発見・今日の一枚「ロマンスカーといえばこれでしょ♪」

EXE(30000形)だ、VSE(50000形)だ、さらには東京メトロの地下鉄まで乗り入れるMSE(60000形)なんて、小田急ロマンスカーにはカッコいい新型車両もたくさんありますが、やっぱロマンスカーといえばこれでしょう。

3100形NSE(New Super Express)に続いて登場した、先頭車両は展望シートで運転席は2階という7000形LSE(Luxury Super Express)。SE形から受け継がれて来た小田急カラーのまさにロマンスカーの中のロマンスカー。

小田急からも、パノラマカーの走る名鉄からも、ビスタカーが走る近鉄からも遠く離れた田舎町で育ったもんだから、はっきり言ってロマンスカーは憧れだった。

ウルトラセブンの第2話にも登場、その回の主役のはずなのにちょっとマイナーなワイアール星人(植物宇宙人みたいなの)なんて完全に喰ってしまっていた、先代NSEの風貌を受け継ぐ高速特急として、その存在感は絶大なものがある。

乗りたくても乗れない田舎の少年だった我々は、ロマンスカーの運転士はうつ伏せになって運転しているなんて話を真に受けて、滑り台を腹這いで滑り降りる遊びをロマンスカーごっこと称していたりもしたのだった。(ロマンスカーの運転士さんはちゃんと座って運転しているそうです、念のため)

観光ではなく通勤・買い物客向けのホームライナーですからね、ドアが開けばどっとお客さんは入っていくわけ。でも小さなお子さんと記念撮影したりする人も少なからずいて、さすが7000形LSE、いまもその人気は変わりませんね。

新幹線と違い1編成百数十メートルと短めなので、先頭車両に行ったり、最後尾に行ったりと、ついつい撮影枚数が増していく。こどもの頃乗りたくても乗れなかったせいなのか、この形、このカラーリングの車両を目の前にすると、鉄っちゃんならずとも小田Qファンの血が造成されて同時に沸き立ってくるみたい。

ロマンスカーといえばもうひとつ、技術的なエポックは連接構造の車台(車輪とかモーターとかがついている、鉄道車両の鉄道車両たるゆえんとなる重要なパーツ)。ほとんどの列車の車台は、一両に前後2つ設置されているけれど、ロマンスカーの多くの車体では車両と車両の間の連結部分の下に車台が設置されている。

通常の鉄道車両なら、11両編成だと22個の台車があるところ、ロマンスカーには12個しかないってこと。それだけ車両を軽量化できるから高速で走れるし、カーブの多い区間でもなめらかに走り抜けることができるようになる。

小学校の頃、学校の図書室で借りてきた本に書いてあったことを思い出した。その本は新幹線開発のすごさを小学生向けに書いた本だったんだけど、その前半には小田急のロマンスカーに負けた経験をバネに頑張ったんだと記されていた。何しろ小田急の台車配置は、それ以前に九州の西鉄では使われていたものの、高速鉄道用として国内初のものだった。だからプライドの高い当時の国鉄研究者が、なんと私鉄である小田急のロマンスカーを国鉄の路線で試験走行させるなんてことまでやったのだとか。

結果は、狭軌(JR路線など日本の主な鉄道の一般的なレール幅)としての世界最高記録を叩き出してしまう。僕が読んだその本には、たかが一私鉄の車両に世界最高速度記録を出されてしまったことがどれほどショックだったか、ずいぶん原稿用紙を費やして書かれていたように記憶する。

列車の先頭の展望車。今まで乗ったのは3回くらいかな。天井の運転士さん用の出入り口のフックが妙に生々しく思えてしまうのは、腹這い運転を信じていたからだろうか。

新幹線の食堂車がほぼ廃止された中、小田急ロマンスカーは乗客へのサービスが健在。ビュッフェとしての営業はしていなかったが、車内販売で生ビールだって楽しめるし、軽食や飲料もふんだんに用意されている。たぶん、速達性重視の新幹線とは違い、新宿から箱根までの1時間余りの旅の楽しみを味わおうってのがロマンスカーのコンセプトなんだろう。

初めてロマンスカーに乗った時、車両ドアのこの形にもショックを受けた。なんかとにかく非日常。語彙の乏しい若者だった私は「竜宮城みたい」なんて思ってた。

でもまあ、ロマンスカーのコンセプトが箱根への小旅行の楽しみを盛り上げるものだと思うと、車両の外観も、どこか科学特捜隊とかウルトラ警備隊の自働ドアみたいな車両ドアのデザインも呑み込めるし、なんだかいいよねって思えてくる。

乗車したのはホームライナーだったのでとりあえず秦野で下車。そこから先は、残念ながら30000形EXEに乗り継いだ。

かっこいいのかかっこ悪いのか、意見の分かれるところのレッド、グレー、ホワイトの小田急カラー。ちょいちょい乗ってると、やっぱこれだよねって感じがしてくるのが不思議だ。EXEもいいよ。VSEなんていつか乗ってみたいもんね。

だけどやっぱり、ロマンスカーといえば「これしかない!」と思ってしまう。後輩ロマンスカーの10000形HiSEが消えていった後も、80年代から走り続けているLSE。いずれ廃車の運命を免れないと知りつつも、生きて走り続けていてくれる間には、これからも何度もお世話になるつもり。

秦野駅で次の新鋭ロマンスカーに乗り換える途中、階段の中程から近代化改装で菱形から片持ち式に変更になったというパンタグラフを撮ってみた。それくらいの変更・改造はいいよ。だけど、この車両での運行をできるだけ続けてほしいと思った。そう思うのは自分だけはないだろうと重ねて思った。

レッド、グレー、ホワイト。今日もロマンスカーは走り続ける。