2月3日(水曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている状況を考えます。
※ 情報を追加して更新します
「トレンチ・ダクト内の滞留水調査」「3号機格納容器ガス管理設備」の項目で記載ミスか
◆前日と同じ情報「トレンチ・ダクト内の滞留水調査のため、ダクトからプロセス主建屋へ滞留水の移送を開始」(新規事項を示すアンダーラインなしで再掲載)
※各建屋に接続しているトレンチ・ダクト内の滞留水状況調査の一環として、2015年12月3日に採取した廃棄物処理建屋間連絡ダクト滞留水の、放射性物質濃度分析結果が上昇。原因調査のため、2016年1月19日から1月21日にかけて当該ダクトからプロセス主建屋への滞留水の移送を実施。その後の調査において、滞留水移送後の連絡ダクト滞留水の水位および水質に変化は確認されていない。
このことから、更に水位を低下させて調査するため、2月2日午前9時42分に、仮設ポンプによる当該ダクトからプロセス主建屋への滞留水移送を開始。なお、当該移送については、2月6日まで断続的に実施する。
1~6号機
◎日報に新規事項の記載なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・1号機ディーゼル発電機(B)室、1号機所内ボイラー室の滞留水を1号機タービン建屋地下へ断続的に移送実施中
◆2号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系停止中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、2号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・2号機タービン建屋地下から集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
3号機
◆前日と同じ情報「3号機 格納容器ガス管理設備配管の鋼管化作業を終了。設備を起動」(新規事項を示すアンダーラインなしで再掲載)
・3号機原子炉格納容器ガス管理設備については、2月1日午前9時30分より、特定原子力施設に係る実施計画「III特定原子炉施設の保安」第1編第32条第1項(保全作業を実施する場合)を適用し、フレキシブルチューブおよび樹脂製ホースの鋼管化作業を開始。作業が終了したことから、同日午後2時55分、当該設備を起動。その後、当該設備の動作確認において異常がないこと、短半減期核種の指示値に有意な変動がないことから、同日午後6時5分、同項の適用を解除。
なお、当該設備の停止期間における関連監視パラメータについて、異常はない。
その他の項目に新規事項の記載なし
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、3号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・FSTR建屋から3号機廃棄物処理建屋の滞留水移送については断続的に移送実施中
・3号機タービン建屋地下から集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
4~6号機
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・2014年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了
◆5号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
◎日報に新規事項の記載なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)停止中
・RO淡水化装置運転中
・多核種除去設備(ALPS)運転中
・増設多核種除去設備運転中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
サブドレン・地下水ドレン 一時貯水タンクDから海洋排水を開始
※サブドレン他水処理施設について、一時貯水タンクDの分析結果[採取日 1月27日]については、運用目標値を満足していることを確認。(既出)
2月3日午前10時1分より海洋への排水を開始。なお、排水状況については、同日午前10時15分に漏えい等の異常がないことを確認。
サブドレン・地下水ドレン 一時貯水タンクEからの排水準備が進む
※サブドレン他水処理施設について、一時貯水タンクEの分析結果[採取日 1月28日]については、運用目標値を満足していることを確認。
サブドレン・地下水ドレン 集水タンクの分析結果(1月26日採取分)
サブドレン・地下水ドレン 排水の分析(2月1日採取分)で、全ベータが10ベクレルを切る値
【注目点】サブドレン・地下水ドレンの排水口は1号機と5号機の中間、「物揚場」と呼ばれる岸壁の北にある。今回、2月1日に採取したサンプルの分析では全ベータ濃度が「7.8Bq/L」だった。排水中の全ベータ濃度としては、海洋排出を始めた2015年9月以来、久しぶりに10ベクレルを切る値となっている。
ちなみに、1月4日採取分では「10」、12月3日採取分は「13」、11月6日採取分は「15」、10月2日採取分は「12」、9月28日採取分は「15」、9月14日採取分は「7.6」だった。
海水中には、代表的な天然放射性物質であるカリウム-40(半減期12.8億年)が含まれているため、それだけで海水1リット当たり12ベクレル相当のベータ線を発している。海域によって濃度に違いがあるため、全ベータ核種の測定では、14Bq/L前後の値を示すことがよくあるらしい。
※ →ページ末に「原子力資料情報室:カリウム-40」へのリンク
今回、海洋排出中の全ベータが10ベクレルを切る値となったのは、海水中のカリウム-40が浄化後の排出水によって薄められた可能性も考えられる(排出前の一時貯水タンク水の第三者による分析で、全ベータは検出限界1ベクレル未満でのNDである)。しかし、そうだとすると、これまで一般的な海水の全ベータ濃度に近い数値が連続して計測されてきたことの理由をどう理解すればいいのだろうか。
海洋排出の排水口が、海水の流れの少ない港湾の最奥部のしかも海水中にあることを考えると、潮位変動による水の流れの影響や、サンプルを採取する場所による影響も考えられるだろう。真水に近い水が排水されているのでサンプル採取の深さによっても濃度に違いがでることも十分に考えられる。放射性物質の測定結果は低ければそれでいいというものではない。変動の原因がどこにあるのかを検証しなければ、このサンプリングそのものの有意性が揺らぐことになりかねない。