【位置づけがよくわからない。国際廃炉研究開発機構「IRID」との違いは?】
「廃炉国際共同研究センター」が4月20日、日本原子力研究開発機構の1組織として開所したそうだ。朝日、産経、河北新報、福島民報、NHK、TBS、FNNなど多くのメディアが取り上げている。
廃炉国際共同研究センターは、福島第一原発の廃炉を促進するために、国内外の英知を結集する組織なのだそうだ。日本原子力研究開発機構の施設や人材を活用して、燃料デブリの取り出し方法など先端研究を行うのだという。本格運用は28年度からになるという。開所式に下村博文文科相が出席し、看板を掛けたりしていることからも分かるように、このセンターは文科省が準備段階から予算をとって進めてきたプロジェクトだ。
一方、廃炉に向けて国内外の英知を結集して研究を行う組織はもうひとつある。
国際廃炉研究開発機構(IRID)は国内外の叡智を結集し、廃炉のための研究開発に、一元的なマネジメントで取り組む技術研究組合です。
「技術研究組合 国際廃炉研究開発機構」通称IRID(アイリッド)がそれである。こちらは茂木敏充経済産業大臣(当時)を議長とする政府の廃炉対策推進会議と連携して2013年8月に設立された。IRIDの研究成果はすでに事故原発の現場で試験的な運用が始まっている。ミュオンによって事故原発内部を透視する実験も、格納容器の中を探索中にスタックして残置されることになったロボットも、IRIDと東京電力のコラボで進められてきたものだ。
世界の英知(IRIDの場合は叡智)を結集する廃炉研究組織がどうして2つ必要なのか。しかも、日本原子力研究開発機構はIRIDの中心的なメンバーでもあるのだから、組織上どうなっているのか理解するのが難しい。
文科省側の廃炉国際共同研究センターは、今後40年の長きに渡る廃炉に対処するための人材育成にも力を入れると強調しているが、具体的なプランは示されていない。
国民のチェックが必要だ
国が主体となって組織が作られるということは、そこにお金の流れが生まれるということにほかならない。とくに原子力はその黎明期から、当時の文部省と通産省の間で予算取り合戦が繰り広げられてきたことは有名だ。深刻な原発事故が発生したこの期に及んで、省益のために国民のお金が浪費されることなどあってはならない。
廃炉は現在と将来の地球環境にとっての重大事業である。原発事故で深い傷を追った福島の復興は、人間の尊厳にかかわる大事業であるという点で、全人類の問題だ。
2つの組織が並立することで、廃炉と復興の進展に悪い影響が及ばないか、文科省側の廃炉国際共同研究センター、経産省側の国際廃炉研究開発機構(IRID)の今後の動きは要チェックである。事業に重複はないか、予算配分に疑問はないか、国民がしっかり見つめていく必要があるだろう。
文部科学省の名で冒頭に「平成27年度概算要求額 81億円」とあるが、ファイルは経産省の東日本大震災関連情報に置かれている。