震災で被害を受けた戦闘攻撃機F2、なんと修理に4年も!

2011年3月18日、着陸した松島基地に救援物資を降ろした後、破損したF-2支援戦闘機を見る Ramon Mortensen 空軍兵長。この戦闘機は東北日本を揺るがした地震と津波により損傷を負った。Mortensen 兵長は第17特殊作戦飛行隊に配属された機上輸送係。(Osakabe Yasuo によるアメリカ空軍写真)

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東日本大震災では自衛隊の基地も大きな被害を受けた。とくに第四航空団が展開していた松島基地(宮城県東松島市)の被害は甚大で、九州新幹線開業祝賀飛行のために移動していたブルーインパルスを除くほとんどの機体が、津波に押し流されて建物と激突したり、そうでなくても海水に水没してしまったことで、復旧不能なほどの甚大な被害を蒙った。

大震災の被災地のほぼ真ん中に位置していたにもかかわらず、多くのヘリコプターすら飛ばせなかったことが、松島基地に展開する自衛隊員にとってどんなにか苦しいことだったか。

基地と親しくすごしてきた町

震災から1週間後に撮影された冒頭の写真は、米軍のみならず松島基地がある東松島の人たちにとっても大きなショックだったという。

日本の航空自衛隊の戦闘機であるF2は、米軍の戦闘機F16をベースに日米合同で開発された実質的には対艦船用の攻撃機である。開発が進められた当初、日本の独自性を透徹するためのフリクションはあったものの、結果的にはF16をベースに翼面加重を抑えるための若干の大型化と、主に翼部分の新開発が施されたような機体だ。素人目にはF16と大差ない。玄人目にも空対艦ミサイルの装備が増えたことと独自素材が使われたことが主だった違いでしかない。

配備後は東アジアの戦争を抑止する、日米安保の重要な要素のひとつとして機能してきた(はずだ)。

ところが東日本大震災で松島基地では、空中退避を行うこともなく、F2を含む多くの機体が津波の被害を受けた。外見上、それほど大きなダメージを受けていないように見えても、航空機とくに戦闘に使用されるものは電子機器とそれと連動した制御機器が中枢的な機能を支えるものだから、津波被害を受けた多くの機体が実質上の廃棄処分となったはずだった。(何千億円もの損金計上とともに)

津波は基地をこえて、さらに内陸にも多くの被害を引き起こした。松島基地は航空自衛隊だ。飛行機があってナンボの部隊。しかし、泥にまみれながら被災した地域を、地域の人たちを、これまで基地を応援してくれた人たちを、いやそんなことなど関係なく人々を救うこと、それだけのために活動を続けた。

だから、いまでも東松島や石巻の人たちは、松島基地に展開している自衛隊が大好きなのに

あの時から4年が経過した。いまでも松島基地をはじめ、自衛隊への地元の人たちの信頼は厚い。東松島でも、隣接する石巻でも、その先の女川町でも。

そんな中、読売新聞が伝えたのが「被災F2戦闘機、修復完了…第1号機が納入式」という赤白横断幕の写真入りの記事なのであった。

修復された機体は、元の松島基地の第四航空団ではなく、中東地域への派遣飛行まで噂もされている三沢基地の第三航空団に一事配備されるのだという。読売新聞の記事によると、被災した18機のうち13機の修復を決定し作業を行っているのだという。

記事によると「1機当たりの費用を約73億円に抑え」とのことだ。

次に日本が導入する計画になっているマルチロール機(対戦闘機はもちろん、艦船への攻撃、地上目標等多彩な攻撃パターンに対応できる機体)F35ライトニングIIの2016年度購入予定機の予定金額が「約96億円」、とされている。それにほぼ匹敵する金額を投じて修復が進められていたということなのだ。(ライトニングIIの価格に関しては当時の新規機体の価格である。その後さらに高額化し続けているようだが)

この金額に疑念を持つなという方がムリというものだろう。

松島基地というと「ブルーインパルス」のイメージがむちゃんこ強い。とくに地元の人たちは訓練飛行の騒音など気にしないどころか、「ブルー」らしき音が聞こえたら、家から外に出てどこ飛んでるんだろうって見上げるくらいだ。オジイチャンもオバチャンも、小父さんもお姉さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも。もちろん俺だって、うお~っていってその軌跡を追う。

基地指令とか航空団トップの人たちって、みんな地元のアイドルみたいな、信頼を寄せられる人たちなんだよね。そこからさらに上の人たちが、地元のことを、考えてくれないはずもないと思うんだ。

だからこそ問いたいと思う。そのお金と時間を他に使うすべはなかったのかと。

だからこそ思う。4年の時間と1機73億円ものお金をかけてF2を修理することにどれほどの意義があるのだろうか。

記事が伝えるように、修復の理由が「パイロット養成のため」ならば、4年という空白は国防上あまりに大きな穴なのではないか。この間、何らかの形でパイロット養成を行わなかったとすれば、それは国の怠慢ということになる。さすがにそれはないだろう。

どこかで何らかの形でパイロット養成が行われてきたのであれば、修理の必要はないということになる。1機73億円、全部で13機、約1000億円。

地域をとても大切にしてきた松島基地の自衛官たちだって疑問に感じるのではないか。

読売新聞は、紅白横断幕入りの写真でおめでたい記事みたくこの話を伝えているが、このニュースはそんな慶事として扱われるべきものではない。せめて、「三菱の工場を維持する目的で」とでも書かれていれば記事としての価値もあったかもしれないが。

訝しむべき話が紅白横断幕入りのめでたいニュースになる。こんな奇っ怪なことはない。

被災F2戦闘機、修復完了…第1号機が納入式
読売新聞 4月21日(火)15時22分配信

 東日本大震災による津波で水没した航空自衛隊松島基地(宮城県東松島市)のF2戦闘機の修復が終わり、21日、第1号機の納入式が愛知県豊山町の三菱重工業小牧南工場であった。

 パイロットの教育訓練用として空自三沢基地(青森県三沢市)に一時配備後、今年度中に松島基地に帰還する。

 松島基地では国内の訓練用F2機の半数にあたる18機が被災。このためパイロット養成が進まず、防衛省は被害が比較的軽い13機の修理を決定した。部品を再利用するなどして1機当たりの費用を約73億円に抑え、2017年度までにすべての修復を終えるという。

 式典には関係者ら約120人が出席。空自の半沢隆彦・航空教育集団司令官は「F2の納入は未曽有の災害からの復興の証し」とあいさつした。

最終更新:4月21日(火)15時22分

引用元:被災F2戦闘機、修復完了…第1号機が納入式 (読売新聞) - Yahoo!ニュース

4年もかかっての修復第1号機の納入。13機すべての修理完了は2017年。修理費は1機あたり73億円。いったいどこに喜ばしい要素があるというのか。「未曽有の災害からの復興の証し」というよりは、こんなところにも復興の足を引っ張る人がいたことの証しと言うべきだ。