『122-0』
これはラグビーの試合でもバスケットボールの試合でもありません。紛れもなく野球の試合です。
1998年7月18日、第80回全国高等学校野球選手権(夏の甲子園)の青森県大会の2回戦。東奥義塾高校と深浦高校の試合で『事件』は起きました。ちなみに80回記念大会といえば、あの松坂大輔(現ソフトバンク)率いる横浜高校が春夏連覇した年です。
青森県と言えばここ数年は八戸学院光星(元 光星学院)と青森山田の2強状態が続いています。しかしながら東奥義塾は過去に甲子園に4度出場している強豪校です。
一方の深浦高校はこのとき部員はわずか10人。野球経験者は4人しかいませんでした。
試合は予想以上に一方的な展開に
いまでは当たり前のようにある5回10点差コールドというルール。当時青森大会にはこのルールはありませんでした。と言っても青森に限らず当時は地区大会では統一したルールはなく、この試合をきっかけに高校野球地区大会は5回終了時点で10点差になったときコールド試合にするというルールが全国で統一されました。それほど大きな意味のある試合だったということなのです。
そして試合が始まりました。甲子園出場経験のある東奥義塾と野球経験者が4人しかいない深浦高校では試合をやる前からおおよその結果は予想できます。何が起こるかわからない高校野球とはいえ、実力差は歴然です。
1回表、東奥義塾の攻撃はなんと1時間近くにもなりました。これがどれくらい長いかと言うと...高校野球はだいたい1試合1時間50分くらいです。それが1回の攻撃だけで1時間近くかかったのですから相当な長さだったことがわかります。
なぜこのような試合になったのか
アウト1つもなかなか取れず、5回が終わった時点で93-0。
深浦高校の工藤監督は『試合をやめるか?』と選手たちに問いかけます。
こんなにこてんぱんにやられてしまっていて選手も辛かったでしょう、みじめに感じていたかもしれません。
しかし深浦の選手たちは最後まで戦うことを選びました。
そして東奥義塾も手を抜くのは相手に対して失礼と考え、最後まで攻撃の手を抜きませんでした。
手を抜かなかった東奥義塾も立派です。
スポーツにおいて相手に対して手を抜くことほど、失礼なことはないのです。
スポーツ新聞は地方大会2回戦の試合を1面に
翌日、この試合をマスコミは大きく報道しました。日刊スポーツでは1面にこの試合を取り上げました。この日は他にも1面を飾るくらいのスポーツニュースはたくさんありました。「延長10回元木サヨナラヒットでジャイアンツ勝利」や「オールスターファン投票1位の中日ドラゴンズ川上完封」「ベイスターズ6連勝」など。それを押しのいて、いち地方大会の2回戦(深浦にとっては初戦)をスポーツ新聞の全国版が1面で取り上げるというのは異例中の異例です。
『最後までがんばった!』という意見もありましたが、
一方で...
『そんなに弱いなら出る資格がない』
『相手に対して失礼だ』
さらにはスポーツ誌の1面に載せたことに対しても深浦の選手にもっと配慮すべきだという意見もありました。
このように試合の是非をめぐって意見が二つに分かれました。
わたしが思うこの試合
出場することが失礼という意見...本当に失礼なのでしょうか。弱かったら出場してはいけないのでしょうか。
この試合にかかった時間は3時間47分です。高校野球の試合が2時間弱と考えると単純に数字だけを見たら長い試合ですが、この試合の当事者の深浦高校の選手、東奥義塾の選手、見ていたお客さんはどう感じたでしょうか。
1つわかっていることは3時間47分の間、両チームの選手が一切の手を抜かず一生懸命に戦ったことは紛れもない事実だということです。
出場してはいけない、そんなわけありません。弱いかもしれない、下手かもしれない、けれど選手たちはこの日グランドに立つことを夢見て必死に練習してきたのです。わたしはそう思います。
だからこそ、わたしはこの試合を非難する理由はどこにもないと考えています。
夏はじまる。
静岡県でも今週末、甲子園をかけた熱い夏が始まります。
目標が優勝のチームもあれば、1つ勝つというチームもあるでしょう。
勝ち負けがすべてではありません。
3年間の思いをこの瞬間にぶつけてほしいですね!
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野球のことを時には熱く、時にはぬる~く書いてます!