大船渡の新しい中心市街地として4月29日にオープンするキャッセン大船渡。開店10日前の様子をご紹介。
キャッセンには全国的な知名度を誇る「黒船」も入店する。でも周囲はご覧の通りの工事中。
ついこの間まで工事中の何かの建物にしか見えなかったが、テナントの看板が設置されて商店街らしくなってきた。
よく知っている店の名もある。看板が掲げられただけで、わくわく感が盛り上がる。
キャッセンは案内表示のデザインもいい感じ。でも、サインボードの後ろには工事資材の山。あと10日、ほんとうに大丈夫?
トイレのサインのモチーフはカモメ。カモメは大船渡のシンボル。なかなか可愛い。これくらいクローズアップして撮れば、施設がほぼ完成しているかのように錯覚しそう。
でも、すぐ近くのガラスに貼り出された手書きの「土禁」。内装工事に頑張ってる感じが文字から伝わってくる。先月オープンした南三陸のさんさん商店街でも、実は工事はぎりぎりで、オープン後にも裏の方で仕上げ工事が行われていたらしい。「だからきっと大丈夫。業者はプロなんだから何とかするよ」と、南三陸の関係者から励まされた言葉を思い出す。
桜の花咲く大船渡で、工事業者は大わらわ。でも忙しいのは工事業者だけではなかった。
ぱちぱち写真を撮って回っていると、この商店街で勤務することになったNさんが、サイズの合わないヘルメットを押さえながら小走りしているのに何度も遭遇した。すれ違ったのが道路の反対側だったり、川の向こうだったりしたのと、あんまりNさんが忙しそうにしているので軽く会釈するばかりだったが、すれ違うこと3度目か4度目、ようやく話をする機会を得た。
Nさん本当に忙しそうで、挨拶も早々にキャッセン大船渡の課題をワンフレーズで教えてくれた。仮設商店街でやってきた雰囲気そのままで、いい意味で仲良し、でももっと外に目を向けアピールして行かなければならない。それが私の仕事でもあるんだけどね。
補足するとこういうことだろうか(短時間のおしゃべりだったので外れているかもしれないが)。これまでの仮設商店街と違って商売はシビアなものになる。まず家賃を払わなければならない。設備投資を改修しなければならない。テナント制だから商売がうまく行かなければ退場ということもありうる。周辺の町の中では元気がある方ではあるものの、震災後に人口が減っているのは大船渡も同様。震災前の商売の規模を維持するだけでも大変だ。外に向けてアピールすることはもちろん、外からお客さんを引っ張ってくることに真剣に取り組まなければならない。そのためには町の若い世代の人たちを巻き込むことも重要になる。
工事も大変だが、オープン後こそが正念場ということらしい。同じことは南三陸でも陸前高田でも同じこと。南三陸は仙台方面からのアクセスがいい。陸前高田には一本松という集客装置がある。しかし、それだけでうまくいく保証などない。町を訪れる人をいかに商店街に引き入れるか。さらには商店街の魅力で人を引っ張ってこれるか。
忙しそうに走り回る途中、ほんの一息つくほどの短時間にNさんが教えてくれたのは、これからオープンする被災地の新しい町に共通する課題に他ならなかった。