【高校野球・岩手大会】高田高校、初戦でコールド勝ち

7月13日、花巻球場の第一試合で、高田高校(陸前高田市)は水沢農業高校(奥州市)を13対0、5回コールドで下し3回戦に駒を進めた。(試合時間1時間11分)

シード校の高田に大量のリードを許しながら、水沢農は選手と応援席が一体となって5回表の攻撃で一矢を報いようと奮戦したが完封負け。野球部員にとって今年の夏は終わった。

戦いが終わりグラウンド整備が行われる中、野球場に3塁側高田、1塁側水沢農それぞれの応援団のエール交換の声が響き渡る。13000人収容のスタンドに囲まれた空間に、敢闘をたたえる声、そして甲子園への思いを引き継いで次も勝ってほしいとの願いの声がこだまする。高校野球ならではの光景といえばそれまでだが、ジーンとくる。

今年の岩手大会は第一シードの一関学院、第二シードの花巻東、さらに盛岡大附、専大北上といった私立勢が軸になるだろうとの下馬評がもっぱらだ。一関学院はセンバツ出場を果たした釜石を延長の末に下し地力の強さを証明した。しかし抜きん出て強いチームが存在しない今年の岩手大会は混戦となることは必至。私立の強豪4校のみならず、公立校が優勝争いに食い込むチャンスはあると期待する声も根強い。

今日の初戦は県立高田高校にとって、28年ぶりの甲子園への第一歩。着実に勝利をおさめたことで、3回戦以降に向けて大きな弾みになるだろう。

高田高校は甲子園に忘れ物をしたままだと言われる。昭和最後の夏、甲子園初出場を遂げた高田は滝川二高(兵庫)と対戦し、9対3で敗退した。しかしゲームセットが宣されたのは9回ではなく8回。降り続く雨のため、極めて異例な8回コールドゲームとなったのだった。

甲子園の全国大会で雨によるコールドゲームは戦前に遡るまでないという。9回の攻防を残したままの幕切れ。試合がひっくり返るの可能性があるかないかなど誰にも言えないことだった。滝川の勝利を讃えるエール交換もなく、校歌斉唱すら行われなかったこの試合は、高校野球の歴史の中で特異点ともいえる存在でありつづけている。

作詞家の阿久悠は「コールドゲーム」という詩にこう記している。

高田高の諸君
きみたちは
甲子園に一イニングの貸しがある

引用元:「コールドゲーム」阿久悠

「一イニングの貸し」を取り返しに行く高田高校。28回目の挑戦に注目したい。

花巻球場

高田高校の3回戦は盛岡商・伊保内の勝者と7月15日、4回戦は17日、準決勝は18日(ここまで花巻球場)、決勝は21日岩手県営野球場で行われる予定だ。