んだ。貧乏旅行を楽しむ一方で、就職活動を控えていた大学生の僕ら。

「『うまい!』以外のリアクションができるようになったら、また来ます!」

僕らはそう誓って、焼尻島を後にした。

焼尻島の牧場風景、気持ちいい

「島っ子食堂」

◆電話番号:01648-2-3176 ◆営業時間:09:00-最終船の出港まで◆休み:6月~9月の営業期間中は無休(要確認)

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