10月の初めに山梨県の西湖周辺のキノコ探索会に参加してきました。
キノコに興味を持ったキッカケは子どもの食育の一貫で始めた原木シイタケの栽培でした。ニョキニョキと生えてくるキノコの不思議さと可愛らしさに息子がハマったことからでした。
静岡キノコの会があることを知り、今年から息子の勉強のために年に3回開催される探索会に参加し始めました。
キノコは森の分解者
突然ですが、世界で最も大きい生物は何だと思いますか?
A. クジラ
B. 樹木
C. キノコ
なんと答えは「C. キノコ」です!
世界最大のキノコはアメリカのオレゴン州で発見されたオニナラタケというキノコの菌床です。地中に広がった同じ遺伝子を持つ菌糸体の総面積は約8900平方mにもなり、推定重量約600t、推定年齢は約2400歳とのこと。山全体を覆いつくすほどの大きさです。
キノコは動物でも植物でもありません。カビと同じ菌類です。キノコは植物に例えると花に相当し、根のように土の中に張り巡らされた菌糸が植物本体と言えます。つまり私たちがキノコと呼んでいる部分はキノコの本体ではなく、本体は地下に張り巡らされた菌糸体なのです。
キノコには枯れ木や落ち葉、動物のフンや死骸などを分解し、養分を土へ還す働きをする腐生菌と、樹木と栄養分をやり取りして成長を促す菌根菌があります。腐生菌で代表的なものは切った木に生えるシイタケがあります。菌根菌ではアカマツと共生関係にあるマツタケが有名です。
キノコを含め菌類は生態系のサイクルの「分解」という重要な役割を担っています。森林が枯れた倒木や葉っぱでいっぱいにならないのは、山全体に張り巡らされた菌糸によって、キノコが倒木や葉っぱを分解して、森をきれいに浄化しているためです。
キノコの放射能汚染
東日本大震災による福島第一原発事故以降、富士山周辺でも野生のキノコから食品衛生上の基準値を大きく超える放射性セシウム(1kgあたり100ベクレル)が検出されたと報道されるようになりました。
富士山にキノコ狩りに行くと、「野生キノコ採取の自粛について」という看板を目にします。放射性セシウムが検出されたため、当分の間、野生キノコの採取、出荷、摂取を控えるように、という内容です。
当分の間とは、具体的にどれくらいの期間?と思いました。調べてみると検出されたセシウムは以下の2種類。
・セシウム134(半減期2.1年)
・セシウム137(半減期30.2年)
上記は山梨県の平成28年度のキノコ等の放射性物質の検出結果です。表を見てみると基準値の100ベクレルを大きく超えているキノコは「ショウゲンジ」です。
キノコの放射能汚染ですが、報道で騒がれ始めた時期が福島第一原発事故以降ということで勘違いしてしまいそうですが、事故以前から問題となっていました。
キノコに含まれるセシウムの多くは、原発事故以前の大気圏内核実験により世界中に飛散した放射性物質だそうです。現在まで大気圏内核実験は判明しているだけでも528回。その時に飛散した放射性物質のうち、半減期の長いセシウム137が今でも世界の森林を汚染しているようです。
キノコの自生する森では核実験により降下した放射性物質が葉に付着し、落ち葉が土壌を汚染し、土壌からカリウムなどの無機物を吸い上げるキノコが汚染されます。キノコの会の方は、キノコはカリウムを体内に取り込む性質があり、セシウムはカリウムと同系列なため、誤って取り込んでしまうと教えてくれました。
キノコが世界を救う?
先ほどキノコは森の分解者と書きましたが、キノコには以下のような有害物質まで分解して無害化する個体も見つかっているようです。
・プラスチックを食べるキノコ
・石油を食べるキノコ
・毒性のある重金属を食べるキノコ
・ウィルスを食べるキノコ
日本は原爆投下により、原爆を製造した物理学者たちから放射能に汚染された広島と長崎には75年間は草木も生えないと言われました。ところが、わずか半年後には雑草が生え、翌年には米や野菜が実ったそうです。土壌中の細菌が放射能を分解して無害化したため、と多くの学者が推測しているようです。
このように菌やキノコは森林だけでなく、汚れた地球を浄化する重要な役割をもっています。これらの菌やキノコの浄化作用をうまく実用化できるような研究もなされているようです。
身近にあるキノコ、不思議いっぱいのキノコ。
菌類は悪いイメージも多いですが、実は様々な可能性を秘めていることが今回分かりました。もしかしたらキノコは世界を救ってくれるヒーローなのかもしれません。